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六話

「でもここでメイはアーマリア様を精一杯お手伝いするニャ!」

「ええ、助かるわ。じゃあまずは迷宮に挑んでおきたいわね」

「本来は近隣で雑草抜きとか素材採取のお仕事から始めるものですニャが、アーマリア様は迷宮に挑む義務があるので順番を飛ばさないといけないニャ」


 メイのお陰で色々と助かるわ。

 そう言った基礎の仕事もある訳ね。


「迷宮はとても危険な場所なのニャ。魔物がわんさか湧いて、どれだけ浅い所でも戦いをしなくちゃいけないニャ。もちろん魔物独自の素材を欲している依頼などがあるからそれを目的にしたりするのも良いニャね」


 ただ……とメイは答える。


「依頼の類は……犯罪服役者は請けるのは信用の点で難しいので個人依頼を探すか、魔物から採れる素材や魔石をギルドに直接納品して買い取ってもらうしかないニャ」


 シンプルだけど絶対に足元を見られる構図ね。

 ギルド職員の反応的にまず間違いない。


「監視役がまだ来てないから明日来いって言ってたわね」

「じゃあ今日はお試しで迷宮に潜って経験をするのが良いニャ!」


 確かに、ぶっつけ本番で戦いをするより少しでも経験した方がいいよね。


「ここは安心してほしいニャ! メイが間に立って、メイがリーダーとして依頼を受けるニャ! アーマリア様、カードを貸してほしいニャ!」


 おお、その手があったか。

 頭良いな。メイは。


 と……メイはギルドの依頼カウンターに向かって行き、依頼書を握って受付の人に話をしに行った。

 けれど、なんかトボトボと肩を落として帰ってきた。


「メイのランクじゃアーマリア様とご一緒の依頼で採取の依頼は受けられないって言われちゃったニャ」

「しょうがないわよ。気にしないで」


 メイの頬を撫でる。

 ああ……可愛い猫をなでる みたいで、背中がぞくぞくして全てを忘れてしまいそう。


「うにゃ~ん……アーマリア様、メイを撫でるその手つきはお変わりないニャー……」


 メイは可愛らしいなぁ。

 このままずっと撫でまわし続けたい。

 長毛種特有の感触が素晴らしいわ。


「ハッ! アーマリア様! メイを撫でている場合じゃないニャ! 生き残る為にまずは状況確認ニャ!」


 誘惑を撥ね退けてメイが離れて言い放つ。

 ああ、誘惑のモフモフが!


「それではどうしようかしら……」

「まずはアーマリア様がどのように戦えるのか、メイがどれくらい戦えるのかの確認と、迷宮へと挑むパーティーを結成するニャ!」

「わかったわ。とはいっても……まずは家宝の鎧の所へ行きましょうか」

「もちろんですニャ!」


 そんな訳で登録を終えた私達は迷宮都市で降ろされた場所に戻ってきた。





 そこには当然、家宝の鎧が荷車に積まれている。


「ああ、やっと来たか犯罪者。登録を終えたんだからサッサと降ろせよな」

「ぶ、無礼ニャ……」

「いいのよ、メイ。私自身の罰よ」


 メイを宥めつつ、私は家宝の鎧に近づく。

 するとカターンと相変わらず私が乗るのを待つかのように鎧の胸にある留め金が外れた。


「ニャニャ!?」


 そのまま私は家宝の鎧の中に入る。

 すると胸の部分が戻り、乗り込む事に成功。

 暗闇から視界が開けて鎧を着込んだ。

 着込んだというか、乗った。


「よし、こんな感じね」


 ガチャンと立ち上がってメイに声を掛ける。

 ああ、この鎧を着ているとメイがより一層小さく見えるわ。


「ニャアア……本当にあの鎧をアーマリア様が着ているニャ。仕組みが全然理解出来ないニャー……」

「ふふ……」

「な……な……」


 家宝の鎧を降ろすのを待っていた輸送をしてくださった方が私を見て絶句している。

 絶句するのも当たり前だけれど。


「此度の輸送、誠に感謝します。それでは失礼しますわ。さ、メイ……私の肩に乗りなさい」

「で、ですが」

「良いのよ。そっちの方が話がしやすいわ」


 私は屈んで手を伸ばし、メイが昇りやすい様にする。


「わ、わかったニャ」


 メイは恐る恐る私の手を伝って肩に乗ってギュッと座る。

 ああ……その可愛らしいお手々と腰の感触を鎧を着ずに味わいたいわ。


「じゃあ、立つわよ。しっかりと掴まっているのよ」

「はいニャ!」


 私は立ち上がってガチャンガチャンと歩き始める。


「凄いニャ! 視線が高いニャー」

「フフ……」

「あそこの店のパンがとても美味しいニャ! それであのお店は店主のおばさんがとっても優しい人なのニャ!」

「そう……」


 微笑ましいメイの為に私はしばしの間、迷宮都市の町並みを歩き続けたのだった。

 確かに見晴らしが良いわね。

 道行く人々が私に視線が釘付けだったような気がするけれど、それよりもメイが喜んでくれた方がとても嬉しかった。




 それから少しばかり歩き、人の流れが緩やかな公園で一旦私達は話をする事にしたわ。


「――こんな感じで、不思議と鎧を着こなせるのよ。全然力を使わずに鎧が動くの」

「実際に見せてもらったからわかったニャ。確かにアーマリア様の仰る通り、アーマリア様は鎧で戦って見るのが良いと思うニャ」

「ええ、この鎧がどの程度の防御力があるのかも気になるのよね」

「じゃあメイがちょっとひっかくかニャ?」

「それは良いわね」


 リープッド族にはご自慢の爪の出し入れが出来る。

 まずはその爪でどれだけ鎧を傷つけられるかの実験が良いでしょう。

 何より、メイの可愛らしい爪で引っ掻かれるのはとてもドキドキする。

 メイは私に向かって爪を出し、恐る恐ると言った様子で鎧にゆっくりと爪を降ろして引っ掻く。


 ギー……っと音がする。

 一回、二回、三回……っとメイは爪とぎをするかの如く、引っ掻き続ける。

 徐々に力が強まって行くけれど、鎧はびくともしない。


「傷一つかないニャ」

「そうね。見た目だけの鎧じゃないみたいね」


 どれだけ頑丈なのか全然わからない。


「じゃあ今度はメイが魔法を撃つニャ! でも……アーマリア様、本当に大丈夫ですニャ?」

「もちろんよ」

「わかったニャ」


 メイが私から離れてロッドを出して両手で持ち、念じるように目を瞑って、ステップをするように足をバタバタさせながら魔法の詠唱に入る。

 なにそれかわいい。


「初級使い魔法ニャ!」


 ボワっとメイのロッドから火の弾が出て来て私に命中した。

 火の弾は私に当たったかと思うとすぐ霧散する。

 やはり家宝の鎧はビクともしない。


「凄く頑丈な鎧ですニャ!」

「そうね。鎧が頑丈なのはわかったけれど……どうしたら良いかしらね?」


 防御力だけ高くても攻撃手段が必要でしょう。

 そこはメイの魔法に頼る事になるのでしょうけど、私の方も何か出来た方が良いはず。

 けれど……。


「持ち出せたのは家宝の鎧だけなのよね……」


 数点って話だったはずなのに鎧だけ……いえ、一応この当主の腕輪とやらも持ち出し扱いなんでしょうね。

 ちなみに監視役が来るのは明日らしい。

 今日は本来何をする手はずなのかしら?

 お金も持っていないのだから野宿でもさせる気だった?

 ううっ……当然ながら犯罪者には厳しい世の中よね。


「とりあえずお金が欲しいから迷宮に行きたいわ」


 私が許されているのは迷宮に挑んで何らか品を持ち帰って金銭を得る事なのでしょう。

 なら、稼いで稼いで稼ぎまくって生き残る必要がある。


「わかったニャ! メイが全力でサポートをするからアーマリア様もがんばってほしいニャ」

「もちろん。メイは迷宮の場所をわかっているの?」

「当然ニャ! それでアーマリア様、まずはパーティーを結成するニャ。だからカードを出してほしいのニャ」

「わかったわ」


 メイに言われるまま、私はカードを出す為に一旦鎧から出て、懐に入れてあるカードをメイに出す。

 するとメイは自らのカードを私のカードと重ねる。

 フワッとカードが淡く光ったわね。


「これでパーティー結成ニャ! 一緒に行動するとカードが記憶したのニャ!」


 なるほど、こんな仕組みなのね。


「パーティーの解散はどうなっているのかしら?」

「ギルドにある装置で解除するニャ。冒険が終わった際の報告時に行われるニャ」


 ふむふむ、色々と考えられているみたいね。


「万全な態勢でパーティーを結成して挑むのが鉄則だニャ! ギルドで仲間を募るニャ!」

「あまりお勧め出来るとは思えないけど……」


 と言う訳で私達は来た道を一度戻ってギルドで仲間の募集している所に行き、仲間にしてくれないかとの交渉をする。

 まあ当然と言えば当然だけれど、メイが代理としてするとがんばっていたけれど、私の顔……と言うか首元を見られただけでお断りされちゃったのよね。

 世の中犯罪者には厳しい。


 で、一緒で良いと言う冒険者をメイが連れてきはしたのだけど……。

 どう考えても人を騙そうとしているのが一目でわかるガラの悪い冒険者だったのよね。


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