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孤高の龍  作者: エルフェリア
第1巻【始動】
1/30

序章ー孤高の龍ー

 10年という歳月が経ち、かつての大戦の傷を癒しつつある世界ヴァーレル。

 同時に人も魔物も傷を癒し、活発になりつつあるが、今はまだ平和という均衡を保っていた。しかし、人に比べ魔物は気性の荒い。そんな魔物たちが、何の変化もない平和を望むはずもない。

「――っ!ナメるなっ!」

 人の手がほとんど加えられていない天然の自然界が多く残るナルタミラ大陸。人の手が加えられた数少ない草原で、魔物と激闘を繰り広げている1人の青年。

 年は17か18か。赤い髪と共に揺れる白いマフラーは、既に赤黒く汚れてしまっていた。青年はそんな事など露知らず、一時もその動きを止める様子はない。青年が動く度、近くにいる魔物は報復も出来ずに事切れていく。

 数十分、青年の双剣が魔物を捉え続けていたが、魔物の動きに変化が現れ、次第に(くう)を切るようになっていった。

 魔物の最大の武器は自分の身体。爪や牙で迫り来る敵を薙ぎ倒す。だが、あろうことかそれを放棄し青年と大きく距離を取ったのだ。

「……なるほど」

 自身の周りに出来た大きな空間。青年は追撃を止め、両手に持つ一対の(つるぎ)を下ろした。まるで、戦う意思を無くしたように。

 戦意を無くした者を殺すのは容易い。魔物がそれをしないのは、仲間の強力な一撃を信じているからだけではない。一度の反撃も許さずに猛攻を続けていた青年が、戦意を無くしたわけではないのを本能で感じ取っていたからだ。

 1秒、2秒と無音の時間がゆっくり流れていく。青年は待っていた。魔物もまた待っていた。

 ――そして。

「コイツヲクラッテシニクサレ!ヴォルテックバージュ!!」

 パリッ……――

 青年の遥か上空で、何かが音をたてた。瞬く間に青年の周りをいく筋もの雷光(らいこう)が取り囲み、一気に中央へ収縮される。更なる追い撃ちをかけるように、一際大きな雷光が地響きと共に青年に直撃した。

 この1撃を一部始終見ていた魔物たちは今度こそ、青年の死を確信した。1000体以上はあった魔物の軍は、今や半分ほど。当初の予定より大幅に遅れているが、これで目的を果たせるだろう。

 もうもうと立ち込めていた砂煙が晴れていく。静かに、けれど無音の空間でははっきりと聞こえてくる笑い声。

 ――魔物の笑い声ではなかった。

「弱い」

 完全に砂煙が晴れた時。

 青年の両手にあった双剣は跡形もなく消え、代わりに天に掲げた1本の杖。青年を守るように虹色のドームが輝いていた。

 それを見た魔物たちはその青年が何者なのか、ようやく悟った。

「この程度の魔法で、俺を倒せると思うな。魔物ども」

 今まで無表情だった青年が、初めて笑った。勝利の確信を隠すことなく見せたのだ。

「ア……アアアア…………!!」

 魔法を放った魔物が怯えたように1歩、また1歩と後ずさる。出会ってはいけない者に出会ってしまったから。 けれど、それを知ったのはあまりにも遅すぎた。

「沸き立つ業火、我が力を糧に我が敵を焼き尽くす力へその姿を変えよ。我望む、我が敵の消滅を……。インフェニティ・エンド!!」

 青年の(ことば)を合図に、地表から現れた百熱の業火は遥か遠くにいた魔物たちを上空へ突き上げた。その業火はダイヤモンドすら一瞬で気化する熱量を持っている。そんな業火に耐えうる硬化を持つ魔物はいない。

 上空で黒い煤へ姿を変える仲間。その間にも逃げ場を閉ざす業火は、もはや恐怖以外の何者でもなかった。

 次の瞬間、魔物たちの瓦解が始まった。青年の笑みは消え、杖から身の丈ほどの刃を持つ大鎌へ。唯一残した逃げ場へ殺到する魔物たちを容赦なく切り捨てていく。


 数分後。草原に残った勝者は、赤い髪の青年だった。

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