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不老不死を得たある男の一生  作者: ヴァレー
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故郷の死・隠遁する不老不死の男

不老不死から60年後。

男、80歳。



男の兄が死亡した。享年85歳であった。

男の友人たちもほとんど死亡した。原因は病気が大半だったが、あと10年もすれば老衰で死ぬ者も出てくるだろう。


男の肉体は20歳のままなので、どこかで仕事を探し、そこで新たな人間関係を作ることもできた。

しかし過去の自分を知る者はもうほとんど誰も残っていなかった。

故郷に行っても過去の友人や家族たちの子供たちがいるのみで、直接自分を知る者はいない。

自分を知る家族ももうこの世におらず、いよいよ一層孤独感を強く感じることになった。


これを機に男は、仕事をやめて仕事をしなくなった。もう仕事に飽きてしまったのである。


一人、山奥にこもって過ごすようになった。

以降、山奥でボーっとする生活が始まる。退屈だが、慣れてしまうと思ったほど苦痛ではなかった。


男にとって、すでに人間社会というのが遠い世界のように思えてきた。


人との関わり合いがなくなってしまい、最初は不安や絶望を感じていた。

だがそれも少し視野を広くして考えてみれば、たとえば動物の中には一生仲間などを作らず、孤独に過ごす者もいる。

自分はもう不老不死、人間ではない何か新しい生物のようなものなのだから、そういう特殊な動物のように過ごさざるを得ないというのも、無理のないことのように思えた。


元は人間だったが、今は人間ではない。

人間の世界を捨て、新しく進化した動物の一種として生きる、そう決めなければならなかった。


また今までの80年という自分の過去を振り返ってみて、それがひどく短いもののように思えた。

人の一生があっという間で、実にはかないものと思えた。

そして自分の長寿に、改めて希望を見出した。


自分にはまだまだ未来がある。


もっと未来を楽しみたいと思った。


しかし山奥でずっとぼーっと過ごすのも退屈だったので、山奥にログハウスを作り、そこに住むようになった。

ログハウスはホームセンターで購入したチェーンソーなどを使って作った。

山奥に住んではいるものの、たまに市街地に出たりしてみて、人間社会を覗いてみるのも楽しみだった。


自然社会に定住し、たまに人間社会に出てくるくらいの生活が、最もストレスがなく気楽に過ごせそうだった。


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