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不老不死を得たある男の一生  作者: ヴァレー
20/25

地球上の生物たちの完全かつ不可逆な死滅

不老不死から3億年後



とてつもない時間が過ぎた。



さて、規模の大きい話になるが、太陽の寿命は現代から50億年程度だといわれている。

太陽はその間、徐々に膨張し、50億年後辺りでは内部の水素を燃やしつくしてしまい、以降は小さくなり中性子星として残るという説が有力である。


そして太陽が膨張している間、その高熱は当然地球にも影響がある。


現代から3億年後あたりで(この時期については諸説ある)、この太陽の高熱のために地球の水はすべて干上がってしまうと考えられている。

当然、生物はそれよりもずっと以前に絶滅するであろう。

少なくとも現代から1~3億年後あたりで、地球上の生物はすべて絶滅し、以降は地球上で永久に生物が生まれることはないと考えられている。



男が不老不死になってから3億年後、地球の生物はすべて絶滅した。

スーパープルームの時にも多数の生物が絶滅したが、このときは雨が降り続いていたため、酸素まで失われることはなかった。


しかし今回はそうはいかなかった。すでに海が完全に干上がっており、地球の酸素濃度はゼロになっていた。

酸素がなくなったため、つまり地球上に大気がなくなったために、青空や雲というものもなくなり、空は真っ黒だった。

地球の表面はほとんどが岩石や砂漠で多いつくされ、緑も水もない。月の表面と同じような感じになっていた。


空気がないので、音が一切聞こえない。


蒸発する水もなく、雨が降ることもない。そして今後も太陽は膨張し続け、地球はさらに熱せられる。


地球の生物は絶滅し、今後は二度と現れることがない。

男もそのことをなんとなく察していた。すでに地球上に存在する生物は自分のみで、人間を含めあらゆる生物が絶滅していた。



男はさらなる孤独を感じただろうか?



少しは。それっぽいものをたぶん、ほんの少しくらいは感じたであろう。


しかし男はあまりにも長い時間、種として孤独であったし、社会性の不要な生活をしていたため、孤独の恐怖という感覚がほとんどなくなっていた。


私たちが孤独を癒そうとするのは、つまり寂しさというのは、それが生きるために必要だから感じるのである。

男は生きるためになんら誰かと一緒にいる必要がなかったので、すでに孤独感という感情がなくなっていた。


だから私たちが想像するような恐ろしい寂しさというのも、男は感じることもなかったのである。

しかしそれでも男は、なんとなく「すでにこの地球上に生きているものが一つもない」ということは理解していた。

その鈍い感情で、やはり「なんとなく」、それを眺めていた。


動物も植物もない。地球はすでにあらゆる生命が存在し得ない、死の星になっていた。



男は何もしない。



自分が何をしても、誰も反応するものがない。

周囲は見渡す限り同じ景色。永久に続く岩と砂。


男は仰向けに寝転がった状態だったが、すでに2億年もの間、体をほんの少しも動かさなかった。

呼吸はしていたが、ほとんどわからないくらいわずかなものだった。


もちろん体には血液が流れているし、脳は生きていてものを考えることはできる。


しかし男が何を考えようとも、何をしてみようとも、何も返ってこない。

何をしても意味を見出せない。



男は何もしない。



目は一点を見つめていた。しかしそれは何かを見ているのではなく、ただ何かが視界に入っているというくらいのもので、何も認識してはいないのである。


変化は何も起こらなかった。

ただ途方もない長い時間をかけて、少しずつ地球は太陽によって熱されていった。


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