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第16話 穏やかな日常×揺れる心

青空はどこまでも澄み渡り、真っ白な雲がゆっくりと流れて……小鳥たちは木陰でさえずり合い、どこからか花の香りがふわりと漂ってきます。


「はーい!皆さん、お昼ご飯ですよ〜♪」


「わ〜い!お兄ちゃん、今日は何〜♪」


「今日は、お肉タップリのトマトソースパスタで〜す!」


「やった〜!!」


子供たちの元気な声が、石造りの中庭に弾けました。芝生に腰を下ろし、手作りのパスタや焼きたてのパンを広げて…。笑い声とともに、多めに用意された食べ物が次々に用意されていきます。


そんな賑やかな昼下がり、子供たちとセナさんが楽しく盛り上がっている中——

私とアンは、何故か同じテーブルで、食事を頂くことに……


正直言って、彼らの楽しさに混ざる余裕など、微塵もありませんでした……


今朝、ミラージュの個室での出来事……


「私のスキル【未来予知能力】ですが……これは、厳密には予知というより夢です。」


「夢?」


「はい。レム睡眠中に発生するα(アルファ)波を読み取って、そのデータを……」


《???》


私とアンは、スキルの説明を受けていたものの、ほとんど理解できていませんでした。


「す、すみません……つ、つまり、簡単に言うと……睡眠中に見た映像が現実になる……ということです」


セナさんは分かりやすく説明してくれました。


「ただ、正確な日時までは分かりません……確実なのは1ヶ月から2ヶ月くらいでしょうか。」


「なるほど、その間に防衛の準備を整える……でしょうか?」


「その通りです!」


〈さすが、アン……的確だわ……〉


「後は、魔道具の召喚、身体強化、五感の拡張、回復魔法など……。」


「あの……そんなにバラして大丈夫ですか?仮にもエージェントなのに……」


あまりに色々と明かすので……少し心配になりましたが……


「本来なら秘密事項なのは確かなのですが……今回は時間がありません……それに私は貴方がたを信頼しているので大丈夫と自負しています。」


などと……自分の能力を紹介してくれた後、今後の対策についても教えてくれました。でも……こんなにお人好しで、騙されないか、少し心配になりました……


そして、時は過ぎ……お昼のランチタイム……


「う〜ん……未来予知能力……私にはまだ信じられないけど…」


「確かに、信じがたいスキルですね……でも……」


「でも?」


「私も助けられているので……」


「アン……?」


「い、いえ、なんでもありません……」


アンは言葉を途中で切ってしまいましたが、その瞬間——


「アン様♪」


ピトッ……


「ウギャーーーーッ!!」


「ア、アン!?」


突然、アンが悲鳴を上げました!!


「あはは!アンお姉ちゃん、すごい顔♪」


子供たちは大爆笑。


「あ、あれ?」


「な、何をするのですか!?」


挿絵(By みてみん)


「えっと……キンキンに冷えたグラスを首元にピトッと……」


「ピトッとではありません!!びっくりしましたよ!」


「ご、ごめんなさい。まさかここまで驚くとは……」


セナさんのイタズラは、アンには通用しないようで、いつもただ怒られるだけ……でも、もしかしたら今朝の話を聞いて、ちょっと和ませたかったのかもしれない。


「本当に、もう……やめてください!!」


ポカポカポカポカ……


アンは顔をプクっと膨らませて、セナさんの背中を思いっきり叩き始めました。その様子を見ていた私は思わず心の中でつぶやいてしまいました……


ジェラ……


〈ん……?なんだろう?アンを見ていると、怒っているというより……楽しんでいるように見える……それに、胸がギュッと締め付けられるこの感覚……?〉


いつもとは違うアンの行動に、私は自分の思っている感情がわからず、違和感を感じました。


「それと、セナ様、今朝も言いましたが、私のことを様付けで呼ぶのはやめてください!!」


「ご、ごめんなさい……アンさま……」


ギロッ!!


「ア、アンさん……だったら、僕も“様”で呼ぶのは辞めてほしいなって……」


「そうですね……では……セナさんでいいですか?」


「はい、OKです!よろしくお願いします!!」


アンが睨むと、その威圧感には思わず押しつぶされそうになる。私もその眼差しの恐ろしさを痛いほど理解しているつもりです。

でも、今のアンはどこか違う。セナさんとのやり取りを見ていると、まるで仲の良い恋人同士のように見えてくる。そして……


「いいな……」


思わずそんな言葉が口をついて出てしまいました。


「何が、いいな……ですか?」


「ウギャーーー!!」


突然、背後からセナさんの声が耳元で囁いてきました。


「えっ……えっと……そ、そうだ!子供たちと皆でご飯を食べることかな……アハハハ…」


〈ビ、ビックリした……〉


「なるほど、そうですよね♪ 皆で食べるお昼は最高ですよね♪」


〈あれ?そういえば?〉


「あ、あの……、セナさん……」


私は思い切って疑問を投げかけた。


「はい?なんでしょうか?」


「いろいろと聞きそびれていたのですが……この子供たちは一体?」


〈結構……今更ですね……(セナ・アン)〉


「えーっと……実は、お屋敷の襲撃に備えて、近隣に住む子供たちの避難兼ねて……保護しているのです……」


「保護……?」


「はい、最初の襲撃があったとき、近くの民家でも被害が出ていたので……念の為に……」


「でも……お母様が許可してくれたのは意外ですね……」


「頑張って、説得しました!!ドヤー!!。」


〈ドヤーって……〉


クイクイ…………


「ん……?」


「……お、お兄ちゃん……」


そんな、話で盛り上がっていると、セナさんの袖をクイクイ引っ張る女の子がいました……


「……ゴハン……食べたい……」


「ご、ごめんなさい!!そうですね……それでは皆さん頂きましょう!!」


「はーい♪」


その後、楽しい食卓を済ませ、午後からは、今朝と同じく庭園で魔法を披露……それから屋敷のセキュリティの確認やトラップの設置……警備兵とお母様の連携などなど……

こうして、1日が過ぎていき……何事も無かったように終わります……


「本当に……襲ってくるのかしら……」


「お嬢様?」


私は、1日セナさんの横についていましたが……特に異変や動きもありませんでした……


「確かにセナさんの幅にいると楽しいし……子供達ともお友達になって嬉しかったけど……このまま来ないでほしい……かな……そうすれば毎日面白いのに……」


本当は何事もないで終ってほしい……そんな……不安を隠す言い訳なのかもしれません……でも……そんな事を言った私にアンは……


ポロポロ……


「う、う……」


「ア、アン!!どうしたの!!」


彼女は目に涙を溜めて泣き出してしまったのです!!


「あんなに怯えていたお嬢様が……」


「ちょっと……アン……」


「今まででしたら……少なくても、人との交流を避けていたお嬢様からは考えられません……」


確かに、私は他人には無関心だったし、しなくても問題ないと思っていました……それに、まだ大人たちは怖くて震えたり、気絶しそうになる……

だけど………

セナさんと一緒にお話したり……子供達と……ゴハンを食べたり……一緒に遊んだり……

そんな事をしてきたら段々……私は……いつの間にか、変わっている事に気付きました……


そう考えると……私にとって冒険者セナはなんなんだろう?

彼自身……興味を惹かれている事にドキドキしていました……

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