オレは悪くなくてあいつが悪い
「寒いな……」
朝の日差しと風が入ってくる家の中。今の季節は日本で言う冬でとても寒い。そこに響いたのが、先程の声――ルークの声だった。
何故か家の壁が消えていて……いや、破壊されていてそこから冷気が入ってきている。いやあ、なんでだろうな。
それにしてもルーク様が寒いだって? ならオレが直ぐ側に行って温めてあげれば……コホン。
「アルカさん?」
おや、ヒカリちゃんに呼ばれてしまったようだ。どうしたかな? 呼ばれるような事がある……? あれ、なんか顔が怖いですって、ほら、笑顔笑顔。うーん。なんかヒカリちゃん髪の毛ボサボサじゃない?
「ねえアルカ」
うん、次はなんかリースちゃんに話しかけられてしまった。……なんかこっちも顔が怖いなぁ。顔は笑ってるのにっ! コレが圧ってヤツかっ! ん? リースちゃんも髪の毛ボサボサだよ? 大丈夫かな。
「お前ってヤツは……」
パティ……なんでそんなに呆れたような声を出しているんだい? オレがなんかしたか? ふははは! お前も髪の毛ボサボサだな! 笑えてしまうだろ!
「なあ、アルカ」
「ひょっ?!」
ど、どどどどうしたっルーク。つ、つい変な声を出したが気にするな。
よく見てみるとルーク怪我してるなぁ。そんな美しい顔を誰が……ん゛っん。今日は皆んなどうしたのかな、王都へ行くというのに。
「アルカ、昨日何をしたか分かるか」
「昨日……?」
何を言い出すかと言えばそんなことかよ。どうせなら告は――いや、雰囲気が――ってそういう問題じゃないわ。
それで、えっと……昨日だっけ?
昨日は朝起きて、ご飯食べて、後は魔法の練習とかして、その後に皆んなと雑談をしたんだったな。雑談?
雑談は、たしかオレが皆んなに色々聞きまくって、なんかルークに心配されて……そこ……から。
「なんか顔赤いぞ」
「……」
朝なのに、鼓動が速くなって顔が赤くなってる気がする。いや、絶対そうなっている。
昨日は、そうだ。
ルークに心配された後に顎をこう、クイッてされて恥ずかしくなって、ついついオレの超特別究極攻撃光線を打ってしまった訳だ。……今思えば、もう一回それをやって欲し――なんて思う訳無いからなっ!
オレが技を打った後はそのまま壁を破壊して破壊して破壊の限りを尽くして、さらにパーティーの皆んなを攻撃の巻き添えにして、皆んな気絶したんだっけか。
ほうほうほうほう。なるほどね。
え、オレもしかしてやばい?
いや、だってほら、善意で心配してくれたのにそれを無碍にして、皆んなを攻撃して、さらに我らが勇者パーティーの家をぶち壊してるんだよ?
最悪これでは、ルークに『お前勇者パーティー抜けろ』だなんて言われてしまう。そんなこと言われたら――あぁぁぁぁ!
「お前勇者パーティー抜けろ、とか言わないよね?! ごめんなさいごめんなさい! ルーク様になら何されてもいいのでどうか、どうかそれだけはっ!」
「……」
無言が辛いでございます。ルークよ。いや本当に勇者パーティー抜けろは嫌です。……ルーク様の側に居られな――いや、無職になってしまう! っけ、オレなんて所詮平民上がりさ、どうせ地元に帰っても農業するだけさ。
ルークは少し考えた様な素振りを見せたあと、もう一度こちらを向いてきた。そしてその口が開く。
「なら、罰を与えようか」
「……」
お、おう。なんでも言いやがれ。別に夜の付き合いでも恋人になって欲しいとか結婚しようとかでもなんでも許してやろう。
「よし……アルカの罰は――」
「ちょっと待ってください!」
おや? どうしたかねヒカリちゃん。今大事なところだっただろう。オレは心の中で覚悟を決めてなかったから助かったがな。
「……アルカさんの罰を、わたしが決めても良いでしょうか」
えっ。うん。えっ……。さ、さいですか。
ヒカリちゃん意外と怖い部分あるからあのまま、ルークに決めてもらったほうが楽だった……。いやまだヒカリちゃんがオレへの最終決定権を持っているわけではない。ルークも、わざわざヒカリちゃんに最終決定権を渡すようなことなんて――
「いいぞ」
「ふぁっ」
オーノー。なんてこった。罰を、ヒカリちゃんが、決める? たしか昔に決められたのは、お金を勝手に使った時の『語尾に、にゃんを付けたまま一ヶ月過ごす』だっけか。しょうもないけど、今思い出してもキツイなこれ。これの所為で、町の皆んなから、馬鹿にされまくったんだぞ。
ヒカリちゃん、許すマジ。
「はい。それではアルカさんの罰は……」
罰は?
「何勝手に決めようとしてんの。私も決める」
いやリースちゃんも来るのか。いや、リースちゃんだと? あの、リースちゃんの夜ご飯全部食べてしまった時の『一日左手が使えない縛り』だったリースちゃん? それならこの聖女の皮を被った悪魔と、ツンデレ優しい天使で、罰の度合いが良い感じに保たれるのではないか?
ふっふっふ。勝った! この勝負!
「いいえ駄目です。わたしが決めます」
「え、いやでも」
「駄目です(圧)」
「……はい」
うわ怖いってヒカリちゃん。そんな圧でリースちゃんをいじめないで。
え、ていう事はオレの罰はヒカリちゃんが全部決めるの? ……そうだ。パティだ。パティが居たじゃないか。
「……(たすけて)」
「……(無理)」
こいつ絶対許さないわ。こんな美少女が助けを求めてるのに即答で断るとかあり得ないって。お前実は男じゃないんだろ。
「どこを向いているのですかアルカさん?」
「……あ」
やばいやばい。体全体に圧が! 圧がぁぁ!
「罰……そうですね――」
「あ……あ」
嫌だ、聞きたくない。聞きたくない! あんな恥ずかしいことをするのはもう御免だ!
「――ルーク様とのお話4日禁止でどうでしょう」
「……っ」
え、なんで今胸の辺りがチクっとしたの? おかしいよね? うんおかしいね。
たしか、ルークとのお話禁止だよな。それが4日となると、丁度ここから王都辺りまでということか。そんな地ご……天国みたいな機会逃せるわけ無いよな。ルークと接触せずに済むんだぜ? 戦闘とかは非常時だし別として。
つまり俺からすればずっと普通の状態で居られる訳だ。イコール、百合ハーレムへの一歩を刻んでいける。
ふぅ。今回のヒカリちゃんの罰は重く……軽く済んだぜ。良かった良かった。
今日からの4日間は取り敢えず百合ハーレムを築くためにオレの最強具合を見せて、持て囃されるとでもしよう。
目指せオレの百合ハーレム!
罰の怖いヒカリちゃんは別で。
……4日かぁ。




