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1-4

「それで、悪魔祓いの先輩ってどんな人なんですか?」


「先輩…ですか、確かにそうなるのかもしれないですね」


少し言いよどむ彼女に違和感を覚えたが、なんでもありませんと首を振る様子を見て、いったん忘れることにした。


「その方については、百聞は一見にしかずですね。そちらの部屋に入ってください。安心してください、最初の簡単な悪魔祓いの講義については私もお手伝いしますから」


え、この部屋の中に先輩いるの。思わずゴクリとのどが鳴った。勿論緊張でだ。

自分としては初めて会う悪魔祓いである。正直かなり憧れている。あこがれの存在が目の前の部屋にいるとなれば誰でも興奮&緊張でいっぱいいっぱいになるのではないでしょうか。なぜ敬語なんだ自分。


「すうーはあー…よし、開けるぞ…」


少しナビゲーターの彼女が呆れたような目で見ている気がするが気にしない。心なしかカブトも不審者を見る目をしているが気にしない。


―コンコン


「失礼します」


そして中にいたのは…何故か顔と左手首以外をすべて黒い入れ墨に染め上げている、車いすに座った30代くらいの男性だった。


いや、よく見れば顔も、右耳と片目は入れ墨…というか、目に至っては白目がない!瞳との境目がよくわからない恐ろしい感じになってしまっている。


そしてその後ろには自分の指をしゃぶる子供のような見た目の悪魔がいた。なぜ悪魔とわかったかと言えばその背中にカラスのような羽が生えた翼があったからだ。


うちのカブトのアーマー素材の光沢のある翼もいいが、ふさふさの翼も綺麗だな。


「ほぉ…てめぇが新人悪魔祓いか。ちっ、中々強そうな悪魔連れてやがって、生意気そうな奴だな。教育のしがいがありそうだ」


うわすごいやな奴じゃねえか。憧れの先輩像が一瞬で吹っ飛んだ。ついでにナイスバディなお姉様からのエッチな教育の妄想も吹っ飛んだ。


「ちょっと、後輩いじめは程々にしてください。前回のように悪魔を使った私闘をふっかけるなんてもってのほかですよ」


ナビゲーターの彼女がすかさず止めに入る。なるほどな、この先輩とやらは結構な問題児らしい。


「こちらは、悪魔祓いのジェイクです。任務の成功率は高いのでご安心ください。ジェイクさん、こちらはウィルさん。くれぐれも、よろしくお願いしますよ」


「ジェイク・バレットだ。バレットさんと呼べ」


不機嫌そうな様子はそのままに、片目を合わせてそう宣う男に問題児以前に腹立つなと思う。



座学というか、口頭での説明はそれほど長いものではなかった。

悪魔祓いの活動内容というよりは、組織に対する報告義務や組織を通した悪魔事件の解決依頼をどう受諾するかなど、事務的な内容ばかりである。

まあ、各地にある組織の支部に事件解決ごとに顔を出せということで良いんだろう。悪魔を捜索している間も宿として使えたりするみたいだから重宝させてもらおう。

基本的には、悪魔祓いにはその居場所が分かるように発信機を貸与するらしい。危険な仕事でもあるから死亡確認にも役立てるそうだ。ピアス型になっているそれを付けると、つけた方の耳は保護されて悪魔との使役には使えないと彼女は言う。


「あー、その悪魔の使役の仕方が一番聞きてぇんですけど…」


「実際の任務を見りゃわかるだろ」


何か説明を始めようとした彼女の言葉を遮るように悪魔祓いが言う。ニヤついた嫌な笑みでこちらを挑発するように話す様子から、俺たちをほとんど情報のない状態で最初の任務に連れ出したいのだろうとわかる。

それを横目で睨みながら、ため息をついた女性はこちらに申し訳なさそうな顔を向けた。


「申し訳ないのですが出立の時間も迫っているので、ここからはジェイクさんにお任せしたいと思います。任務の場所は、この本部から南西に40キロほど先のオルブレイン地区です。どうぞお気を付けて」


さっさと先に行こうとするジェイクを追いかけて、女性に感謝を伝えつつ部屋を出る。契約前後の記憶が曖昧で名前を最後まで思いだせなかったことも、心の中で謝っておく。

広い吹き抜けの正面玄関を抜けて相変わらずの曇り空の下に出ると、風がコートを翻した。

まだまだ分からないことも多いし危険もあるらしいが、この駱駝色のコートと契約した悪魔のカブトは気に入った。

とりあえず、ここからだ。


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