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お手伝い?

朝5時半。私の一日はこの時間から始まる。

起床したら、目を覚ます為に顔を洗って、歯を磨く、すっきりした状態で動きやすい服装に着替え、中庭にでる。

軽くストレッチをしたら自己鍛錬の開始だ。

私が早く起きている理由はこれだ。自己鍛錬、幼いころから母に鍛えられていた。

毎朝、母が稽古をつける!と急に言い出したのが始まりだ。

「自分の身は自分で守る!」

それが若いころに軍隊に所属していた母の持論だった。

「軍では、戦に姫と書いて、戦姫せんきと呼ばれていたんだぞ!」

と自慢していた。(父曰く、戦鬼が正しいらしいが・・・。)

母は人にも自分にも厳しい人だった。

父曰く、体術・狙撃・戦略どれをとっても一流。

どれをとっても教官泣かせの腕前だったそうだ。

「静香はなにをしてもすごかったんだよ!さすがだよね!」と

父がわざと母のいる前で私に言っていたのを覚えている。

照れながら父の首にスリーパーホールドをかける母と顔を青くしながら笑顔でギブアップしている父。

照れた母に、何かしらの技をかけられ毎回ギブアップするのが決まっているのに、何故わざと母のいる前で言うのか毎回疑問ではあった・・・。

ストレッチは完了!

次はランニングで軽く汗を流す。大体15分ほど走り体を温めた後、色々な武術の型に入る。

武術の型は全て母に教えてもらったものだ。

数多の武術において優秀な成績を収めていた母。

各武術の師範代も真っ青だったらしい。

ずば抜けたセンスを持っていて、大の男も恐れると同時に、憧れていた人もいるとかいないとか。

一連の型が終わる。

そろそろ、シャドウかな。今まで練習していた型を使って想像の相手と戦う。

頭の中で敵を想定し動く。

母がいた時は実際に相手がいたのだが今は手合せの相手がいなくて困っている。

シャドウも鍛錬としては良いのだが、物足りなさは否めない。

シャドウを初めて数十分たった頃、

ガラッ

縁側の窓が開き。メイドが庭に入ってくる。

「おはようございますであります。朝から性がでるでありますな~。なかなか見事であります。」

メイド服のアンドロイドが出てきた。

このアンドロイドはいつもメイド服でいるのだろうか。

「おはよう。なによ。なんか文句あるの?」

朝からイライラしそうな雰囲気が漂い始める、いや漂っていると思っている時点でイライラしているのであろう。

私はまだこいつが家のメイドになる事をまだ認めてはいない。

そんな雰囲気を意にも返さず、

「いやはや、静香をみているようでありますよ。さすがは親子であります。」

両腕を組みながら、うんうんと頷くアンドロイド。

そんな動き普通の人間でもやらないわよ・・・。

「お母さんと手合せでもしたことあるの?」

昨日の親子丼の事といい、なぜこいつは私の母と知り合いなのだろうか。不思議である。

「静香の型は見事でありました。なんどか手を合わせているでありますが、これがなかなか。」

今だに腕組を崩さずに頷き続けているアンドロイド。

私はふと閃いた。

「ねぇ、あんた。ちょっと相手になってよ。」

そうだ。これは合法的にストレスが発散できるチャンスなのではないか!

昨日からの鬱憤を晴らそう!


朝っぱらからイライラしていたからか、昨日の心的疲労のせいか、私は昨日の出来事を忘れていた。

なんとかして一撃与えて憂さ晴らしをしようと思っている私の考えに気が付くことなく

「もちろんであります。鍛錬の手伝いもメイドの仕事であります!」

アンドロイドの答えはすぐに返ってきた。

なぜか嬉々としている。

「いや、鍛錬の手伝いができるメイドなんてこの世にいないし、いたとしても需要ないわよ。」

相変わらず訳のわからない事を言っている。

こいつのメイド像はいったいどうなっているのか・・・。

「いくでありますよ!」

やる気満々のメイド。腰を少し落とし拳を握る。メイド服で・・・なんだか不思議な光景だ。

まぁこれでスッキリでき・・・あぶなっ!

不意に来た右のストレートを左の掌で右下の方向へといなす。

いなした拳はそのまま地面へと、めり込んだ・・・。

庭の地面にめり込んだのだ。手首あたりまでずっぽりと・・・。

「ちょっと!!あんた!あたしを殺す気?!」

これがもし頭に直撃していたら・・・私は確実に死んでいる。

とっさに手が出たのは、今までの母と行ってきた鍛錬の成果だ。

まさかメイドの一撃を躱すことで一番成果を感じるとは思いもよらなかった。

「いや~、すまないであります。力加減を誤ったでありますよ。」

地面から引き抜いた右手を頭の後ろにあてながら、やっちゃった☆みたいな雰囲気を出すアンドロイド。

そうだった、まな板にクレーターをつくる。フライパンを曲げる。

このメイドの力は異常だったのだ。それにとてつもなく硬い。

それをすっかり忘れていた・・・。あまりにおかしな光景で脳が昨日の記憶を削除したのかは分からないが、こいつはかなりのバカ力なのだった。

「手加減しなさいよ!今の当たったらあの世行きよ!!」

今すぐに殴りかかろうかと思ったが、今はストップだ。

「いやいや、すまないであります。力加減を間違えてしまって、しかし今のをかわすとは素晴らしいでありますな。だいたい今ので決まるのでありますが。」

どうやらこのメイドは、決める気だったらしい。なにを考えているのか、このおバカロボットは・・・。

「だいたいの相手はこれで一撃粉砕だったでありますよ。」

勝負を決めるだけでなく、どうやら粉砕する気だったらしい。

なんとも恐ろしいことを言っている。

アンドロイドは関心したように話を続ける。

「A‐1000型もいちころだったであります!」

両手を腰に当て胸を張っている。とても満足そうだ。

ん・・・A-1000型?それってあの戦闘用最新のロボットでは・・・?

最近発表された軍の戦闘用アンドロイド。

なんでも今までで最高傑作になった!とテレビで白衣を着たおっさんが鼻息荒く言っていたのを覚えている。

しかし、そのA-1000型の事なのだろうか。

「ちょっと、あんた今なんていったの?」

再度アンドロイドに確認をする。

「ん。力加減を誤っt」

「そこじゃないわよ!」

このツッコミも毎度お馴染みになってしまいそうで嫌だ・・・。

「あんたA-1000型って言ったでしょ?」

こめかみを両手で押さえながら聞く。

「あぁ、そっちでありますか、A-1000型あれはまだまだ未熟でありますよ。最新と言いながら旧型の私に負けてるんでありますからな~。引退試合でやりあったのでありますが、パワーを突き詰めた私には遠く及ばないのであります!」

両手を腰に当て胸をそらし、さっきよりも満足そうに言う。

「旧型?そもそもあんた戦闘用なの?」

純粋な疑問を投げかける。

こいつ自身、家事はメイドの仕事だといっているものだから、家事用のアンドロイドかと思っていた。物を壊しまわる家事用アンドロイド。

「ん?それも聞いていないでありますか?私は戦闘用アンドロイドであります。」

うん。さすがはお父さん!色々言わなさすぎよ・・・。

まぁ仕方ないか、それに戦闘用だろうがなんだろうが私には何も関係ない。

ふと時計を見る、6時20分。

今日は此処までにしよう。時間も良い頃合いだし、シャワーを浴びて、ご飯を作ってやることはまだある。


「はぁ~、すっきりさっぱり~。」

シャワーで汗を流してさっぱりする。

運動は気持ちがよい。身も心も引き締まるし、目も覚める。

それに汗をかいた後のシャワーは格別に気持ちがいい。今日は冷や汗もかいたが・・・。

地面に埋まった拳を思い出し青ざめていると、

がしゃーん!!

居間からなにやら大きな音が聞こえた。

割れた音じゃないわね。、またメイドが破壊活動を行っているのではないかと思ったが、この時間帯に関しては、この大きな音には心当たりがある。

洗面所の時計を見ると、時間は6時30分・・・しまった。

アンドロイドの相手をしていたこともあり、いつもより時間が遅い。

6時20分に父を起こさなければならないのだが、きっと父は自力で起きて居間を彷徨っているのであろう。


「おはよ~。」

居間のドアを開けると。寝ぼけながらテーブルの周りを回る・・・もとい徘徊している父がいた。

「う~、凛~寝てるよ~・・・おやはお~。」

色々突っ込みどころが多すぎて困る。おやすみとおはようが混ざっているし。

父は朝に弱い。

父曰く、起き続けているいることは得意との事だが、寝起きは悪い。

確かに、3日3晩寝ないで研究していても父は元気だった。

しかし、何時間寝ても、寝る時間が早くても父は朝は常にボケており、なかなか自力で起きられない。

今日は珍しく自分で起きて、徘徊しているようだ。

「お父さん。おはよ。」

「ん・・・。おはよぉ~。」

細めの目がより細くなっているような気がする。

そういえば、母は寝起きの父を溺愛していた。

寝起きの父の頭を両手でくしゃくしゃに撫でて、抱きしめていた。

今思うと大型の犬と戯れているかの様だった。

とりあえず父を椅子に座らせて、気合十分で朝ごはんを作ろうとしているメイドから無理やり包丁やらなんやらを奪って朝ごはんを作る。

「昨日から言っているでありましょう!?家事はメイドの」

と言ってきたがまったくの無視である。

いちいち聞いていたらきりがない。

ただいつまでも煩いので、珈琲作りを任せる。



母が亡くなってから朝ごはんは私担当だったので、料理は慣れたものだった。

まぁ、今回はそんなに料理!という程のものではないが。

朝食は目玉焼きにウインナー、程よく焦げ目のついたトーストにミニサラダと珈琲だ。

味も見た目も完璧である。


「うん!凛の料理は最高だね!」

珈琲を飲み終えサラダを食べながら父は満面の笑みを浮かべている。

珈琲を飲んでからサラダ、父のいつものパターンだ。

「朝の父には珈琲を与えるといい!」

まるで、この餌が一番好きなんだ!と言っているかのようなニュアンスで母が言っていたのを思い出す。

父は珈琲を1杯飲み切ると目を覚ます。

珈琲は父の目を覚ます特効薬である。

自分の朝ごはんを食べ終えるころ、

「タコさんウインナーであります!」

急にアンドロイドが叫びだす。

フォークに刺さったタコ型のウインナーを見て目を輝かしているアンドロイド。

そんなに珍しいものかしら?

「この足・・・見事であります。口まで再現しているとは・・・むむむ。」

ウインナーに穴が開くくらい見つめながら一人でボソボソ言っている。

なんだか異様な光景である。メイドがタコさんウインナーと睨めっこ。

しかもメイドの目力は凄まじい。

「ただ、切れ目入れただへほ?なんほなくやっただけだし。そんなに珍しい?」

時刻は7時30分学校に行く支度を終え歯磨きをしながら、ウインナーに熱視線を向けているアンドロイドに疑問を投げかける。

「この形にしようとすると、どうしてもうまくいかないであります。気が付くとバラバラになっているのでありますよ。」

タコさんウインナーバラバラ殺人事件。容易に想像ができる。

まぁあのバカ力では仕方がない気がするが・・・。

ちょっと落ち込んでる姿がかわいそうに、ちょっとだけ可愛らしく見えた。

そんな雰囲気にやられたのか、口をゆすぎ終わった私は、

「暇なときに教えてあげるわよ。教えるって言ったってどう教えていいのかは、よくわかんないけど。」

なんて言葉を口にしていた。

まだ認めたわけではないが、悪い奴ではないようだし。頭以外は・・・。

「ホントでありますか!ウインナーいっぱい買っておくであります!」

目をキラキラさせているアンドロイド。

「どんだけ作る気なの・・・。程ほどでいいわよ、程ほどで。」

スーパーの袋いっぱいにウインナーを買ってきそうな勢いのアンドロイドを軽くたしなめ玄関へと急ぐ。

ちょっとのんびりしすぎちゃったかな。

小走りで学校へ行かないと、

「じゃぁ、行ってきます!お父さん、遅刻しないようにね!」

玄関から少し大きな声で父を急かす。

「おっといけない、急がないと!」

慌てる父、なんだかんだいつもの光景だ。

「凜!気を付けていってらっしゃい!」

扉から顔だけ出して笑顔で見送ってくれる父。

「事故には気を付けるでありますよ!」

その父の下から顔を出すアンドロイド。

なんともシュールな光景だ。

「ありがと。お父さんも気を付けて、あんたは物壊さないようにね!行ってきます!」

「ありがとう、気を付けるよ。」

「・・・任せるであります!」

ちょっと心配にはなったがこれ以上時間が過ぎると、小走りではすまなくなってしまう。

私は少しの不安を残しながら学校へと向かったのであった。


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