表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
karate girl  作者: 小田 ヒロ
3/6

「ふーーん、佐野くんが戻ったから、彩佳はドヨーンな訳ね。」

「ううう。」


 土曜日の昼下がり、場合は近所のショッピングモールのフードコート。私は真希ちゃんの前でうなだれていた。真希ちゃんは当然私の小3傷害事件を事件翌日からご存知だ。玲司は小学校は隣だったから直接話したことはないけど、空手の試合の応援に来てくれたとき、顔は教えてる。


「で、中学は一緒かあ。ようやく私も彩佳の宿敵と会えるんだ!」

「宿敵じゃないし!もはや加害者と被害者だし!」

「あーーヨシヨシ。」


 頭を撫でられ顔を上げると、真希ちゃんの歯にたこ焼きの青のりが付いている。

 真希ちゃんはラメが少し入ったピンクのニットに細身のジーンズをはいて、青いロゴ入りのニットの帽子をかぶって肩までの髪があっちこっちむいている。顔小さくて、目がぱっちりの美少女だ。でも青のりついている。


「青のりついてても可愛いってどういうことよ。」

 私がそういいながらペーパーで拭ってやると、

「彩佳のほうが可愛い!」

 っとニコニコしてお世辞を言ってくれやがる。


 私は………空手をするとどうしても筋肉がつく。真希ちゃんみたいに細くない。少しでも細く見えるようにグレーのタートルネックのニットに黒のストレッチパンツ。スカートなんて絶対ムリ。髪はいつもはポニーテールだけど学校じゃないから下ろしてる。誕生日にもらった渚ちゃん手作りのビーズ盛り盛りのカチューシャしてきた。容姿も、頭も性格も多分普通。


「一応聞くけど、私のどこがかわいいの?」

「え、強いとこ!」

 真希ちゃんがドヤ顔で言い切った!

 だよね〜私が人より少しでも優ってるとこそこだけだよね………


「ウソウソ、私の青のり取ってくれる、気が利いて優しいとこがかわいい。」

「………とってつけたように言うよね………」


 私はジト目で真希ちゃんをにらみつつ、たこ焼きを口に放り込んだ。


「彩佳!!!」

「ゴホっ!」


 急に声を後ろからかけられ、軽くたこ焼きがのどに詰まる。慌ててウーロン飲んで涙目で振り向くと、

「よ!」

 匠と…………玲司がいた。


「匠!匠!あの……あの………」

「彩佳、俺、合格したよ!」

「だーぐーびーーーーー!」


 私はイスから立ち上がり、匠に抱きついた。ワンワン泣いてしまった。希望の中学合格したかどうか、この一カ月心配で心配でたまんなかったけどデリケートすぎて聞けなかった。匠の黒のMAー1の肩が私の涙で色が変わる。いっとき匠が受験と空手との両立で悩み、お父さんとぶつかって苦しんでるのを真近で見てた。でも何にも声をかけられなかった。


「彩佳あ、サンキュー!」

「おめ、おめでとうぅ!!!よが、よがったーあ!うっうっ……」


「おい、匠も彩佳もチョー目立ってる、座れ!」

 匠の肩から顔をあげると玲司がすっごい顔で睨んでた。一気に涙がひいた。私、マジハンパなく恨まれてるよ………


 二人は匠は私の隣、玲司は真希ちゃんの隣にとりあえず座った。

「匠くん、合格したの?おめでとう!」

「真希ちゃん、ありがと。」


 匠も隣の小学校だけど、やはり試合の機会に応援団真希ちゃんとお互いを紹介してもらった。匠とも6年間の付き合い。あの大先生の試練を共にくぐり抜けた戦友と親友が知り合いになってもらうと私が話が通じてラク。


「あーでも、玲司が帰ってくるってわかってたら受験しなくてもよかったなー。玲司とおんなじ中学行きたかった。」

「匠、よそで言うなよ、受かったヤツが言うとイヤミに聞こえる。」


 相変わらず二人は仲がいい。ほのぼのしてると真希ちゃんが、

「彩佳、紹介紹介!」

「ああ、真希ちゃん、この人は私の空手仲間の佐野 玲司君です。で、玲司、こっちは私のプリチーな親友の榎本 真希ちゃんです。仲良くしてくれると嬉しいです。」


「佐野くん、中学同じクラスになるかもね。よろしく!」

「こっちこそ、久々で友達もあんまりいないからよろしく!」


 二人がチンとジュースで乾杯して、ニコっと笑いあった。玲司の目つきはちょっとキツイけど、黒縁のメガネがそれを和らげる。ダウンを脱いだ玲司は白地に青のボーダーシャツで爽やかだ。美男美女で……ちょっとお似合い。それを見て………なんだか胸がギュっと締め付けられた。


 私は焦って自分をはぐらかした。

「匠、合格祝い何がいい?」

「そーだな。あ、あれ、バレンタインのときもらったクッキー。あれ美味しかった。あれちょーだい。」

 お母さんと道場仲間にばら撒くために薄力粉3キロ分作ったアレね………。

「いいよ、春休み頑張る。何キロ?」

「キロか?単位キロなのか?関取か?」


 急に玲司が口を挟んできた。

「匠、彩佳からバレンタインもらったの?」


 匠はちょっと目を見開いてから、クスっと笑った。

「玲司も昔もらってただろ?イベントのたんび、彩佳と彩佳のお母さん、手作りのお菓子大量に道場に持ってきてくれるじゃん!夏合宿のときプリンをドンブリでとか。」

「そうそう、私はこないだのホワイトデーのロールケーキが美味しかったなあ。彩佳のイイトコまだあった!」

「真希ちゃん、私を褒めても食べ物目当てってバレバレじゃん…………」


「そっか………」

 玲司がボソっと呟くから、私は恐る恐る聞いてみた。

「玲司もクッキーいる?お帰りなさいのお祝いで?」

「………いる。」

 私、そこまで恨まれてないのかな?まだ約束も果たせてないけど。

「りょーかい!で、何キロ?」

「………逆に正解は何キロなんだ?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ