表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不老不死を得たある男の一生  作者: ヴァレー
3/25

下層の生活に甘んじる不老不死の男

不老不死の男は、待遇の悪い会社に勤めて働いていた。



不老不死から5年後。

男、25歳。



男は普通の会社員として働いていた。


ただ同じ大学の友人たちよりも労働の待遇の悪い会社だった。

それは単に、就職活動をさぼったからであった。もっと真剣にやっていれば、待遇のいい会社に入れていたかもしれなかった。


なぜ会社で働く道を選んだのか?



それは単に、何もしない人生があまりに退屈であるためだった。

別に働かなくても、極端な話が山奥でずっと野宿して過ごしても、死んだりしないし健康を損なうこともない。

男は一度、試しに山奥で野宿したことがあったのだが、山奥には何もないのである。楽しみが何もない。

夜になれば周囲は真っ暗で、ひどくさびしい。

これはあまりにも退屈、そして孤独であった。いやもうそれは、退屈を通り越して苦痛だった。


こうした苦痛を逃れて、ある程度楽しみのある人生をやるためには、普通の人たちと同じような人生設計をして過ごさなければならなかった。


食事はなくても平気だったが、少なくとも住居だけはまともなところがほしかったので、男はアパートに住むことになった。

アパートに住むには金がいる。

いくら不老不死といっても、身体・頭脳の能力は人並みであり、お金を得るためには働かなくてはならない。


働くのが嫌で、仮にお金を得るために強盗殺人をし、警察に銃で撃たれても、もちろん死ぬことはない。

しかしそれでも警察は彼を拘束するだろうし、牢獄に入れられれば出ることはできなくなる。


それで仕方なく、アパートの家賃を払うために働かざるをえないのだった。



大学3年生の時、男は就職活動に手を抜いていたが、このようなことがわかったために一応のところ、真面目に就職活動をするようになった。


それでも「最悪失敗しても未来に不安はない」という油断があったためか、面接などでも詰めが甘く、失敗続きであった。


結局入れた会社は待遇の悪い会社で、毎日つまらない仕事を、朝早くから夜遅くまでしなければならなかった。

その割には社会的地位も低く、給料も低かった。



不老不死を喜んでいたのも数年の話で、結局は普通の人たちと同じか、それ以下の人生をやらされていた。


男は、学生時代に自分が悟った哲学について、いくつか変更せざるを得なくなった。


不老不死になると、働かずに過ごすこともできる、病院に行くこともない、派遣切りにおびえることもない。

しかしそういった恐怖や不安がなくなる代わりに、人間らしい生活の楽しみもほとんどなくなってしまうことに気付いた。


人類の夢のような願いである不老不死を手に入れたというのに、人並みの生活を強いられているのは不快なことだった。男のプライドは傷つけられた。


男の生活は貧乏だった。お金がなくてつまらなかった。

楽しみといえば、たまに学生時代の友人と一緒に遊ぶことくらいだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ