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不老不死を得たある男の一生  作者: ヴァレー
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社会から孤立しつつある不老不死の男

不老不死の男は、家族や故郷の友人たちと縁が切れた。




不老不死から20年後。

男、40歳。



男は転居を繰り返し、その転居先で仕事を見つけていた。


まず男は、家族や学生時代の友人たちとは完全に縁が切れていた。

家族が男に連絡しても一向につながらないので、彼の両親は警察に捜索願を出したのだが、警察はあまり真剣に捜索しなかった。

そのため彼は家族に見つかることなく、行方をくらませることができた。


40歳にもなれば、さすがに年齢が顔に現れるようになってくる。

男は自分だけ歳を取らないので、昔の友人たちと会えば異常な事態であることにすぐに気付かれる。


実は男が38歳の時、中学の同窓会の通知が来たのだが、当然に参加できなかった。

周りの友人たちはみな歳を取って38歳の顔になっているのに、自分だけ20歳で止まっているのである。異様な事態である。


このとき男は、もう過去の友人たちと再会することが不可能だと知った。

友人だけでなく、同じ理由で家族にも会うことができなかった。


これがまだ30歳のときなら「若いねぇ!」で済まされたかもしれないのだが、40となるとさすがに無理である。


こうして男は家族とも友人とも縁を切り、行方をくらませた。

家族はもう、男は死んだものと思うようになり、それ以上の捜索願いは出さなかった。


それで男は遠くの地で仕事を探し、年齢をごまかしながら一人でアパート生活をしていた。

日雇いの仕事などを繰り返し、ギリギリの生活を送っていた。


その仕事先で知り合った労働者たちと飲んだりして遊ぶのが唯一の楽しみになっていた。

もちろん自分の過去の話になると、何とかごまかすしかない。

自分の実年齢は31歳ということにし、親は両親とも病気で死亡、兄弟はいないということにしていた。


また仕事がつらいので……つらいといっても疲労するわけではなかったが、単調作業で苦痛、人間関係も劣悪だった……なかなか長続きしなかった。

離職の経歴が多くなり、そのために新しく就職することがさらに難しくなった。

結果として、放浪者のような生活になっていた。それは自分の望んだような生活ではなかった。


男は考えた。奇妙なことに、老いないことが家族や過去の友人たちと縁を切らせてしまったのである。

過去を捨てて生きることは強い喪失感を伴い、苦痛であった。


なぜ自分のような優れた存在が、不老不死という神に近い性質を持っている自分が、人間社会でいう下層階級の生活を余儀なくされているのか?


なぜこれほどまでに孤独の苦痛を感じながら生きていかなければならないのか?


男は後悔していた。不老不死になったことではなく、もっと以前から努力すべきだったのか、と。


普通の人たちは、死の恐怖があるからこそ努力できるのだろうか。


男の年齢は40歳。

兄の子供が10歳になった。

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