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二十八話


 フラーニャの補足から察する。

 この波に乗り遅れるわけにはいかない、とみんなして必死に段位上げに励んでいるって状況なのね。

 これまで最前線に居た者はこれまでの地位や能力で利益を独占出来る。

 だから追い付きたいけど、無茶をしたらさすがに死ぬ……。

 とりあえず真っ白なカードが嫌だからと初心者訓練講習を受けているけれど、家宝の鎧で無茶をしたくなってきたわ。


「メイ、どこか勧められる迷宮はないのかしら?」

「うーん……アーマリア様のご期待に答えたいのですニャが、ギルドが提示している迷宮はきっと似たような状況になっていると思うニャ」

「つまりこの賑わいが収まらないと話にならないって事なのね」

「ニャー……」

「ただ、少しずつ人々が段位の力を身につけているのもまた事実。しばらく辛抱すれば魔物に支配されてしまった地域を取り戻すという偉業も世界規模で行えるようになるのだ」


 あ、さすがにこの辺りの知識はアーマリアにもあるわ。

 この世界は邪神がばら撒いた魔物の被害に晒されていて、人々が住める地域ってかなり限られているのよ。

 もちろん対抗するために戦士達は戦っていた訳だけど、奪われてしまった地域は無数にある。

 過去には人が住んでいた都とかね。


 世界規模で活気づくのも当然なのね。

 過去に奪われた人類の生息圏を取り戻すことだって出来るんだもの。


 みんな英雄になりたい。

 もしかしたらその英雄に簡単になれるかもしれない。

 そりゃあ必死になるし、活気づく。

 挙句、今までの常識も通じなくなった。

 成り上がるなら今って事ね。


「となると、私達はこれからどうするべきなのかしら?」


 またも途方に暮れそうな予感がするのだけど?


「私は比較的人が少ない迷宮がないか、他にも使えそうな情報がないかをアーマリア殿が講習を終わらせるまでは集めてからでも良いと思っている。ここで焦って下手に怪我や命を落としては元も子もない」

「なんか悪いわね……」

「気にしなくていい。私もフラーニャも同意見なのだ。とりあえず私達は最前線で戦っている者の自慢話を参考に聞いてみようと思っている」


 それって情報を独占したい連中からしたら絶対に教えない話だと思うわよ?

 あまり頼りに出来なさそうね。


 なら家宝の鎧頼りに迷宮の20階辺りに潜って行きましょう。

 大丈夫大丈夫!

 とか言っても大丈夫かしら?


 うーん……とりあえず真っ白なカードは避けたいので私の用事優先で良いか。

 なんか自分の欲望優先しているけど、気にしない!

 丁度難しいんだから焦って良い事はないわ。


「後はそうね……何か他にも資格が欲しいのよね。武術でも魔法でも使えるって感じの奴」


 今の私は何にもないんだもの。

 前世を思い出す前のアーマリアは本当に家柄以外だと碌な事をしていないしね。


「簡単な方法だと道場で稽古をする事だな。問題はカードに記すほどとなると数カ月は掛るかと思うが……私の場合は自然と覚えていて、ギルドで証明したに過ぎない」

「魔法は使えれば証明出来ますわ。覚える場合はやっぱりしばらく練習あるのみですわ」

「ニャー。アーマリア様が望むならメイががんばって教えますニャ」


 うーん……こっちも時間が掛りそう。

 体に覚えさせないといけないって事なのね。


「カードに記載するのって結構面倒なのね。リープッドの服飾デザイナー資格とかないかしら……」


 それなら本気でやっても良いかと思ってしまうわ。


「さすがにそのような資格があるのかはわかりかねる……」

「まあ良いわ。もう少し調査をして、迷宮に長期滞在する方法を学んだら道具を集めて一気に潜る事を視野に入れましょう。そっちの方が早いわ」


 この波を乗り切って最前線パーティーの仲間入りをして見せますわ!

 そうしてアルリウス達の目的である邪神の使徒を炙り出して見せますわよ!


「封じられた神を解放するのが私達の目的なのだが……」

「その為にも段位の力でしょう。そもそも封神の楔とやらを出さないと始まらないみたいじゃない」

「確かにそうだ……階層主との戦いの時に提示されるのだったな」

「ええ。今は階層主はみんな倒している訳だけれど、そう簡単に出てこないんでしょう?」


 階層主は再出現まである程度時間が掛る。

 もしかしたらすぐに出てくるのもいるのかもしれないけれど、現状は階層主に挑んで二匹目のドジョウを狙っている者が多いはず。

 第二の聖女になりたい者達ね。


「確かに……私達の行ける所をまずは増やす……現実的な発想だ。わかった。アーマリア殿の意見を採用する方向で行こう!」


 と言う訳で割とアッサリと私の意見が参考にされてこれからの方針が決まったわ。


「それでアーマリア殿、剣の稽古なら私が教えられるが、どうする?」


 一応アルリウスは剣術が出来るのよね。

 戦闘も軽やかに動いていたし、腕は良さそう。

 ただ……私が剣を握って戦う?

 どう行った方針が良いのかしら?


「家宝の鎧を着込んで剣を振うのですわよね?」

「魔物相手にはそうなるが……アーマリア殿はどうしたいのだ?」


 現在の陣形から考えて私が前衛なのよね。

 メイとフラーニャ、アルリウスを危険な魔物の猛攻から守りたいわ。

 となると私は後衛よりも前衛なのは変わらない。


「ちょっと保留にさせて頂くわ。何せあの家宝の鎧は何が出来るか参考に出来ませんの」

「確かに……腕が飛び出す謎の鎧だ。むしろあの鎧はどう言った基準で戦闘力が上がるのかを検証すべきなのかもしれん」

「ええ……段位の加護が得られない代物だったら、いずれ戦力外になりかねないわ」

「逆にアーマリア殿の力や魔力が反映される場合は改めて訓練しなくてはな」


 これは藪蛇だったわ。


「いろんな意味で行ける所まで行ってギリギリ戦える相手を見てから、段位の力を上げて再挑戦するのが良いのよ」

「異論はない」


 なんて感じで私達の方針は決まったわ。

 そうしてアルリウス達と話を終えた頃には日が大分傾いてきたわね。


「そろそろご飯にでもしましょう。メイ、ラグのお店に行きましょう。前回良くしてもらった分、今回は奮発するわよ」

「わかりましたニャー! ラグもアーマリア様が聖女になって鼻が高いと言っておりましたニャー!」

「良い店を二人は知ってそうだな」

「楽しみですね」


 と言う訳で私達はラグのお店に行って存分にその味を堪能したわ。

 アルリウス達も気に入ってくれて本当に良いお店ね。

 もう私の悪名も無いのだから、この迷宮都市にいる間は毎日通いましょう。

 という形で決めましたわ。




「あ、アーマリア様、よろしければ迷宮で見つけた食料などの素材があれば精一杯料理しますニャ」


 ラグは私が迷宮に挑むと聞いて、そう答えてくれた。

 確かにこの店なら未知の食材を持ってきても悪い様には使わないでしょう。

 メイのお父さんの方が料理はとても上手な方だったけれどね。

 ラグも追い付こうとがんばっていると思うから、応援しないと。


「助かるわ。私達が食べきれなかったら皆に安く振る舞って頂戴。お代は任せるわ」

「よろしいので?」

「もちろんよ。無駄にする方が勿体ないわ」

「わかりましたニャ!」

「絶品であった。しかし……アーマリア殿はリープッドの知り合いが多いのだな」

「そうですわね。人徳が分かりますわ」

「フフ……リープッドだからこそよ」


 私の人徳は全て私自身の欲望から来ているのであって、人徳なのかと言うと怪しいのも事実よ。

 なんて感じにその日は過ぎて行ったわ。


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