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「あそこだ」
矢塚が指差すほうを見ると、古い木造の社が竹林の奥に建っているのが見えた。
近づいてみると社はすでに半壊、石灯籠は崩れ落ちている。
「この街、こういう社が多いですよね」
「残念だけどね。これが時の流れっていうやつかな」
「どういう社なんですか? 八神家ゆかりのものですか?」
「正確には旧陸奥神のものだよ。陸奥神と呼ばれていた頃には、この地に住む人々から崇められる存在だったからね」
「どうしてこんな状態に?」
「もう何十年……いや、何百年かな。ずっと整備されていないんだよ。しかし、こんなふうに使うことを考えたら、今度、なんとか予算をとって補修しなきゃいけないなぁ」
「ここは矢塚さんの土地なんですか?」
「いや、法律的には一条家の管理下となっているよ。かつて陸奥神六家のものだった土地のほとんどは一条家に没収された。その後も我々の手によって少しは整備されてはきたんだけど、陸奥神と呼ばれていた一族はどんどん減っていってしまってね。今ではとても全てにまで手が回らなくなっていまってるんだ。二宮家が八神から抜けたのが、最後のトドメだったね」
「すいません」
「いやいや、二宮家はずっと陸奥神の一族を守ろうとしてくれていたよ」
「一条家では整備してくれないんですか?」
「もともと信仰が違っているからね。八神家として働くことで最低限の予算は回してもらえるんだけど。こういう我らの力となる社などは彼らにとって無価値……いや、むしろ害あるものでしかないんだよ」
「負けたものの定めよ」
今まで黙っていた雅緋が冷たく言う。
「そういうことかもね」
矢塚は困ったような顔をしながら腕時計をチラリと見た。「あと10分。ここまでは計画通りというわけだ。ここからは瑠樺クン、キミの出番だよ」
その言葉を聞いて、緊張感が全身を包む。
「まあまあ、そう固くなりなさんな。たいした力にはなれないがボクもいる。雅緋君だっている」
「私は何も出来ないわよ」
雅緋がぶっきらぼうに言い放つ。
矢塚は苦笑しながら――
「これを使いなさい」
そう言ってポケットから硬式ボール大の鉄球を差し出した。
「これは――」
それを瑠樺はかつて目にしたことがあった。
「そうだ、これは君のお父さんが使っていた妖具、『乱魔』だ。ボクが預かっていた」
「……乱魔。私に使いこなせるんでしょうか?」
「これは二宮の家で代々、使われてきたものだよ。だから君にこそ使いこなせるものだ。さあ、行こうか」
瑠樺は崩れかけた社の門をくぐった。




