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karate girl  作者: 小田 ヒロ
1/6

「あやかー!帰りうちに寄って行かない?」

「ごめーん!今日稽古。」

「えー今日水曜じゃん!」

「うー……大会近いんだよ。」

「おおう、そか、ガンバレ!」


 私、田中 彩佳は親友の榎本 真希と手を振って別れて、はあとため息をついた。

 今からダッシュで宿題して道場だ。


 私は、二つ上の兄貴の影響で幼稚園年長から空手を始めた。先生は大先生(おおせんせい)小先生(ちいせんせい)がいて、チビッコ担当の小先生こと女性の聡子先生は優しい幼稚園の先生のようで遊び感覚で通い出した。


 一年習って初めての地区大会に出場した。伝統空手には実際相手と戦う〈組手〉と、敵を想定して出来上がった決まった動きを競う〈形〉がある。私はその両方で優勝してしまった。先生も家族も道場仲間もそのパパママも大喜び!もちろん私だって嬉しかった!ますます熱が入った。みんなが褒めてくれるから、家でもYouTube見て稽古して、あっという間に黒帯に駆けあがった。


 でも、六年生になった私にもう小さい頃のような情熱はない。自分に特別な才能なんてないことがわかってしまったから。


 空手の女子の競技人口はホントに少ない。高学年になればなるほど淘汰されて減る。地区大会では同じ六年生で男子は100人以上エントリーするのに女子は今回は8人だ。一回勝てば表彰台に立てて県大会に行ける。一人インフルエンザにでもなったら戦わずして3位になったりする。お兄ちゃんが6回戦まで行ったのに県大会行けなかった時は申し訳なさすぎて声をかけられなかった。


 既に固定メンバーと化した女子8人は実力が拮抗してて、誰が県大会にいってもおかしくない。でも県大会まで進むと、レベルが段違いに違う選手達がいる。私が全国に行けたのは、彼女達が空手を始める前の話。あっという間に追い越されて、年月や努力は才能の前にはなんともならないんだと知った。


 来月中学に入ったら、部活もある、成績悪かったら塾にも行けって言われてる。空手、マジどうしよう。


 と、言いつつも辞められない私。私は一つの約束に縛られている。





 スパーーン!

 ドタッ!


 大先生に足払いされてすっ転んだ。

「彩佳ーー!お前いい加減にしろよ!全然気合い入ってねえじゃねえか!やる気がねえなら帰れ!」

「彩佳?調子悪いの?今無理しちゃだめだよ。今日は組手止めな?」


 対戦相手をしてくれてる中2の渚ちゃんが心配してくれて情けない。ただ自分がぼんやりしていただけなのに。道場で私より大きい女子は渚ちゃんだけ。やっぱり高校生になったらみんな辞めてしまう。渚ちゃんは来月から受験生なのに稽古日でもないのに来てくれた。私の調整のために。


「ごめん、渚ちゃん。」

「どーした?何凹んでんの?」

「…………大丈夫。」

「そ、じゃあ〈平安形〉から順にお姉さんがシゴいちゃおうかな〜!」


 空手を続けるうちに〈組手〉か〈形〉か選択することになる。どちらも大事だが、より向いているほうに時間を割く。私は体格や性格から〈形〉に重心を置くことに先生と相談して決めた。


 本当の稽古日は火、木、土。水曜の今日は特訓が必要な選手5人と渚ちゃんだけ。だからいつも取り合いになる鏡の前がガラ空きだ。


 鏡で自分の所作をチェックしつつ、渚ちゃんに細かい部分を直してもらう。

 基本の形から徐々に難易度の高い形を通しでやっていると、キイっと軋む音がして道場のドアが開いた。誰かの親が迎えに来たのかな、と思い鏡越しに見る。


「あ…………」

 鏡の中に背の高い眼鏡をかけた、ジーンズにオレンジのダウンを着た男子が立ってた。随分会ってないのに、一目でわかった。


 渚ちゃんが叫んだ。

「うそ?ひょっとしてレイジ!」


 佐野 玲司、私が昔ケガさせた………友達。






文章中、空手の大会や稽古の様子が出てきますが、筆者のよく知る道場や流派がモデルです。流派や団体によって色々違うので、そこは深く追求しないでくださるとありがたいです。よろしくお願いします。

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