告白
翌日の放課後、たかしが部室へ行くと岡村はもうすでに来ていた。
「大事な話っていうのは、坂元のことなんだ」
たかしは、岡村の口から出た思いがけない言葉に驚いた。
「坂元のとこのおばさん、重い病気なんだって」
「えっ!」
「しかももう長くないって」
「それで坂元は部活休んでるの」
「そう。学校が終わると、ほとんど毎日病院へ行ってる」
「そうだったのか。何も知らなかった」
「学校で市っているのは、ぼくとたかしと担任の村松だけ」
「村松先生なら頼りになりそうだね」
「うん。漫才同好会を結成する時も、すごく力になってくれたしね。今も一週間に二回は坂元の所にいってくれてるんだって」
「だけど、坂元、辛いだろうね」
「たぶんね。ぼくと話す時は元気にふるまってるけど。坂元は練習に出て来れないことを、すごく気にしてたよ。
昨日の収録は参加したけどね。だから、ぜひたかしにも来てもらいたかったんだよ」
「ご…ごめん」
「たかしは、同好会結成の時からいろいろと協力してくれてるし、時どきだけど活動にも参加してくれて、すごく感謝してる。坂元もそう言ってた。
だからさ、もう少し部員が増えるまで一緒に頑張ってよ。だれか同好会に入りそうなやつはいないかな? いたら紹介してよ。
そう言えば、たかしのクラスに二か月前、大阪から転校生が来たよね。その人誘えない? 本場大阪の人間ならおもしろい奴なんじゃない?」
「……。ちょっと、ちがうかな。それに宮田君…」
「宮田君て言うの、その転校生。それで、その人がどうかしたの?」
「ううん。何でもない。だけど、漫才って感じじゃない」
「そうか。でも人って見かけによらないからな」
たかしは、家に帰ってからも気持ちが重かった。坂元のおばさんの病気のこと。漫才同好会のこと。日曜日の収録のことも少し気にしていた。
机について『ティーンズ・ショーンズ』を取り出すと、あの絵が載っているページを開いた。
心の奥でスーッと風が吹くのを感じた。
この目。この光。ずっと昔から知っていたような……なつかしさ。
(やっぱり、おじさんの所へ行ってよかったんだ。早く日曜日が来ないかな)
たかしは、最近学校が面白くない。転校生の宮田君のことが原因だ。
宮田君は無口で、クラスではほとんど口を開くことがなかった。下を向いていることが多く、何を言われても、ただだまったまま。
はじめはそうでもなかったのだが、このごろ、宮田君を馬鹿にしたり、いじめたりする男子が出てきて、エスカレートする一方だった。その姿を見るのも嫌だったし、それに対して何も言えない自分も嫌だった。
学校の事を思い出すとまた、気持ちが沈んでいくのだった。