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8-1 過去

   8 過去


 雅緋は翌日、学校を休んだ。

 そして、一週間が過ぎても雅緋は登校して来なかった。

 六角もまた眠り続けていた。

 命には別状がないと矢塚は言った。

 あれ以来、周防はずっと矢塚の屋敷に泊まり込んで、六角の看病を続けている。

 このことは一条家には内緒にすることに決めてある。ある意味、完全に一条家を裏切ることになってしまったが、現状では仕方ないだろう。

 一条家は未だ妖鬼がどうなったのかを知るはずもなく、常世鴉は今も斑目の指示によって妖鬼を探し続けているらしい。蓮華も常世鴉の一人として、無駄なことと知っていながらも探索に加わることもあるらしい。

「雅緋さん、大丈夫なんでしょうか?」

 瑠樺は矢塚の屋敷を訪ねていた。

「先日の様子を見る限り、命にかかわるなどということはないだろう。ただ、彼女は極端に妖力が少ないからね。少ない妖力にも関わらず強い力を使うということになれば、その負担は自ずと体にかかる。そして、その力を回復させるにはそれなりの時間が必要なのだろう。なぜそんな彼女が呉明沙羅を抱えるようになったのか、まったく不思議なものだよ」

 矢塚は少し考え込むようにして言った。

「矢塚さんは雅緋さんのこと何か知っているんですか?」

「いいや。ボクが知っているのはあくまでも呉明沙羅のことだけだ。正直言って雅緋君については何も知らない。いや、これでも一応、彼女についても調べてみたんだ。でも、わからなかった」

「調べたんですか?」

「彼女は一条家に危険認定された立場だよ。八神家の一つである矢塚のボクが彼女のことを調べるのは当然のことさ」

「調べるって何を?」

「いったい、なぜ彼女が呉明沙羅のことを知っていたのか。そして、なぜ彼女を受け入れたのか、受け入れることが出来たのか。不思議なことだらけなんだよ。さらに言えば、なぜ彼女が生きていられるのか」

「生きてって――」

 その言葉にドキリとする。だが、矢塚は平然としてさらに続けた。

「そうだよ。だって考えてごらん。生み出す妖気以上に妖気を必要とするものが自分の体のなかに存在しているんだよ。生きていられることのほうがずっと不思議なんだ。いや、呉明沙羅の力を使わなければ生きていることも可能かもしれない。しかし、呉明沙羅の強さ、その少ない妖力が使えるものじゃない。あの力を使えば、いつ命を失ってもおかしくはない」

「そんな……」

「彼女が戦うのは常に死に通じている……とも言えるかもしれないね。キミも憶えておいたほうがいい」

「待ってください。それじゃ、先日のことは? あれも雅緋さんにとって命の危険があったということなんですか?」

「そうだね」

「矢塚さんはそれを知っていて?」

「それでも彼女の力がなければ事は成せなかった」

「そんな……」

「酷いと思うかい? ボクとしてもそういう気持ちは少なからずあってね。彼女のために何が出来るかを考えたというわけだ」

 そう言って矢塚は一枚の呪符を瑠樺へ差し出した。


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