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15話

 生徒会長と書かれたプレートが置かれている席に座り、俺の心の奥底まで見透かしていそうな視線を一度俺に送った。そして柔らかにはにかみ、着席を許される。

「御影君、もうすぐで夏休みだ」

「そうですね」

 残り日数は三日とすぐそこまで夏休みは迫ってきていた。

 積みあがった宿題を放置し続ける日々が始まろうとしているわけだ。いまから、見てみぬフリを繰り返した挙句、夏休み最終日に困り果てて頭を抱える自分の姿が容易に想像できる。

「私は出来るだけ夏休み前の問題は夏休み前に終わらせたいと思っているんだ」

「それは素晴らしい」

 嫌な予感が激臭となって臭ってくる程度には、嫌な感じを漂わせていた。少なくとも俺が喜んでしようと思える話ではないことだけは確実と言えそうである。

 俺の適当な返事を気にも留めずに先輩は話を進めていく。

「そこで、その問題のひとつである君と君の『友達』について話がしたくてね」

「それで授業中に呼んだんですか?」

 突然行なわれた授業中の呼び出し。クラス中からそれなりの注目を集めることになったこの呼び出し、もちろん注目を集める中の一人に朧も含まれている。そのおかげで今日の帰宅時間は遅れてしまい、いくつか怪我を負ってしまうことはほぼ確定事項といえた。

「まあ良いじゃないか、授業を一つサボれたと思えば」

「どうせなら英語の時間にして欲しかったですよ」

「ははは、すまないね」

 今ばかりは先輩の笑い声も憎たらしく感じてしまう。

 そっとしておいてくれれば大事にはならないのに、面倒にはならないのに、上手く一番楽なラインを通ってきていたのに、最近は駄々崩れ。

 まじで勘弁してくれ。

「さぁ早速だが本題だ。客人も招いているからね、待たせるわけには行かないだろう?」

「客人?」

「ああ、私も納得いかない部分があるんだけれどね。とりあえず入ってくれ」

 つまらなそうな顔で客人を呼んだ先輩は、決して入り口を見ることはなく、どんな反応を見せるのか窺うような目で俺を見ていた。

 まさか朧本人じゃあないよな。そんな展開になったら最悪だぞ、世界の終わりと言い換えても俺は納得できる。

 絶望をこの目に見ないことを祈りながら、招かれた客人を待つ。

 瞬きをした瞬間そこにいた、そんな感覚が強い。初めからいたと言われれば正直それで納得できてしまう部分もあるかもしれない。それくらいに唐突に俺の目の前に、先輩の真横に、ここでは見るはずの無い顔がいた。

「顔、真っ青だよ」

 茶化すように良いながら、優香は俺を指差していた。

 確かにこいつは納得いかない。なぜ、もう一人の体験者がここにいる。なぜ、わざわざ先輩に告げ口をする。

「なんでここに来た」

 良い思い出なんて無いだろうに、良いことなんて無かっただろうに、なんでここに来たんだろうか。そんな疑問と、どうして来ちまったんだ。という怒りが混ざり合って訳の分からない混合物へと姿を変えていく。

「いやー、やっぱり良くないかなと思って」

 なぜか照れ笑いのような笑い顔を浮かべている優香に、俺はどんな感想を抱き、なんて言葉を口にすれば良いのだろうか。

「まあ、なんにせよ。御影君、すっきりと全て話そうじゃないか。なんだったらもう一人、呼んでも構わない」

 先輩の責めるような口調に、一瞬怯んでしまう。

 目の前の女性人に嵌められたような、そんな感覚が俺に襲い掛かる。

「二人はなにがしたいんだ」

「面倒ごとを夏休み前に片付けたいんだ」

「君に非は無いよ。大丈夫」

 面倒ごと、非は無い、大丈夫?

 この人たちはなにを言っているんだろうか。面倒ごとなら現在進行形で起こっているし、非は無くたって全然大丈夫なことはない。

 むしろ、今回のせいで面倒ごとはより大きくなり、まったく持って大丈夫な状況でなくなるような気がする。いや、気がするなんてものじゃない。きっとそうなるに決まっている。

 二人は俺の返事をじっと待っているような、そんな感じだった。

 二人で合計四つの目玉を俺に向け、見ている側からすると、俺はどんな風に映っているのだろうか。どう見えているのだろうか。

「教室、帰ります」

 このままここにいることによって俺は何かを得ることが無いだろうと判断し、生徒会室を後にしようと二人に背を向けて扉を向き合う。

「御影君そうしていても、解決はしないんじゃないかな」

「下手なことをして悪化するよりはマシです」

 吐き捨てるように言って生徒会室を出た。

 廊下に出ると、既に授業は終了していたらしく、生徒達の笑い声が聞こえてくる。笑い声に、俺は劣等感のようなものを感じ、喧騒の聞こえる教室とは真逆へと足を伸ばした。

「あっ」

 足を一歩踏み出したところで、正面から歩いてくる朧を視界に捕らえる。体を強張らせる元気もないらしく。漠然と恐怖が近づいてくることだけを感じていた。

 そして朧が俺の横通り過ぎていく。

 たった一瞥をくれるだけで、それ以上のことはなし。ネクタイをつかまれて連れて行かれるとか、爽やかイケメンスマイルで話しかけてくることすらもなし。喜ばしい反面、得体の知れぬ恐怖が俺の心で生まれていた。

というわけで、15話でした。

至らぬ点が多々あるとは思いますが、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。

なにか意見等ございましたらコメントお願いします。

本作に反映できるかどうかは、作者の時間しだいですが、次回作を書く際に参考にさせていただきます。

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