4C:災王ルート(プレビュー版)その7
数時間が経っただろうか。
もう何処からもコボルトの悲鳴は聞こえてこない。
石造りの街に響くのはアイヴォリーの民たちによる報復の咀嚼音のみだ。
そして黒魔法の災厄認定魔女たるイゾルデにとっては常である、静かな勝鬨だった。
生き残りは慰み者の最中にあった数名の女と、
井戸深くに隠れていた少年が一人のみ。
いずれも例外なく茫然自失の状態だった。
もちろん彼女たちの前でも、人形たちは構いもせず食事を続けている。
「所詮はコボルトですわね。初級の黒魔法を見た途端、早々に尻尾を巻いてしまうだなんて。これではポッと出の『災王』とやらに服従してしまうのも無理有りませんわ」
そんなぼやきを口にしつつも、
イゾルデが厩から引いて来たのは一頭の黒毛馬だが、
その胸からはアバラが覗いている。
食い破られた喉から皮膚が衣類のように垂れ下がり、
濁った眼からも死しているのは、『人形』なのは明らかだった。
それにまたがるイゾルデを、虚ろな目で見つめる生き残った女たち。
そして『人形達』は主の出立を知った召使のように、
ぞろぞろと立ち上がると彼女の後ろへ並んだ。
イゾルデが馬の腹を足で軽く叩くと、馬は黒い瘴気を吐き出して嘶いたのち、
カッポカッポと石畳を蹴って街の外へと歩み始める。
人形たちもそれに続いて虚ろな行軍を始めた。
そして、生き残った少年がその最後尾に付くと、
女たちも迷ったように、しかしその後ろへおっかなびっくりと続くのだった。
エイリスが最強の魔女ならイゾルデは最恐の魔女です。
本編より詳細な描写を加えているため、ゴア表現があがっています。
設定も文章の盛り込めるので良い感じなのですが、
テンポと執筆速度はやはり落ちてしまいます。




