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3:シュルトルーズ家のファミリア:その10『最大魔法クロックと静止世界』

「突撃!」


 ライトドラゴンは我に返った。

 なんだ。

 さっき消し飛ばしたはずの『廃棄物』がまた殺到してきたのだ。

 気の迷いか、と再び光の禁断魔法『ワルキューレ』を放った。


「突撃!」


 ライトドラゴンは我に返った。

 まただ。

 またこの瞬間が『繰り返し』ている。

 確かに焼き滅ぼしたはずだ。

 

 ――そうか。


 ライトドラゴンの眉間に皺が寄る。


 ――これは、そういう仕掛けなのか。


 自分が『鏡世界』の支配者だからこそ分かるのだ。

 何者かがあの2千の中に紛れていて、

 そして『ワルキューレ』で死ぬたびに、死の直前に戻すよう『繰り返し』ている。


 ――いいだろう……根競べか。何度でも焼いてやる!


 ライトドラゴンはまたも『ワルキューレ』を放ち、大地を緑炎で焼いた。


「突撃!」


 ライトドラゴンは我に返った。

 かぶりを振ってまたも『ワルキューレ』を放つ。


「突撃!」


 ライトドラゴンは我に返り、そして『ワルキューレ』で薙ぎ払う。


「突撃!」


 終わりが見えなかった。

 何度でも何度でも、彼らは蘇り、「突撃!」と自分に刃向かってきた。

 戦乱とは無縁だったライトドラゴンは、

 そのたびに深い傷を心に負っていることに、しかし気付けなかった。


「突撃!」


 何度目だろうか。

 もう分からない。

 そして終わりがない。

 だから彼女は決めた。

 一体だれが、この『繰り返し』を行使しているのかを突き止め、ソイツ以外を仕留めてやると。

 殺到してくる王、そして守護騎士。

 大本命はコイツらだ。

 迫り来た王の一撃が振り下ろされる瞬間、時間は唐突に『静止』し、大ぶりの刃はピタリと首筋で止まる。



 クロック:光の最大魔法の一つ。

 自分を除く世界の時間を停止・再開させる。

 彼女はこれを『静止』と呼び、また触れた者の時間のみを自在に『再開』させることができる。

 光と時間が無関係でないのは、

 遥か未来に偉人によって解明されるものの、

 その操作を許したのはライトドラゴンが最初で最後である。

 その初歩は『光と同速で思考・行動する』ことなのだ。


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