表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/78

4C:災王ルート(プレビュー版)その1

この話は本編後の用意された3ルートの1つ、カラミティキングの先行公開版です。


注意 

ここから先は本編より残酷な表現が強くなります。

コメディ要素も低いダークファンタジーよりです。

お気を付けてプレイ開始してください




 女王都クィンダムの城内で最も質素な石造りが、ここ見張塔の伝書鳩小屋である。

 各地方との手紙交換を担う伝書鳩の飼育場であり、同時に城の郵便箱とも言える。


「おはようございます、皆さん。朝ごはんですよ」


 吐く息も白々とした早朝。

 鳩たちを窮屈に閉じ込めている檻の扉をクロウが開いても、

 飛び出さず小首を傾げているだけの行儀の良さは、

 彼女の祖父にして先代のマイスターであるレイヴンが、

 如何に愛情深く世話してきたかを物語っている。

 クロウは粉末状にひき潰したトウモロコシを浅袋から取り出して、

 自らの手でエサを与えながら言った。


「しっかり食べてくださいね。そして今日も明日もこれからも、大事なお知らせを届けてください」


 エサをついばむ鳩たちに優しく語り掛ける。

 医学書と歴史書の読み過ぎで、鳩を見つめるクロウの目つきは鋭く、

 それは彼女の悩みの種となっている。

 この目付きに加え、八ヵ国随一の才女にして王女モニカの相談役という肩書も相まって、

 彼女は近寄りがたく、女王都では数名を除く貴族から距離を置かれて孤独だった。

 もともとは、彼女は好奇心旺盛で快活な少女だった。

 朝鳥よりも早く目覚めて、男の子たちと野原や森を駆け回り、

 日が沈む頃には侍女が真っ白にしていた服を泥だらけにして帰って来る。

 そのエネルギーを祖父が学問に向けようと『錬金術』の書を与えた結果、

 彼女はその分野で周囲が目を見張るほどの頭角を現したのだ。

 あのマイスター・レイヴンが発案した『沈黙の薬・改』のレシピにさらなる改良を加えたのが昨年15歳のときである。

 アイヴォリー地方の名門学校で研鑽を積んでいる最中に、

 クィンダムに召集されたのも無理はなかった。

 その年に丁度、レイヴンがマイスターを引退したのだから。

 エサを食べ終えた鳩から順々に、

 クロウは、自身に懐きすぎない程度にその身体を撫でてから檻に戻していく。

 この子はアイヴォリー地方と往復する鳩。

 この子はシュルトルーズ地方と往復する鳩。

 この子はルージュ地方。

 足の飾りに各地方を治める名家の紋章がついているので、マイスターはこれで区別している。

 そしてクロウは思う。

 もしも渡り鳥も手名付けることが出来たら、

 海向こうのヴァニーユ地方とも手紙のやりとりができるのに、と。


「私がマイスターとして最初に為すべき偉業は、それかもしれませんね。ふふ」


 最後の鳩を檻に戻した時、外からバササっと一羽の伝書鳩が飛来して、

 石窓に付けた止まり木へ羽根を落ち着けた。

 微かな機微だが、彼女には鳩の目から動揺を読み取れた。

 クロウは胸騒ぎを覚えつつも、鳩が運んできた手紙を足首から外した。

 時刻は懐中時計を確認するまでもなく早朝。

 随分せわしい。

 訃報だろうか。

 鳩の足飾りにはアイヴォリー家の紋章。あそこの当主はまだ若い。

 先代か親戚か。それともいったい何かしら、と手紙を広げる。


 ――コボルトの夜襲あり。アイヴォリーは壊滅。民も虐殺。当主も首を奪われ、遺体も辱めを受ける。もはや救援を願わず。ドラゴンによる報復を乞う。我が当主の無念を晴らされたし。


 クロウは手紙の途中で頭が真っ白になったが、

 なお打ちのめすかのように、

 止まり木には続々と伝書鳩がバササ、バササ、バササと止まっていく。

 フレイトナー、シュルトルーズ、ブルクレール、

 それは前王マーカスの成し遂げた和平が終わったことを告げる凶報の前触れだった。


活動報告に記載の通り、前作の反省を活かして文章にテコ入れをしています。

最終的にどんなスタイルに落ち着くか、模索しつつ執筆中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ