Billow of us
20XX年 12月の中旬
段々寒くなる朝、布団を抜けたくない季節だが起きなければならぬ...
準備が終わった俺は急いで待ち合わせ場所の駅に向かった
「おっせっよー!」
同じ部活の同級生だ。
一本遅れてしまったのに待っていてくれたらしい。
「すまんすまん」
またいつもの日が始まった。
俺はテニス部に入っている。
運動部活では結構きつい方でほぼ毎日朝練がある。
こんな季節の朝は億劫だ。
4月に夏のインターハイの仮メンバー(ほぼ確定だが)が発表されるのでこの時期になるとみんなコーチにアピールしたりなど頑張っている。
夏のインターハイで卒部という仕組みなので三年生の先輩からしたら最後のインターハイなのだ。
1月の初旬
皆年末年始で瞬発力もパワーも落ちまくっていた。まぁ自分もなんですけど。「仕方ないよねー」「だね」そんな会話をよそに朝早く練習場所からは壁打ちの音が高らかに鳴り響いていた。
年末年始、ただ一人だけ技術が明らかに上がっている人だった。
A先輩だ。彼は去年、先輩とのダブルスのインターハイで負けてしまい、かなり落ち込んでいた。明らかに先輩の技量の無さが原因だったのに。
今年ことはと息混んでいるのだろうか。なにかに打ち込む先輩の姿、正直カッコいいです。それに比べて自分は...はぁ。
四月の初旬コーチが練習に皆を集めた。まぁ言うことはわかってるけど。
家に帰った俺はご飯を食べる前に眠いからと先にベットにはいった。
そして枕に向かって大声で叫んだ。笑顔で。
今年のダブルスのメンバーの発表でなんと自分とA先輩で組めというのだ。あのA先輩と! 来週の練習からダブルスの練習も組み込むそうだ。ワクワク。
そこから一ヶ月間俺はA先輩とダブルスの練習に励んだ。自分がダブルスになれていないぶん先輩には迷惑をかけていた。だが先輩は文句もいわず指摘してくれ、練習に付き合ってくれていた。
この人とともにインターハイで戦える。今まで特に目的もなくただただ部活が楽しいと部活に打ち込んでいた自分に、その気持ちが自分のモチベーション、拠り所になっていた。
5月の中旬
インターハイは観客なしで行うという方針に決まったというニュースをテレビで見た。一応テレビやYouTubeで中継が在るらしいので親全くみれないということ家もないらしい。まぁそんなことどうでもいいんですけど。このときは。
6月の初旬ほとんど顔を見せないコーチが練習中に皆を集めた。
その時コーチを見たときの印象は。暗かった。「みんなインターハイについてだ...」
家に帰った俺はご飯を食べる前に眠いからと先にベットにはいった。そして枕に向かって大声で叫んだ。泣きながら。
「みんなインターハイについてだ。実は今学校からの連絡があって、、、インターハイは中止になった」
メンバー全員その言葉の意味が理解出来なかった。
「コーチ。日程が延期になったのですか?」誰かが質問した。まぁそうなるだろう。
「いや、中止だ。」
親が学校とのメールでそれを知ったとき自分にいった言葉はこうだった。「残念だったわね」。しっくり来ない。納得できない。何で出れないんだ?あの先輩が?その時自分など眼中になかった。
コーチから発表されたあの時A先輩がどんな顔をしていたのか見ていなかった。だから先輩の気持ちをみることが出来なかった。次の日の朝練、なんのために行くのかもわからないような物に朝起きるのが億劫で、その日の朝練は休んだ。
次の朝練ではさすがに連続で休むのもなぁと思ったので、朝練に少し早くいった。学校についたとき練習場所からは壁打ちの音が高らかになっていた。
A先輩だった。
思考が止まった。なぜ先輩は練習しているんだ?もう先輩の朝から練習する意味はなくなったはずなのに。
「A先輩おはようございます!」
来たからには練習に参加しなければと練習に加わった。
今日もダブルスの練習だった。
7月、本当にインターハイはなかった。なんなんだこの夏は。
その後先輩の卒部式があった。ある程度の恒例の流れが終わった後自分はA先輩と話をした。懐かしい思いでなどで話を始めつつ、徐々に自分の疑問をぶつけ始めた。
「先輩。何でインターハイがなくなったのにまだ自分とのダブルスの練習を継続したのですか?何故あんなにも練習に熱中できたのですか?」
先輩の答えは単純で明確で熱い信念で出来ていた。
時は過ぎ今度は自分が次のインターハイで卒部の時になった。時間が進むのは、早いなぁ。そう実感した。
コーチが今年のインターハイのメンバーを発表した。自分はひとつしたの後輩とダブルスをすることになった。コーチがいうには、お前が一番ダブルスになれているからだという。ありがとう先輩。先輩と俺のあの練習の日々は無駄じゃなかった。そう実感した。
例え明確なモチベーションが無かったとしてもいつか役に立つから、この努力は無駄じゃないから、後で自分で胸を張って頑張ってたと言えるようにするためというA先輩の言葉は嘘じゃなかった。
夏のインターハイ今年はあった。
まぁこれが普通なのだが。インターハイ後家に帰った後すぐにベットに入った。
そして枕に向かって叫んだ。笑顔で。