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6-4

 陽はとうに落ち、時計の針はすでに10時を回ろうとしている。

 瑠樺は約束の時間が来るのを矢塚の屋敷でジッと待っていた。

 すでに蓮華と周防は妖鬼を追って屋敷を離れている。

「本当に私に出来るんでしょうか」

「キミ以外の誰にも出来ないことだよ。あの妖鬼が本当に六角氏であれば、矢塚の土地に足を踏み入れるなんてことはしないだろう。彼は今、本能で動いている。それでも一条が自分を追っていることはわかっているだろうからね。そして、残念ながらボクは矢塚の敷地以外ではほぼ戦力にはならない」

「でも、本当に六角さんなら一条家でも協力してくれるんじゃないでしょうか?」

「無理だろうね。そもそも妖鬼が六角氏だということを信じてくれるとは思えない。妖鬼は既に春影様から殺害しても構わないと指示が出ているからね」

「でも、私じゃ……」

「自信ないかい? 無理もない。覚醒したといっても実戦経験は無いのだしね。そう緊張する必要はないよ。キミなら出来る……と、彼女も言っている。その彼女の考えは間違ってはいないと思うよ」

 そう言ってから矢塚は雅緋のほうへ顔を向けた。「出来ることならキミがどこでその知識を得たのかを知りたいものだね。少なくてもここで数日、書物を読みこんだところであそこまでの知識は得られないはずだ」

「そうね。あんな上っ面の歴史書、何の意味もないわね」

 そっぽを向いたままで雅緋が答える。

「何の意味もないか、厳しいことを言うねえ」

 矢塚は小さく笑った。

「だって、ここにある書物に大切なことは何も書かれていないじゃないの」

 雅緋は不満そうに言った。

「ほぉ、大切なことかい? キミは大切なことが知りたかったのかい?」

「当然でしょ」

「それならそんなところに書いてあるはずないじゃないか」

「書いてあるはずがない?」

「そうさ。記録など誰の目に触れても問題がないことだけだろう」

「じゃあ、大切なものはどこにあるの?」

「ここに」

 矢塚冬陽はそう言って自らの頭を指差した。

「そう、口伝というわけね。なら、もっと早く言ってほしいものね」

「そう言われてもね。記録にすら残すことが出来ない歴史を簡単に教えることなど出来るはずないだろう」

「その内容、聞かせてもらえるのかしら? 私にメリットがあるというのはそういうことなのかしら?」

「構わないよ。場合によるけどね」

「場合? それはどういう場合?」

「まずはキミの本当の姿を聞かせてもらわないとね」

「私に本当の姿なんてないわよ」

「ああ、そうか。キミは確かにキミだ。じゃあ、言い方を変えよう。キミの中にいるもう一人の姿を明かしてくれ。実はキミに来てもらったのはそのためなんだ。意味はわかるだろう?」

 矢塚は雅緋を試すかのように言った。

 雅緋はそれに何の反応もしないまま、ジッと見つめていたが、

 やがて――

「わかったわ」

 そう言うと雅緋は静かに目を閉じた。

 彼女の周りの空気が変わった。渦巻くような妖力、彼女の体から立ち込める妖気が光輝き一人の姿が現れてくる。

 半透明の小柄な巫女姿の若い女。いや、少女と言ったほうがいいほどに若く見える。

「これで良いか?」

 フワフワと雅緋の頭上で浮きながら、その少女はそう言った。 

「キミをこの目で見ることが出来るとはね」

「つまり、我の正体も知っていると?」

 鋭い視線で矢塚を睨む。

「まあね。キミは呉明沙羅、呉明の家から追放された傀儡師だろう」


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