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不老不死を得たある男の一生  作者: ヴァレー
18/25

スーパー・プルーム

不老不死から2000万年後



スーパープルームという大噴火がある。

男が不老不死になってから、二度もイエローストーン火山によって生物の大量絶滅がなされたが、スーパープルームはこれらイエローストーン大噴火の比ではない。


通常の火山の噴火というのは、地中にある岩など(地殻)の摩擦によって出てくる熱によりマグマが形成され、それが地表面に噴出される。

地殻といってもせいぜい地上から数十キロ程度の深度であり、巨大な地球のごく表面の部分に過ぎない。

つまりわれわれがたまに目にしている火山というのは、地球のほんの表面がこすれて出てきた摩擦熱といったところである。


実は地球の内部のほとんどはマントルと呼ばれる超高温の成分である。

これは地下数千キロまで存在しており、体積でいえば地殻部分よりもはるかに大きい。

マントルの成分は岩石だったり溶けた金属だったりいろいろだが、いずれも超高温であり、マグマのようなものと思っていいだろう。


このマントルが地表面に噴出してくるのがスーパープルームという現象である。

当然そのマグマの体積はあまりにとてつもない量なので、場合によっては文字通り、地球全土が火の海と化す。もちろんこんな状況で生き延びれる生物などほとんど存在しない。海もすべて干上がってしまうだろう。


何億年に一度くらいの割合で、このスーパープルームは地球上で起きている。

直近のものでは、約2億年前に起こった「シベリアントラップ」というもので、これによって地球上の生物の98%近くが絶滅したといわれている。

この時の噴火の火口の大きさはシベリア全土に広がるもので、直径1000キロメートル(1000メートルではなく1000キロメートル)はあったと推定されている。

あまりの火山灰の噴出量で、地表面に流れ出たマグマの熱により地球が急激に温暖化、さらに酸素量が激減、さらに火山灰の日光遮断による急激な寒冷化などの天変地異が次々と起こり、信じられないくらい大量の生物が絶滅した。



さて、男が不老不死から2000万年後、このスーパープルームが起きてしまった。

太平洋の約半分近くの面積が火口となり、地球全土がマグマの海となった。

男の体が破壊されることはないし、熱によって苦しむこともない、呼吸も問題ないのだが、強烈なマグマの激流に飲み込まれてしまい、かれこれ300年もマグマに流され続けた。


300年も流された後に、旧ヒマラヤ山脈の中腹あたりの岩盤に激突し、地上に放り出された。

男はもっとも高いエベレスト山の頂上に登り、山から下の世界を見てみたが、地上のほとんどはマグマに覆われていた。

おそらく現在大陸として存在するのは、この旧ヒマラヤ山脈のみであろうと思われた。


だが残念なことに、地上もあまり居心地がいいとはいえなかった。

火山の噴火による火山灰が地球上を多いつくし、視界が非常に悪かった。


またマグマによって地球上の水分のほとんどが短期間で蒸発、さらにそれらが大量の雲を作り、超豪雨となって降り注ぎ、それがさらにまたマグマで蒸発…というプロセスを繰り返していたため、絶えることなく滝のような雨が降り続いた。


火山灰と豪雨により、ほとんど前が見えなかった。


男は手探りで、ようやく山の中に小さな洞窟を見つけた。

その洞窟の中に避難し、雨と火山灰から逃れることができた。


それで男はしばらくの間はこの洞窟で暮らしていたのだが、さらに不幸な事故がおきた。

豪雨によって洞窟の入り口が崩落し、入り口が岩でふさがれてしまったのである。


男は不老不死といえど、腕力など身体能力は普通の人間と同じである。

最初は脱出を試みて岩を殴りつけたりしていたが、まるで歯が立たない。とても人間の力で動かせるものではなかった。


男はやがて何もすることがなくなってしまう。

洞窟は光がまったく入ってこなかったので、周囲は真っ暗でまったく何も見えなかった。

洞窟の外の激しい雨の降り注ぐ音だけ、ずっと聞こえていた。


そのうち男は真っ暗な洞窟の中で寝転がり、寝たり覚めたりを繰り返していた。

その後、ようやく4000年も洞窟に閉じ込められた後、入り口の岩盤が雨で削れて脱出となった。


しかし男は脱出可能であるにもかかわらず、あまりにも長い間眠っていたため、朦朧とした意識がなかなか戻らず、洞窟から出るのに苦労した。立ち上がるだけでも数か月を要した。

さらにようやく洞窟から脱出したにもかかわらず、外は相変わらず豪雨が続いていた。


男は豪雨の中、別の居住地を探してこの旧ヒマラヤの大陸を探し回ることにした。


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