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私と猫

作者: Alice

今日も窓の外から猫を見る

猫は土で出来た凸凹の道を颯爽と走る。


猫の走っている道には緑色の葉っぱが落ちており

葉っぱは私に夏の訪れを教えてくれた


「夏は暑くて嫌いです。ましてこの身体に夏は毒です… 」

私は溜息をつきながら外を見ていた


私の頭の後から扉が開く音がした

「アレシア、今日も包帯変えましょうか」

母親は薬と包帯を手に持って部屋に入ってくる


「お母様、夏になりましたわ」

私は窓の外を指差す


「そうね」

母親は冷たい口調で返事をすると

私の顔の包帯を剥がし始めた


「痛いです、痛いです… もう少しゆっくり剥がして下さい」

私の叫びも母親には聞こえていなかった


「頑張ってね、少し痛いでしょうけど」

母親は包帯を剥がすペースを緩めなかった

むしろペースアップし始め

私の皮膚は血だらけになっていた


「お母様、もう少しゆっくり剥いでください。痛いです、痛いです」

私は涙と叫びが混じった声で訴えた

しかし母親には聞こえていなかった

一番近くにいる母親には聞こえず

窓の外にいる猫には聞こえていた


猫は私の顔を見ながら微笑んでいた


「お、お母様。ね、猫が笑って私を見ています」

私は痛みを堪えて猫のいる外を指差した


「そうね」

母親は一言そう言うと私の顔を覆っていた全ての包帯を剥がしきった


「アレシア、包帯付けるから目を閉じて」

母親は私の口の下から包帯を付け始めた


「お母様、私の病気はいつ治るのですか」

私は目を閉じて聞いた


「そうね」

母親は包帯を付けている


無言の時間が続く。


「お母様あの…」


「さぁつけ終わりましたよ。今日は疲れたでしょうからはやく寝なさい」

母親は私の言葉を聞かずに部屋を出ていった


「お母様、まだお昼なのですが」

私の言葉も虚しく母親は部屋の電気を消して扉から出て行った


「お母様は私を何だと思ってるのかしら」

私は独り言をつぶやいた




「ゾンビだよ… 君はあの時噛まれたんだ。覚えていないのかい」

何処からか声が聞こえた


「何を言ってるの。私は人間よ」

私は何処からか聞こえる声に返事をした


「いや、君は人間じゃない。だって僕の声が聞こえるだろ」

何者かの声は私をバカにしているかのような話し方だった


「聞こえるけど私は人間よ。アナタは誰なの」

私は大声で聞いた


「窓の外を見てごらん」


窓を見ると外には猫が1匹大人しく座っていた


「ゾンビちゃん、初めまして」

猫は私の顔の方向を見ながら言った



「その呼び方止めてくれる」

私が猫を睨みながら言うと


「それじゃあ止めよう。それより僕は君に教えてあげたいことがあるんだ」


猫は尻尾を左右に振りながら言う。


「何よ。何を教えてくれるの」

私が興味津々で聞くと


「その病気の治し方さ」

猫は万遍の笑みで言った


「この病気治るの… 本当に治るのですか」

私は目を見開いて聞く


「あぁ。私には簡単な事さ」



「早く教えて下さい」

私が大声で言うと


「じゃあ薬をあげるから外に出てきて」

猫は窓の外で地面を掘り始めた


地面の中にはビニール袋があり、中には粉薬が入っていた


「それがあれば治るのですか…」

私はビニール袋を見ながら言った


「あぁそうさ。これさえあれば君は自由の身だ」

猫は大声で言う


「これでお母様に気に入られる。お母様とお出かけ出来る」

私は大喜びで部屋を出ていき

家の玄関を飛び出した


猫は玄関の前でビニール袋を持ち待っていてくれた

「早かったじゃないか。早くここまでおいでよ」


「分かってるわよ」

私が1歩玄関から外に出た瞬間

私の頭上に何かが落ちてきた


私はその何かに気がつくことなく亡くなった。








「本当にこれで良いのかい?」

猫は二階を見ながら言った


「良いのよ。これで私は自由の身よ」

母親は目に涙を浮かべながら言った


「アレシアは不治の病。治ることなんてないの」

母親は大声で叫び泣いた


「それじゃあ僕帰るから」

猫は狂った母親を眺めながらアレシア家から立ち退いた。



3日が過ぎた


「あれ…」

確か私は薬をもらおうとしていたはずなのに

ここはどこだろう

私が辺りを見回していると

「起きたかい?」

猫が1匹私の顔を見つめていた


「ここはどこ?」

私が聞くと

「私の家だよ。君は母親に殺されたんだ」

猫は衝撃的な話をしてきた


「え。 お母様が私を殺した…」

私は涙でいっぱいになった

私はやっぱり要らない子だったんだ…

私はお母様に愛されていなかったんだ…


悔しさでいっぱいになっている時


「アレシア、母親憎くないかい?」

猫は微笑みながら聞いてきた


「憎いわ、お母様は私を殺した。人殺しだもの」

私は悔しさで手を震わしていると


「もし僕が君の病気を治してあげると言ったら何でも言うこと聞くかい?」

猫は衝撃的な事を言った



「聞くわ。もう私はアナタの言うこと全てに従う…」

そう言うと猫は


「母親殺してこい。父親も、あとお前の妹、弟も全て殺してこい」

猫は今までに聞いたことのない声で言った


私はその声に従う他なかった


「この家の玄関は何処にあるの」

私が猫に聞くと


「それは運命が教えてくれるさ。それに従え」

猫はそう言って何処に消えていった







「お母さん、お姉ちゃんはどこにいるの。最近見てないけど…」

アレシアの弟ナクラが聞いた


「お買い物よ」

母親はナクラに本当の事を言わなかった


玄関から妹ラシードが走ってきた

「お母様、お姉ちゃんが帰ってきましたわ」

ラシードは嬉しそうな声で言った


「ラシード冗談は止めてくれないかしら」

母親が静かに言うと


「本当よ。お母様、玄関にお姉ちゃんが立ってますわ」

ラシードは母親の右手を掴んで玄関まで連れていった


玄関に着いた母親は言葉が出なかった。


「お姉ちゃんおかえり!」

妹の優しい言葉に


「 ただいま 」

私の一言が大きく響いた

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