第三話「ここは異世界」
三話です。九時に投稿予定だったのですが、いろいろあって十時に投稿します。ごめんなさい。
なぜだ………なぜ俺は今、俺のことを助けてくれた名も知らぬクールビューティな男に険しい表情で短剣を向けられているんだ!?
全然わからなーい。ギャグマンガだったら頭の上に「?」という記号を「ポカン」という効果音も合わせて出ているのだろうが、今はどっちかっていうと重たい感じなのでそういうのはない。
「貴様………もしや王国の回し者だな?だからこんな変な服を着て、さっきここがまるで夢のようで信じられないって感じのしぐさをしたんだろう。それにだ、バレずに潜入するには、身分証明書なんてものはない方がいいし、この町にならどんな荒くれ者でも、身分証明書のカードがない奴でも入ることができる。金を持っていない理由は知らんがな。とにかく、今から三秒以内に貴様の名前とここに来た経緯を話さねば、お前の両目をこれでえぐり取る!」
そう言うと、その男は持っている短剣を俺の右目に近づけてきた。あと少しでも俺が前に出れば、俺は間違いなく失明するだろう。
「分かった!分かったから!話すからこの剣を取り敢えずどけてほしいです!」
「その腰は………王国の者だな………これで確信した!」
「違うって言ってるでしょ!?俺は赤城悠斗、二十五歳!田舎から上京してとうきょ………」
待てよ……そういえば俺が倒れる寸前に聞こえた暗い声が、「別世界の悪い奴らを倒せ」的なことを言ってたな。ということは………ここは異世界ってことか!?
「三」
多分そうだよな………こいつらの恰好変だし、病院って言ってるけど建物が木でできてる部分も見えるし、全体的にファンタジーな感じするし、王国とかいってるし………。
「二」
それに、俺をこんな風に生き返らせることができる暗い声の主って、もしかして神に近い何かだったりするのだろうか。
「一」
違う、今考えるのはそっちじゃない!なんて言えば納得してもらえるか、だ。「俺は異世界から来ました。何か悪いものを倒さなければいけないんです」なんて言ってみろ。俺の両目が吹っ飛ぶぞ。ここの世界のことは全然知らんが、どうにか説得力のある嘘をつかないと………。
「田舎から出稼ぎに来たんだ!そんで、その道中で盗賊にお金とか身分証明書とか取られちゃって、絶望的状況になって打ちひしがれてたところをあなたたちが助けてくれたんです!本当にありがとうございます!」
俺は必死に、早口で話したが、
「……………胡散臭い………………」
だよなぁ!?やっぱそうなるよなぁ!?俺、どうせ死ぬなら、まいちゃんに俺の死を泣かれながら死にたかったぜ………。
「アカギユウト………かなり変わった名前だね。二十五歳、年上だったかー。でも、誰に対しても同じように接した方が絶対良いよね!これからよろしくね!ユウトくん!」
「「!?」」
俺も、俺に短剣を向けていた男も、同時に女の子の方を見た。
「こんな嘘っぽい奴を信じるのか!?」
嘘っぽいとは失礼な!これでも、盗賊に奪われたってこと以外は全て事実に基づいたことなんだからな!?まあ結局嘘なんだけど。
「だって、本当だったら結構可哀想だと思わない?田舎からわざわざ出稼ぎに来て「さあ頑張っていこう!」って気合入れてたのに、お金も何もかもぜーんぶなくなっちゃったんだよ?可哀想じゃんか!」
「まあ、それはそうだが………俺は、お前がこうやって簡単に騙されそうになるから、こうやって疑り深くしてるんだ………」
「あっそ!だったらもうあなたとタッグ組まないから!私、この人と組むし」
そう言うと、その女の子は俺の腕を掴み無理矢理引っ張って部屋から出ようとする。
「おいっ!ちょっと待て!まだ医者も来てないんだから、まだ出ては………」
その言葉を女の子は無視して、部屋を出ていく。俺もその子に引っ張られて出ていくのだが、扉が閉まる瞬間に見えた男は、手を伸ばしながら真顔のようで少し寂しそうな表情をしていた。
本当にごめんなさい。誤字脱字あれば報告していただけると嬉しいです。