第五話「あの日の事実」
第五話です。やっとキャラの名前決まりました。良かったぁ。
軽く経緯を説明しよう。
俺は建物の壁を工事するアルバイトをして金を稼いでいるのだが、この間仕事仲間に「飲みに行かないか?」と誘われたのだ。アルコールが苦手な俺は断ろうか迷ったが、同業者の縁もあるが故、流石に断りづらく「ビール一杯までなら」という約束で行くことにしたのだ。
時刻は夜。案の定、その約束もとうに忘れ、酔いまくっている同僚は俺にグイグイと二杯目のビールを俺に勧めてくる。俺は押しのけるように断っていたが、上司の「飲みニケーションは大事だぜ?若造よ!!」の一言により、俺はその後もビールを飲み続ける羽目に。
まったく、この世界の奴らの時代は古いんじゃねーの!?誰もが酒やビールが得意な奴とは限らんだろうが!!
そんで、五杯くらい飲まされ続けた俺は、少し飲み場を離れて店の裏で吐きに行こうとした際に、偶然店の前で会ったのだ。
その時、俺はそいつの顔、いや全身にゲロをぶちまけたのである。
「うわあああああああああ!!!何してくれる貴様ァァァァァァァッ!!」
俺によってぶちまけられたゲロに彼は悲惨な表情を浮かべ、すぐに上着を脱ぎ捨てる。
「あー………ごめん………ちょっと、大分気持ち悪くて………うぷっ………」
まだ気持ち悪い………これ以上飲んだら死ぬわ………。
「気持ち悪かったで済むと思うか!!?クリーニング代を払え!!」
「金なら、酒場の中にある………自分で取ってきてくれませんか………おえっ………」
あ、少し出た………が、まだ頭がグアングアンする………。
「汚いなー………そんなに飲むかよ………普通………」
とても嫌そうな顔でこちらの方と捨てられた上着にまかれたゲロを交互に見つつ、匂いにやられて自分まで気持ち悪そうにしている。
俺は率直に、今の彼の状況、いやゲロをまかれた方じゃなくて、
「……………そういえば、あの女の子は………?」
こっちを尋ねた。すると、少し困った、というより罪悪感が滲み出た表情をして答えた。
「おま、」
「オロロロロロロロロロロ」
その答えに反応する前に、第二波が俺を襲った…………。
………………気が付くと、俺はまた見知らぬ天井を見ていた。
首を回して窓に映る景色を見ると、まさに今日が昇ってきたような薄暗くもハッキリと見える朝だった。小鳥のさえずりも聞こえる。
「俺はここまで夢を見ていたのだろうか」そう思うのも束の間であった。
「起きたな………俺がここまで運んでやった」
そいつは、窓に対になるようにある扉の横に腕を組んでもたれかかっていた。ああ、やっぱ夢じゃないんだな、ここが今ある現実なんだな。そう思った。
「ここは………どこですか?」
「敬語はもういい。俺とお前はどうやら同じ歳なんだからな。ここは俺の家兼依頼引き受け屋だ。それより、どういうことだ?」
俺も依頼引き受け屋ってとこが気になるのだが。
「?どういうことって、どういうこと?」
「はぁ…………俺とお前を引き連れたリンダが別れる時、」
「そういえば、俺はまだお前の名前聞いてない」
「はぁ………そうだったな。俺はザード・ベネティクス、ベンでいい。そんでお前を病院で介抱していたのがリンダだ」
一々嫌そうに言うなよなー。
「あいつ「お前とタッグを組む」って言っていただろう。ずっと一緒にいたんじゃないのか?」
あ、そういや言ってたな………。俺もよくわからんっつーことで、取り敢えず今までに起きたことを説明する
。
「もしかしたら、引き留めて欲しかったんじゃないのか?」
「あっ………」
この時、俺はこいつのことを心の底からかっこ悪いと思った。
「絶対そうじゃねーか!お前、リンダさんのこと、ちゃんと探したんだろうな!!」
俺はベッドから起き上がり、ベンに怒鳴り散らす。
「いや、探しはした。だが、この町の外までは………」
「探せよ!!」
「お前、それ知ってて言ってるなら相当馬鹿だぞ!!町の外にはモンスターが沢山いて危険なんだ!!だから誰も滅多に町の外には出たがらない!!」
あの高い壁は、モンスターから町を守るためのものだったのか。って、納得してる場合じゃねえ!!
「じゃあ、なんで俺が町の外にいたのにあいつは助けてくれたんだ!?少なくとも、俺はこの町から十キロは離れてたぜ!?」
真顔で答えるベン。だが、冷や汗はかいている。おそらく、リンダさんが町の外にいる可能性を考えているのだろう。
「あの時はモンスター討伐の依頼を引き受けていて、馬車でたまたまあそこを通りがかったからだ!勿論俺も同行していた。依頼はモンスター退治で、普段通り俺が攻撃役であいつが補助役をしていたんだ!だから外に出られたんだ!モンスターなんてのは、俺の場合は補助魔法を覚えているやつと同行しない限り、倒すのにも苦労するし、死ぬ可能性だって十分あるんだ!!」
俺はベッドから降りて、ベンの胸ぐらをつかみ、さらに怒鳴る。
「じゃあ、その補助魔法を覚えているやつをこの町から引っ張り出して、一緒に行けばいいじゃあねえか!」
「この前………お前が来る前のことだ………駆り出されたんだ………王国の奴らに……………」
「王国………クラピウス王国のことか?」
「ああそうさ。リンダはその時、お前がさっきまで寝ていたベッドの下の隠し部屋に隠れていたから見つからなかったが、他に回復魔法を使える奴は、もういない………それに、こんな小さな町では、大それた剣士なんていない。なんせ、この町で一番強いと言われているのは、この俺なんだからな………」
王国の、黒い噂………。
「………お前が助けに行かないんだったら、俺にだってあいつに恩がある身だ………………俺が………」
「コンコン」
「「………………」」
俺とベンは、横のドアから、誰かがノックする音を聞き、そちらをむ向く。そして、扉が開かれる。
「あのー、お忙しいところ悪いんだけど、ベンさん、依頼が来ておりましたよ」
「大家さん………」
出てきたのは、五十歳かそこらのおばあさんだった。顔にはしわもできていて腰も曲がっており、背も小さい。
ベンが手紙を受け取ると、「あまりうるさくしないでね」優しく言って去っていった。どうやらここは二階で、俺達はさっきのおばあさんが階段を登りそれがきしむ音さえも聞こえないほどの声量で言い合っていたようだ。
その手紙の裏、俺はすぐに依頼主の書かれる場所だと分かったが、そこには「リンダ」と小さな文字で書かれていた。
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