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十七話


 私が高笑いをしていると、メイとアルリウス、フラーニャ達が放心から立ち直って言った。


「あ、アーマリア様が勝ったニャ! やったニャ!」

「そ、そうだが……彼女のセリフは何とかならないのだろうか……」

「うふふ、素直な方なのでしょう」

「いきなり襲いかかってきたアイツが悪いのニャ!」

「それには同意するが……」


 アルリウスが何やら複雑そうな顔をしているわね。

 今は勝利の美酒に酔いしれる時ですわよ。


「オーホッホッホ!」


 と言う所で鎧の派手な装飾が光と共に散って消えたわ。

 先程の凄い力は一時的なものという事でしょうね。

 レストリクシオンモードとやらに戻ったのでしょう。


「よく邪神の使徒を倒してくれました。感謝します」


 ヴィヌムスが浮かび上がって私達にお礼を言いましたわ。


「どうって事はないですわ」


 ここでメイがハッとして私の方を見たわね。

 そういえばジェイドを倒してしまったけれど、情報を聞き出していない事に気付く。


「倒すしかないのはわかっていたが……私達の記憶を取り戻す手掛かりが……」


 そうだったわ。

 アルリウス達の事をジェイドは知っている様な口振りでしたわね。

 勢いに任して塵にしてしまったけれど、もう少し事情を聞くべきだったわ。

 具体的にはリープッドになった、という部分よね。

 とてもとても気になるわ。


「リープッドになったとか言っていたわ。つまりアルリウス達は元々は別の種族だったのかもしれないわね」


 かなり気になるわ。

 リープッドになったとはどういう事なのかしら?

 私の好奇心はここに集約して、ジェイドを仕留めた事を今更になって後悔してきたわ。


「だが、奴には仲間がいそうな雰囲気があった。手掛かりは十分だ」

「そうね。それに私達の目的が目の前にあるのだもの。先にそれを片づけた方がいいわ」

「そうニャ! 悪い奴ではあるけど監視役を殺してしまったニャ! アーマリア様はどうなるのニャ?」

「メイ、心配しないで大丈夫よ。あの監視役は私達を殺すつもりで襲いかかってきたの。どちらにしても殺すしかなかったのよ」

「それは大丈夫とは言わないのではないか?」


 アルリウスは細かい事を気にする性格なのね。


「世の中には力は正義なりという言葉があるのよ。勝った私達だからこそ、地上で言い訳も通る可能性があるわ」

「難しいと思うのニャー……」

「言いたい事はわからなくはないし、あんな理不尽な事、神を封じるなどという事していたのだから、味方をしたくはあるのだが……」


 メイとアルリウスの反応が鈍いわね。

 ここはさすがアーマリア様! と言ってほしかったわ。

 いや、まあ……前世の感性からして、悪役っぽい言動に頷けないのはわかっているんだけれどね。


「私達が地上で事情を説明するしかないのではないかと……もしくは黙っているとかでしょうね。アーマリア様が指示を達成したのに、いつまで経ってもあの方が来ませんと言うとか……」

「確かにそうニャ。黙っているのが無難ニャ」


 フラーニャの考えが現実的かもしれないわね。


「確かに……弁明のしようがないからには、その方法しか彼女が生き残る術はないか……しかし……」


 アルリウスは難色を示しているのね。


「それには及びません」


 ヴィヌムスがここで微笑みながら語りかけてくる。


「私がどうにか出来ないか、努力してみます。あの者は邪神の使徒。ならば討伐する事を罪とするのは大きな間違いです」


 あら? 神様が何かしてくれるのかしら?

 さっきも私の紋様に干渉して緩和してくれていたし、最悪この紋様を除去するだけでも良いかもしれないわね。

 そうすればこんな所おさらば……アーマリア、お前は懲りないな。


 なんて思っているとヴィヌムスは私の思考を察したのか鎧越しに私の首筋に手をなぞる。

 それだけで、紋様が光となって消え去った。


 ああ、やっぱり?

 気が効く神様で助かるわ。


「それと……そうですね。私が出来る恩恵として、あなた達二人の事も見てあげましょう」


 ヴィヌムスはアルリウス達の方を見る。


「私達の謎に答えてくれるのか?」

「少しお待ちを……ダメですね。私の力ではお二方に掛けられた、呪いとも呼べる力を解く事は難しい様です。ただ……」


 ヴィヌムスはゆっくりと二人の額に人差し指を当てる。

 すると二人の額にそれぞれ小さな光が少しだけ灯っている。


「――!」

「っ!!」


 クラっと一瞬だけ二人とものけ反ったわ。

 けれど、すぐに顔を戻すわね。


「私は……? あの記憶は……?」

「これは……」

「何か思い出したの?」

「……どこかはわからない。けれど、私は何者かに襲われ、魔法を掛けられた瞬間を思いだした……そうだ。アイツが私達に……フラーニャだと思う女性も少しだけ見えた」

「私もです。アルリウスだと思わしき男性が徐々に姿を変えていく姿がぼんやりとした視界で……」


 どうやら二人ともリープッドになる直前の記憶を思い出した様ね。

 となるとリープッドになる魔法が存在するという事なのね。


「失われた記憶を取り戻すための切っ掛けを授ける事は出来ます。時間は掛るでしょうが、きっと記憶が戻って来るでしょう」

「あ、ありがとうございます!」

「やったわ!」

「じゃあこの先の間に行く必要はないのニャ?」


 メイがそう尋ねるとヴィヌムスがメイの指差す方角を見る。


「おそらくその場所は、私の力が僅かに漏れていたのでしょう。時と場合によって、何かが映った可能性が高いです」


 段位神という神様らしいし、その辺りの力があるって事なのね。

 神ってくらいだから相当な力を持っていると考えて良いでしょう。


「その神様から直接祝福を授かったって事は、行く必要はないわね」

「問題ない。手掛かりが見つかったのだ。これは大きな収穫と言わざるを得ない」

「では……私もこの場から去り、神々の座に戻るとしましょう。では、またどこかで……」


 そう告げると半透明だったヴィヌムスは更に薄くなり消えていった。

 う~ん、なんとも幻想的な場面に遭遇したわね。


「ではそろそろ地上に帰るとしましょう」

「やや不安が付き纏うが、いつまでも迷宮にいる訳にもいかないか」

「そうですわね。早く帰って休みましょう」

「大丈夫なのかニャー……あ! まだ階層主の素材を採取していないニャ!」


 すっかり忘れていたトライヘッドの死体の処理よね。

 迷宮主ってくらいだし、良い稼ぎになるでしょう。


「じゃあ勿体ないから持ち帰りましょう。どうせ没収されるとは思うけど、これが私の罪滅ぼしだもの!」


 という訳で私達はトライヘッドの死体を確認しますわ。


「まずは魔石を取るのが優先ニャ! 一番高値な所なのニャ!」

「ええ」


 解体用のナイフでメイが必死にトライヘッドを捌こうとしているけれど、ナイフが小さすぎるわ。


「ちょっとどいてほしい。私が切ろう」


 アルリウスが最初から持っていた剣で綺麗にメイが切ろうとしていたトライヘッドの胴体を切り開くわ。

 まあ……私のアルミュール・ヴァンプレイスでぶち抜いてしまった所の穴を更に開いたのだけど、簡単に魔石は出てきたわ。

 今までの雑魚魔物とは異なり、大きな水晶玉みたいな魔石ね。

 結構傷ついていて武骨な感じだけど……これは私達が攻撃した所為で傷ついてしまったのかしら?


「ちょっと傷が多いニャ……綺麗なままだと質が良いと評価されるニャ。けど、階層主の魔石なんて滅多に出回る物じゃないからきっと高く売れるのニャ! ほら、アーマリア様も持って見るのニャ」


 高らかに私に見せてくれたメイから私はトライヘッドの魔石を受け取るわ。

 中々綺麗な魔石ね。

 研磨すれば多少は調度品として使えるのではなくて?

 なんて思っていると家宝の鎧の腕がカシャンと動いて大きな魔石を収納してしまったわ。


 トライヘッドの魔石 損傷率 60%  エネルギー40% 性能 30% 武装……パンチ=ポイズンスモーク


 なんて文字が浮かんで来たわ。

 何これ?

 スーッと家宝の鎧の色が紫色に変わった。


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