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2-4

「最初に聞きたいんですが――」

 と、雅緋は切り出した。「矢塚さんは八神家の一つと聞きましたが」

「そうだよ」

「では、あなたは神なんですか?」

 それは質問というよりも咎めているように感じるものだった。

「いいや、ボクは神なんかじゃないよ」

「じゃあ、なぜ『八神家』なんです? 神を名乗っているつもりではないんですか?」

「そんなおこがましくはないつもりだよ。確かに今じゃ『八神家』なんて言われているけど、元々、ボクたちは『神』ではなく『神守り』だったんだ。それがいつの間にか『八神』なんて呼ばれるようになった。ただ、それだけのことだよ」

 それは瑠樺にとっては初めて聞く話だった。

「それだけ……」

 どこか納得出来ないような目で雅緋は矢塚を見た。

「キミが知りたいのはそんなことなのかい?」

「いえ、知りたいのはあなたたち『神守の一族』の歴史の全てです」

「歴史の全て……といってもね、実は記録の全てが残っているわけじゃないんだよ」

「記録がない?」

 雅緋はわずかに眉をひそめた。

「いやいや、八神家といってもね、ここはこの国では辺境の部類。古い時代から中央政府からは疎まれてきた存在なんだ。存在そのものを否定され、事あるごとに潰されそうになってきた。だから記録が奪われたこともあるし、破棄されたことも一度や二度じゃあない」

「それでも一族に伝わるものは全てここに管理されているのでしょう?」

「もちろんそれを逃れて残されている記録や、時を経て記憶をもとに改めて書き残されたものもあるけれどね。だが、全てがどこぞの教科書のように綺麗に整理されているわけじゃないってことだ。それに残っているものでも全てではないよ。ここにあるのはあくまでも八神家の一つ、矢塚の一族として残した記録だからね」

「それ、見せていただけますか?」

「構わないよ。あとで倉庫を案内しよう。キミが望むものがあるかどうかはわからないが、好きな時に来て読むと良い」

「ありがとうございます」

 雅緋は小さく頭を下げた。それから――「あなたはその資料を全て読まれたんですか?」

「まさか。そんな物好きじゃあないよ。もともとボクは家業には興味を持っていなかったんだ。8年前、家を継いだ兄が病死してね、仕方なくこういう立場になったというわけだ。ボクにキミのような熱意はないよ。資料は自由に読んでみるといいよ。もし、キミが読んでみて何か面白いものが見つかれば、ぜひ教えてくれないかな」

 矢塚はニコニコと心の奥底の見えない笑顔を見せた。一方、雅緋は笑顔の一つも見えず――

「もう一つお願いしてもよろしいでしょうか?」

「なんだい?」

「この人に稽古をつけてもらえます?」

 雅緋はそう言って瑠樺のほうへチラリと視線を送った。

「な、何言ってるんですか」

 慌てる瑠樺に対して矢塚は決して驚くことはなかった。

「何のために?」

「この人、私を護ってくれるって言ったんです。ところが全然力不足。ですからもう少し戦えるようになってもらえないとただ命を捨てるだけになると思うので。矢塚さん、あなたなら出来るでしょう?」

「なぜそんなことをこのボクに?」

「それがあなたのお仕事かと思ったんですが、違いましたか?」

 冬陽はニヤリと笑った。

「わかった。受けよう」


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