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オルブレインについたのは午後の18時を過ぎた頃。春の風の吹くこの季節、まだそれほど日は長くない。夕日が落ち切ってから少し経っていた。
支部はよく整備された洋館だった。しかし、周囲になじむためだろう、中流階級の域を出ない造りとなっていて、その二階の一室を調査期間に間借りすることになる。
四六時中ジェイクと一緒だなんて、今から息の詰まる思いだ。
でも、悪魔祓いや使役については教わらなければならない。この晩でどれほど引き出せるかが勝負になると気を引き締める。
「じゃあ、俺は酒でも飲んでくるわ」
唖然としているうちに、ジェイクは荷物を置いてすぐ去っていった。
こちらが追いかけねばと思ったときにはすでに後の祭りで、ジェイクは車いすをうまく操って人混みに紛れた後だった。科学の力で生まれたコントローラーを使って動く自動車いすが非常に恨めしい。ジェイクの悪魔も気がついたらいなくなっていた。
というかこのままではまずい、確実に。任務は明日から始まるが、このままでは肝心な戦闘の知識がないまま任務に出かけることになる。
つまり、現場で見よう見まねでジェイクを模倣するという手しかもう残されていない。
一応カブトと打ち合わせでもしておいた方がいいのだろうか。打ち合わせといっても何をするのか全くわからないのにやって意味があるかと言われれば謎で。
結局悩んだ末、カブトに愚痴るだけ愚痴って、イライラしたらしいカブトに強制的に寝かせられた。というか物理的に寝かせられたといった方が正しい。
うなじを手刀でトン、とするだけで(実際鋭い爪が生えた腕でやられたと思うとかなり怖いのだが)気絶させられてしまった。あんなん出来るの物語の中だけだと思っていたが、悪魔すごい。
ということで任務前日の貴重な夜はぐっすり快眠、最高の肉体的コンディションと最低の精神的コンディションで初任務に挑むことになったのである。
ちなみにジェイクは二日酔いになって明け方帰ってきた。その後、悪魔が見つかったら出勤命令が出るからといい、爆睡している。任務直前まで結局何も聞けなさそうである。いびきがうるさい。
ちなみにジェイクが寝る前に一瞬だけ顔を出したミーティングなるもので、ほんの少しだけ任務の情報を得た俺。情報源は悪魔を探す役割を担っている調査隊の人だ。
今回の任務は、研究所である程度予測できる新しい悪魔の出現に対処せよ、というものらしい。何故か新しい悪魔ほど研究所は出現を予想できるようで、だいたいのタイミングと場所はつかめている。それを調査隊なる人々が見つけだし、俺たち悪魔祓いに連絡をする、というのが今回の流れで…その後の戦闘については、調査隊は見たことがないらしく一切情報は得られなかった。
「カブトどうしよう…俺このまま何も知らされず戦闘になって生き残れるかな」
『ドウダロウナ』
「そこは俺がお前を守るから大丈夫だって言ってくれよ!」
『……(メンドクサイ)』
「どうしてそこで黙るんだよぉー!守ってくれよぉー!」
『自力デ頑張レ』
「俺の悪魔非情過ぎない!?」
「お前いつまで自分の道具(悪魔)に話しかけてんだよ、正直きめぇぞ」
「うわ、ジェイク」
そこには二日酔いの具合が少しマシになったジェイクがいた。
「バレットさんと呼べ。通信が来たぞ」
「通信がきたって…ことは…」
「ヒヒヒ、悪魔退治だな、お前がどこまでやれるのか試してやる」
試すも何もなにもわからないんですがそれは…