出会い
1980年 アメリカの心理学者ロバート・プルチックが提唱した感情の輪(Wheel of Emotions)
8つの基本感情を一次感情 その組み合わせによる混合感情を二次感情とした
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カチッ……カチッ……
ピピピ
ーーんぅ……
目が開く。
私の体内時計は正確だ。
朝の6時になるとはっきりと目が覚める。
上体を起こそうと腹に力を入れる。
ーーぅーん……
右腕に重みを感じた。
目を移す。
ーー……すー
銀色の長いサラサラの髪の毛
やけに広いデコ
長いまつ毛、うらやましい
通った鼻筋、美形だ。
ーー……?
ぷっくり小さな唇
細い首…
ほとんど起伏のない胸ーー
「あっ……」
外見通り可愛らしい声
「ん?」
透き通った緑色の瞳
赤くなっていく頬
振り上げられた右手ーー
「えっち!!!!!」
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一次感情
喜び 信頼 恐れ 驚き 悲しみ 嫌悪 怒り 期待
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蛇口から水の流れる音
鏡で左頬に小さな手のあとを確認
「……ぶはぁ!」
少女の顔から飛んできた水しぶきが顔にかかる。
棚からタオルを2枚取り出し、そのうち1枚をちいさな顔に目がけて叩きつける。
「ぶへ!」
「とりあえず拭いて。」
少女はバッと顔を上げるとこちらを向いてにっこりと笑った。
「えへへ、ふかふか!」
……変なやつ
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感情には強弱がある
恍惚>喜び>安らぎ
敬愛>信頼>容認
恐怖>心配>不安
驚愕>驚き>動揺
悲嘆>悲しみ>感傷的
憎悪>嫌悪感>倦怠
激怒>怒り>苛立ち
警戒>予測>関心
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『……A町で目撃されていた不審者が昨日、勇敢な女性により取り押さえられました。不審者の男は壁にめり込んだ状態で発見されーー』
最近テレビや新聞ではこんなニュースばかりだ。
一体何がどうなってるんだ。
ボーッとテレビを見つめていると、腰のあたりをクイックイッと引かれた。
「焦げてるよ!」
「……ぁ。」
……カタッ
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対になる感情はそう簡単には移行しない
喜びと悲しみ
信頼と嫌悪
恐れと怒り
驚きと期待
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エプロンを床に脱ぎ捨てると、椅子を引き、少女を座らせる。
「いただきます!」
「……はい。どーぞ。」
少女の向かいに腰をかける。
少し焦げてしまったが、少女は美味しそうに頬張ってくれた。少し表情が緩む。
「ふぉねえはん、ふぁらった!」
「口にものを入れて喋るな。」
少女の口から卵焼きが飛んでくるのと同時に、女性は傍らにあった新聞紙を即座に丸め、少女のデコ目がけて振り下ろした。
少女のキョトンとした顔がクシャッと歪み
目に涙が浮かび始める
「あぁやりすぎたか。ごめんな。」
頭を撫でようと手を伸ばす。
「えぐっ……」
小さな頬を大粒の涙が伝う。
腕が机の上空でピタリと動きを止めた。
「……え?」
少女の体がほのかに光りだし、足元に奇妙な円がうっすらと浮かびはじめた。
ゴゴゴ……
遠くから聞こえてくるような地響き
すると
電灯が揺れ始め棚の食器がカタカタと音を立て始める。
建物全体が大きく揺れ始めた。
「まずい……!」
女性はすばやく机の下に潜り込むと、泣き続ける少女を中に引きずり込み、強く抱きしめる。
皿が机から落ちて割れた音に反応し少女の体がビクッと跳ねた。女性は小さく震える体を優しく撫でる
「大丈夫だ……私が守ってやる……。」
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……揺れが収まったようだ。
体の中の小さな震えもようやく止まった。
「ふぅ……」
ため息をつくと胸のあたりでモゾモゾと少女の顔が動いた。
「むぐーっ、ちょっと苦しい…。」
「あぁすまんすまん。」
力をゆるめると、少女はプハーと深く息をついた。
「えへへ!お姉さんふかふか!」
「……ぷっ。あはは!」
ーー涙が出るくらい笑ったのはいつぶりだっただろう
「あーお腹痛い……そういえば聞いてなかった。名前はなんて言うの?」
「エモ!お姉さんは?」
「シオンよ、よろしくね。。」
「えへへ!」
少女、これからはエモと呼ぼう。
エモは再び女性の元へ抱きついたのだった。
名前は察してください
すみませんでした




