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三十一話

 井戸に腰かけるカエルのようなトカゲの様な神様の絵が記されたカードね。

 それともイモリという奴かしら?


「水の浄化がこれで出来るのですニャ。野営にあると便利なカードですニャね。他にも炎風のカードや煙のカードとか色々とあるみたいニャ」

「いざって時に役立つ道具なのね。アルリウスかフラーニャにいざって時に使ってもらうのが無難な所だと思うけれど、どうかしら?」


 カードだから誰が持っていても良さそうだけど……問題は私は魔法が使えないからカードに魔力を込める事は出来ないし、やり方もわからない。

 本当、私ったら鎧を使う以外てんでダメな奴よね。


「かなり値の張る物であるのだが……良いのか?」


 アルリウスが申し訳なさそうに聞いてくる。


「ええ、これから向かう所は大冒険者時代! って興奮している方々でも難しい場所よ。出し惜しみなんてして良いはずありませんもの」

「そうか……なら私はこのカードを一番使いこなせるのはメイ殿かフラーニャだと思う。魔法が使える分、カードの力も引き出しやすいと思うが、どうだろうか?」

「確かにそうニャ。だけどメイは使い魔法が使えるから、補助をしているフラーニャにいざって時に使ってもらうと助かるニャ」

「じゃあフラーニャ、貴方が持ちなさい」

「わかりましたわ。期待に応えられるように努めます」


 という訳でウエストポーチ型のカードホルダーをフラーニャに持たせる事にしたわ。

 柔らかな表情のフラーニャに似合っているわね。

 ベストマッチよ。


「それじゃあ早速出発よ。まずは迷宮までの魔物の殲滅をしないといけないから、この荷車をついでに引いて行って、良い感じに魔物の死体を持ち運べないか試しましょう」

「前みたいにミンチになってしまって使えないって事もあるニャ……アーマリア様、大丈夫ですかニャ?」

「そこは場合によっては置いて行けばいいのよ」


 念のために持っていくってだけなんだもの。

 そもそも鎧の力ってバカに出来なくて、この程度の荷車なら早くは動けなくても引いて行けるわ。


「それじゃあ出発よー!」


 って訳で私達は迷宮都市から目的の迷宮目指して移動をしたわ。





 そうして道中に関所があった。

 大司教の言っていた危険な場所というのは事実な様で、結構大掛かりな関所ね。

 なので聖女としての私のカードを提出して抜ける事になった。


「せ、聖女様!?」


 関所の見張りが家宝の鎧を着た私に敬礼をしているわね。

 何だか気分が良いわ。

 偉くなったみたい……まあ公爵令嬢に戻れた訳だし、聖女でもあるのだから実際に偉いのだけど。


「ご武運を! 聖女様、ご出陣!」

「どうかご無事で」

「聖女様! 良い戦果を……」


 わーわーと兵士達が騒いでいる。

 こんな風に見送られるのは悪くないわね。


「ちょっと不安ですニャー」

「あの者達も腕に覚えがある様に感じた……この先の魔物はどれだけ強いのか」

「私達……ではなく、アーマリア様の力が通じるか気になりますね」

「この鎧を信じるのよ。ここ数日で溜まった鬱憤を晴らす時! 行きますわよー!」


 なんて調子で私はそのまま魔物が出てくるまで目的地に向かって荷車を引いて行ったのですわよ。




 で……関所から少し行った先で荷車を置いてちょっと様子見に行った所でいきなり魔物が出てきたわ。

 魚の様な鱗の生えた二足歩行のイノシシみたいな魔物ですわね。


「ギョギョ!」


 ぞろぞろと群れでこっちに向かってくる。

 変な鳴き声ですわ。

 で、熱烈な歓迎ですわよ。


「資料によりますとフィッシュボアという魔物だそうですニャ。あの魚鱗がとても頑強で普通の武器では刃が立たないって話ですニャ」

「さっそく攻撃が通じるか試し切りをして見ますわ! 皆は下がっていなさい」

「大丈夫か? 素早い動きでこちらに見る見る近づいてきているぞ!」

「ニャー! 苦戦しそうですニャ!」

「無理だったら急いで離脱するに決まっていますわ」


 とりあえず豪快で気に入った斧を担いで持ってきましたわ。


「では補助魔法をアーマリア様に施しますね」


 と、フラーニャが杖に力を込めて私に魔法を掛けてくれたわ。


「では行ってきますわよ! はぁああああああああ!」


 メイ達を後方に待機させ、私はローラーで加速。

 その勢いのままに遠心力を掛けて斧を思い切りフルスイングしますわ。


「ギョ――!?」


 思わぬ急接近にフィッシュボアは驚きの声を上げると共に斧がクリーンヒット。

 カキーンと良い手応えがしましたわ。

 ですが随分と火花が散った気がしますわね。


 ビューンと私の先制攻撃が命中したフィッシュボアが飛んでいき、近くに生えていた木にぶつかってバキバキと二本ほど折った所で止まりましたわ。

 ピク……ビク……っと痙攣していて動く気配はない。


「どうにかなりそうですわね」

「いや、アーマリア殿のあんな重量が掛った一撃を受けたならば、跳ね飛ばされて死んだだけでも十分だと私は思うぞ」


 言われて見ればそうね。

 今までだったら斧を使っていたとはいえ、壁に当った段階でミンチになっていたでしょう。

 それだけ魔物の質が高いという事を表している。


「物凄い音がしたニャ。強いのはわかるニャ……」

「ですね。今の私達では非常に厳しい相手かと」


 メイ達の反応が鈍いですわね。

 この程度どうって事はないですわよ。


「ギョギョ! ぎょー!」


 仲間が初撃でやられた事に驚きを見せているけれど、残りのフィッシュボアは怯まずに私に向かってきますわ。

 あら、賢いのがいるのかメイ達の方に一匹行きましたわね。


「ここは任せろ! アーマリア殿はそっちを任せた!」

「任されましたわ!」


 とはいえ、数が多いですわね。

 ローラーを駆使して地面を高速移動しながら斧をスイングしたり、叩きつけたりして一匹ずつ数を減らしていきますわ!


「ギョ! ギョギョ!」


 ジャリリ! っと加速が足りずに殴りつけると固い魚の鱗みたいな部分が音を立てた。

 残念ながら家宝の鎧の力は鱗よりも強い様で叩きつける事は出来ますわよ。


「ギョ――」

「アルミュール・アックス!」


 掛け声と共に斧を持ち上げて叩きつける作業ですわ。

 中々歯ごたえがありますわね。

 そして少し距離がある相手にはこれですわ。


「不意打ちのアルミュール・トマホークヴァンブレイス!」


 ロケットパンチで斧を持ったまま射出しますわ。


「ギョオオオオ!?」


 ブチャっと斧がフィッシュボアの眉間を叩きつけて、良い感じに飛沫が発生しますわ!

 で、その流れのまま私は近くにいるフィッシュボアを蹴り飛ばす。

 ガインという良い音がして蹴った方のフィシュボアを蹴り上げる事は出来たけれど、そのまま受け身を取られて着地されましたわね。


 斧だとどうにか仕留める事が出来るけれど蹴りだと吹き飛ばすだけに留まるみたいね。

 パンチだと生きていそうですわね。

 なるほど……確かに十分に歯ごたえがありますわ!


 という所で、そういえばこの鎧にはトライヘッドの魔石から力を得て毒煙を出す事が出来たのでしたわね。

 これが如何程の性質を持っているのか、腕がタイミングよく戻ってきたので試す事にしましょう。

 トライヘッドの魔石と意識すると……何故か腕から弾が出る……訳ではなくじんわりと斧に紫色の光が発生しましたわ。


「あら?」

「ギョギョー!」


 隙あり! とばかりに蹴り飛ばしたフィッシュボアが突撃してきたので、流れるように身をかわして駆け抜けるように斧で横切りして距離を取りましたわ。

 ブシュッと斧から紫色の煙が出ましたわよ。


 ズルッとちょっと切れた様な手応えでしたわね。

 致命傷には程遠いですわ。


「ギョ!? ギョオオオ……ギョ……」


 さて、次で仕留めますわ!

 そう思った直後、フィッシュボアが紫色に変色していき、見る見る動きが鈍くなっていったわ。


「毒に掛ったようですわね」


 なるほど……トライヘッドの魔石は武器に毒を宿す事も出来る、と。


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