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十三話

「アーマリア様、自己紹介をすべきだと思うニャ」

「そうね」


 私は家宝の鎧を脱ぎ、アルリウスとフラーニャに向かって貴族式の挨拶をしてから名乗る。


「アーマリアと申します。この子はメイ」


 家宝の鎧から出てきた私に驚いたアルリウスとフラーニャはパチクリと瞬きをした後、握手を求めて来るので応える為に握手した。

 うふふ……リープッド族の特徴である肉球の柔らかな感触がしたわ。


「アーマリア殿……に、メイ殿か」

「危ない所を助けて頂きありがとうございます」


 ペコリとフラーニャは頭を下げる。


「どんな事情があるのかわからないけれど、迷宮に少人数で挑むのは危険よ? 無謀な事はおやめなさい」


 自分の事を棚に上げるのはこの手のお嬢様の鉄板よね。

 私にはメイがいるし、家宝の鎧があるから大丈夫なの。


「我々もそれは重々承知している。だが、私達もせねばならぬ事情があるのです」

「はい……」


 二人とも困った様子で返して来た。


「何か深い理由があるのかしら? よろしければ教えてくださらない?」

「それが……まずは私達の話をしてもよろしいか?」

「もちろん。尋ねたのはこちらですもの」

「では、お答えします。まず私達は……」


 アルリウスとフラーニャはそう言うと事情を説明し始めた。


 ほんの少し前、この二人は迷宮都市近くの草原で倒れていたらしい。

 更に過去の記憶が無く、当ても無かったそう。

 名前も薄ぼんやりと浮かんでくるフレーズから仮で付けた名で、自身が何者であるのかが全く分からないのだそうだ。


 二人は自身の手がかりを探る為、迷宮都市で情報収集をした……けれど、二人の事を知る者はなく、それでも諦めずに情報収集を続けていると、このドリイームの迷宮の10階にある鏡は自身を知る力が宿っているという話があると知った。

 ならばと二人はドリイームの迷宮の10階を目指す事にした。

 問題はパーティーなのだが、記憶喪失のリープッド二人を迎え入れてくれるパーティーは中々に見つからず、辛抱出来なかった二人は運に身を任せて迷宮へと足を運び、ここまで来てしまったんだとか。


 幸いな事にアルリウスのポケットには金貨が数枚あったので宿や食事、装備を購入するだけの余裕はあった。

 不思議な事に剣術などを扱う事が出来、フラーニャも回復魔法が使う事が出来たので、どうにかここまで潜れてしまったらしい。

 が、運悪くキラーマンティスの群れに遭遇し、今に至る。


「であるから私達はここの10階にある鏡を見に行って自身が何者かを知らねばならぬのだ」

「そんな仕掛けがあるの?」

「そんな風な鏡張りのお部屋があるとは聞いたけれど、確か伝承ですニャ」


 藁にもすがる気持ちで……って奴ね。


「貴殿達は?」

「私は過去に犯した己の罪を償う為、犯罪者として迷宮に挑んでいるのよ」

「なんと! 貴殿は罪人なのか?」


 信じられないと言った様子でアルリウスが私を見る。

 フラーニャも驚いたとばかりに口元に手を当てているわ。

 二人とも可愛らしいわ……。


「ええ」

「しかし……」

「アーマリア様は悪い事はしていないニャ!」

「メイもいい加減認めなさい。私は今、その罪を償うため、監視役の指示通りにここの10階層にいる階層主を倒して来ないといけないのよ」

「貴殿達もそうなのか!?」


 アルリウスが身を乗り出して聞いてくる。


「ええ、そうよ。これも私の罪を償う為の奉仕活動。階層主から得られる物資で、私が傷つけてしまった者達に少しでも謝罪出来れば満足なの」

「そうか……では目的は一緒であるなら貴殿のその強さ、同行させてもらえないだろうか? な? フラーニャ?」

「ええ……私達だけではこの先を行ける自信はありません。どうか力添えをお願いできませんか?」


 二人は手を合わせて私にお願いしてくる。

 うーん……私としては出来る限り手伝ってあげたいのだけれど、問題があるのよね。

 その話を先にしておかないといけない。


「私は犯罪服役者……一緒にパーティーを組むと報酬の9割が没収されてしまうけれど良いかしら?」

「9割……それでは生活もままならないのではないか?」

「ノルマを達成すると最低限の報酬としてパンと水が支給されるのよ」

「なんとも……罪を犯した者への罰というのは、あまりにも重いのだな……」


 アルリウスは納得し難いと言った様子で眉を寄せている。


「メイのお陰で私はそこまで困っていないわ……だから、私達と一緒に行くとお金にならないという事を意味するの。もしくは私達が先に行くから後ろを着いてくるのなら良いかもしれないわ」

「いや……ここはパーティーに入れてほしい。こちらが厚かましい願いをしているのだ。この程度の事など気にする必要も無い」

「はい。どうか罪を償うお手伝いをさせてください。私達の今の目的は10階に行く事なのですから」


 おお……報酬よりも目的地に行く事を優先すると……立派な子達ね。

 記憶を失っているそうだけど、見た目通り高貴な生まれなのかもしれないわ。


「わかったわ。それじゃあメイ……この子達と一緒に行って良いかしら?」

「大丈夫だニャ! アーマリア様のお優しさにメイも感服して涙が溢れて来るのニャ!」

「それじゃあメイの了承も得られたし、アルリウスさん達も納得しているならパーティーを組んで行きましょう」

「うむ!」

「ニャー!」

「はーい」


 と言う訳で私達はカードを重ねてパーティーを合流させたわ。

 その際に二人の項目を確認した。



 Fランク アルリウス

 アルム流剣術・中級。

 初級冒険者訓練課程修了


 Fランク フラーニャ

 中級神聖魔法使用可

 初級冒険者訓練課程修了



 多分……ギルドで何らかの試験を終了させたのと、自身の長所を見せる事で使用可能な技能を記載しているのね。

 剣士と僧侶と表記するとバランスの良いパーティーみたい。


「じゃあ私が最前衛をするからアルリウスは隙あらば剣で攻撃、メイとフラーニャは魔法で援護してちょうだい」

「承知しましたニャ!」

「うむ」

「はい!」

「じゃあ移動するから三人ともしっかりと掴まっているのよ」


 私は家宝の鎧の中に入り、三人を乗せてローラーで走り出した。


「うわ! これは凄い!」

「凄いですわー。迷宮内の道がどんどん進んで行きますわね」

「ニャー! スリリングなのニャー」


 と、私達はそのまま迷宮内を進んで行った。

 道中で何度も魔物と遭遇したけれど、耳の良いリープッド三人の察知能力に感知できない魔物はおらず、常時先手を取って戦えた。


 しかも先制攻撃として私は新たにロケットパンチ――アルミュール・ヴァンブレイスで大体の魔物はミンチになって行くわ。

 取り溢した魔物はアルリウスやメイが足止めをして、私が追撃でトドメを指す。

 怪我などはフラーニャが治し……補助魔法で私の早さを更に引き上げたりしてくれている。


「非常にバランスの良いパーティーね。今回限りだっていうのが惜しいわ」

「種族が偏り過ぎだと思うニャ」


 ふふ……私にとってはリープッドハーレムよ。

 だからバランスは最高。

 究極のパーティーと言っても過言じゃない。


「アーマリア殿のお陰で私達も非常に助かっている。むしろ足手纏いであると悔しく思う。ここまで貴殿は強いのであるな」

「家宝の鎧のお陰よ。私自身はタダの無力な犯罪者の女よ」

「そう自身を卑下するものではない。罪を償おうとしているのだ。私達も目的を達したら力になれる時は助力したいと思っている」

「ええ……今までの道が嘘の様……アーマリア様、非常に助かっておりますわ」


 アルリウスとフラーニャが揃って私に感謝の言葉を投げかけてくれる。

 ありがたい話だわ。

 迷惑を掛けてしまいかねないけれど、次に一緒にパーティーを組む時も出来る限り協力してあげたい。

 なんて調子で私達は快進撃を続けたのだった。


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パーティ組む意味あるのだろうか? デメリットしかなくメリットの記述は一切ないが
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