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三十三話


「ところでアルリウス」

「なんだ?」


 私はアルリウスの剣に目を向ける。

 その剣先と私の斧とグレートソードを確認して色々と気になる所が出てきたの。


 現在、私のバトルアックスとグレートソードは度重なる酷使の所為でかなりボロボロになっている。

 段位が上がったお陰で魔物への通りが良くなって刃こぼれをあまりしなくなったけれど、ボロボロ。

 刃はかなり凹凸が出来ていて、若干曲がりもある。


 それに引き換えアルリウスの風斬りの剣は特に刃こぼれをしている様には見えない。

 多少切れ味が落ちたかしら、程度の損耗ね。


「全然刃こぼれしていないわね」

「私には剣の心得がある。無理な斬り付けなどはせずに戦っていたし、アーマリア殿の使い方が力任せなのが主な原因だとしか答えられん。もちろんこの剣が業物であるのも理由であるだろうが」


 やっぱりそんな所よね。

 武器も使い方が上手だとこうも差が出るって事ね。


「最初は剣に宿る風の力で強引に斬っていたのだ。中々に骨が折れたぞ」

「やっぱり業物とかの方が良いのかしらね」

「難しい話であるな。この剣に匹敵しつつ、耐久性のある重たい武器が手に入れば良いのかもしれんが……」


 ちょっと羨ましいと思ってしまうけれど、我慢ね。

 むしろスピナーハンドが物資を送ってくれなかったら素手で挑む事になっていたでしょうし。


「後はそうね……武器に毒を付与してあるのだけど、階層主の魔石の残量が大分減ってきているのよ。補充とか出来るのかしら?」

「そうなのか?」

「ええ、なんとなく毒の力を宿して攻撃しているのだけれど、減ってきているのがわかるの」


 メモリみたいな感覚があって徐々に残量が減ってきている。

 おそらく残量がなくなると使用できなくなるでしょうね。


「まあ困った時にちょっと使っただけなのだけれど、この先の戦いを考えると節約すべきなのかしらね」


 群れで魔物が来た時には毒を使って弱らせる事が出来るから便利だった。

 ある程度、段位が上がったらそれさえも不要になってきているけれど。


「アーマリア様、毒を使うとお肉は諦めないといけないですニャ」


 これも勿体なく感じる理由ね。


「どうにか補充出来ないかしら……例えば魔石から力を取って補充とか」

「試してみますかニャ?」


 メイが袋に入れてあった魔石を出して私に差し出すから摘んで受け取るわ。

 すると腕が反応してスッと魔石を取りこんだ時みたいに、魔石を収納したわ。

 あら? トライヘッドの魔石の力が回復していますわね。


「残量の回復は出来るみたいね」

「ではその方向で補充するのが良さそうだ。問題は魔石を消費してしまう点だが」


 一応、魔石は燃料としてこの世界では使われているし、冒険者にとってはお金の元みたいな代物。

 消費すればする程、本来は儲けが減ってしまいますわ。


「私の場合は実家にお金がありますから困りませんの! 必要とあらば幾らでも使えますわ! オーホッホッホ!」


 貧乏人は苦労しますわね! って調子に乗っているわ。

 流刑追放された時の謙虚さは何処へ行ったのかと自分で内心ツッコミを入れてしまう。

 私の言動にアルリウスが眉を寄せている。

 やはりこういう言動に気になる所があるみたいね。


「最終的に黒字ならば幾ら使っても良いと思いますわ。純度も簡単に手に入らない程に良い魔石ですし、今は投資の時ですわ」


 フラーニャは鋭い考えをしている時があるわね。


「確かにそうか……ふむ……」

「どちらにしても迷宮に挑んでいる冒険者達が現在入手するのも難しい素材が沢山手に入りましたニャ! 売れば一財産を築けますし、他にも利用方法が沢山あるのニャ!」

「その辺りはメイに処理を任せるわ。アルリウスやフラーニャも自由に使いなさい」


 アーマリアはこの手の商売に関して、かなり大雑把な認識をしているので、出来る者に任せられるならそれが一番である。

 前世の知識があると本当、助かるわ。

 貴族に金勘定なんてさせたって良い事は何もない。

 いろんな意味でお上りね。

 一応、どんぶり勘定で人身売買で金銭は得ていたのだけどね。


「もちろんですニャ。実はアーマリア様の所に厄介になっていたリープッドが鍛冶師の弟子をしていて、最近のれん分けをして迷宮都市に来ているそうニャ。なので素材を持って行ってみますニャ」


 誰だったかしら?

 ……何人かそれっぽい子の顔が思い浮かんでくる。

 人手が欲しい腕の良い鍛冶師に売った子達よ。

 この中の誰かでしょうね。


「じゃあ一度挨拶に行くべきね。早速持ちこみに行きますわよ」

「ハイですニャー」

「確かに切り上げ時だ。正直疲れた」

「ご飯も楽しみですわ」


 ああ、フィッシュボアの肉はラグに預けてみるのが良いでしょうね。

 どんな料理が出てくるのか、楽しみですわ。

 という訳で私達は荷車に倒した魔物を積載して迷宮都市に帰還したのですわ。




「こちらでお店をやっているそうですニャ」


 と、メイの案内で私達は迷宮都市の商業通りから外れた裏路地の店に来たわ。

 一応、鍛冶屋であり、製鉄所でもあるみたいね。

 ああ、荷車は当然の事ながら私が引いていますわよ?

 満載で持ってきたわ。

 関所の方々は目を丸くしていたわね。


「では行きますニャ」

「そうね。フラーニャ、私は鎧を脱いで店に入るから見張りをお願いして良いかしら?」

「承知しましたわ」


 一体どの子がやっている店かしらね。

 私は鎧を脱いでからメイの後に続くわ。


 店内は……少しばかり小さいわね。

 味のある木製の壁に、所狭しに武具が飾ってあって、奥の方ではかまどに火が灯っている。

 施設的にはちょっと心もとない印象を覚えてしまうわ。

 リープッドなどの小型獣人種用の武具店って感じかしらね。


 カーン、カーンと小さな剣を叩いて作っていたらしきリープッドが作業を中断してカウンターの方にやってきたわ。


「いらっしゃい……」


 ちょっと元気がなさそうな声ね。

 ……他にお客がいないし、若干さびれているように感じる所為なのかしらね?

 で、その鍛冶師は私の顔を見るなり、瞳孔が広がり、笑顔になったわ。


「これはアーマリア様、よく来てくださったニャ」

「ええ……」


 えっと、この子は……シニアンね。

 小さなくさび型の頭をした短毛のリープッドで、毛色は茶色の縞。

 目はグリーンで前に見た時よりも随分と筋肉質になったわね。

 尻尾が長いのが特徴男の子よ。


「シニアン、久しぶりね。メイから鍛冶師としてのれん分けして店を開いたって聞いたから挨拶に来たの」

「そうでしたかー……来てくれたのが嬉しくて尻尾がピンとしちまうのニャ!」


 本当にピンと長い尻尾を立てている。

 けれど、すぐにユラユラと揺れ始めた。


「お店を開けるようになるだなんて、立派になったわね」

「これも全てアーマリア様のお陰ですニャ。今でも思い出せますニャ……あれは思い返せば運命の出会いだったのニャ。最後に酷い事を言ってすまんニャ」

「気にしなくて良いのよ。こうして話をしていると思い出すわね。監禁した私に貴方が言った『オレを閉じ込めて何をする気だ! この犯罪者!』って言葉は今でも思い出されるわ。最後の言葉は『じゃあな! クソ女!』だったわね……」

「ニャー……恥ずかしいニャー。再会したら謝りたかったから夢が叶ったのニャ。聖女様になっておめでとうございますニャ」


 ニャーニャーウフフ……と思い出話に浸っているとメイが言った。


「ニャニャニャ!?」

「ちょっと待ってくれ……今の話のどこに懐かしむ要素がある? それではまるで犯罪者と被害者ではないか」


 アルリウスが挙手して抗議してきた。

 メイに至っては私とシニアンを交互に見て奇妙な声を上げたわ。


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