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エレン  作者: 蛍野霞穂
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5.明けてまた吹雪

 夜明けの空を白々と太陽が染めていく。輝く雪のまぶしさに、リアはほんの少し目を細めて足を止めた。


 サク、と軽い音とともに、点々と続いてきた足跡が途絶える。村の方を振り返って、リアは小さく息をついた。


 一晩、一度も足を止めることなく歩き続けたことでかなりの距離が稼げた。山を三つ越えれば街に出る、と幼い頃に聞いた話が本当であれば、もう間もなく景色ががらりと変わるはずだ。


 問題は、そこから。


 ただでさえ困窮した生活の中から更にお金を持って出ることなどできるはずもなく、自分で作ったものや狩ったものしかもってきていない。村ではほとんどが物々交換という原始的な暮らしをしていたのでお金に困るという経験はほとんどしたことが無いが、街ではそうはいくまい。


「……………取りあえず、歩かなきゃ…」


 埒があかないことをつらつらと考えていたことをリアは、自身を襲っためまいにくらりとよろめいて目を瞑った。


「……、ッは」


 動き続けることには慣れているが、全力で雪を掻きながら一晩中歩くのは想像以上に骨が折れる。体力が無尽蔵にあった幼い頃とは訳が違うのだ。大事に使わないと、とても彼を見つけるまで無事ではいられない。


 よろめきつつも、息を整えて歩き出したリアの頬にザアッと風が吹き付けた。


 横で一つに括った黒髪が、靡いて視界を遮る。


 しばらくのあいだ吹き続けた風はやがて、吹き始めたときと同じような気まぐれさでぴたりとその息を止めた。


「あ……」


 そして、眼前に切り開かれた光景を見てリアは小さく息を呑む。


 街、だ。家がところどころに点在する、ただそれだけの生まれ故郷とは明らかに異なる集落が、そこにはあった。早い時間から動き出す人々をなぞるように、柔らかな朝日が街へと向かう。


 遠く離れたリアの場所までも聞こえてきそうな活気があるのが、一目で分かった。人が多い、ということは。


「きっと、………エレンの行方が分かる」


 なにを置いても、まずはエレンの手掛かりを見つけたかった。そのためには、情報が集まる大きな街で過ごさなければならない。ただそこに居るだけではなく、人と関わっていくことが必要なのだ。


「頑張らないと、ね」


 街が近づいた雪原の上で、一人、リアは空を見上げてそう呟いた。


やっと書きたいところが始まりました!気になるところがあったらがんがんご指摘いただけると嬉しいです!

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