プロローグ 『人の定義』
「『人』の定義って何だと思う?」
開口一番に、隣にいる少女『巫儀 零無』は何の脈絡もなくそんなことを聞いてきた。
「・・・・・・」
彼女の唐突な質問に答えられずにいると、
「聞こえてる?あなたに質問してるんだけど?」
「・・・・・・聞こえてるよ。少し面食らってただけだ」
「なんで?」
「いや、なんでって」
本気で分からないって顔をしている。
「前置きもなしにそんなこと聞いてきたから。逆に聞きたいんだけどなんで急にそんなことを聞いてきたの?」
「べつに?特に理由はないけど。強いて言えば暇つぶし?」
だとしたらもうちょい他に話題あるだろと思ったが口には出さないで置く。
「・・・・・・あっそ。一応聞くけどそれって生物学的な意味じゃなくて、哲学的な意味で合ってる?」
「合ってるわよ」
「なら一定以上の理性や知能の有無とかじゃない?」
僕は真っ先に思いついたことを言ってみた。
「因みに生物学的な意味でなら?」
「ざっくり嚙み砕けばデオキシリボ核酸の構造が人なら人なんじゃない?」
人造人間や地球外生命体なんかの外部からの介入されたものを除けば。
「それじゃあ、それらの条件を満たしていて、人間離れした存在であっても、それは人なのかしら?」
「・・・・・・」
また直ぐに返事出来ずにいると彼女は続けざまに、
「私やあなたみたいな存在でも、人と呼べるのかしら?」
そんな自虐めいたことをあっけらかんと言ってきた。