告白3
リリアーノは身分からも容姿からも政治的に結婚するのは了解の上だった。マルグス家が抑制力になるというのは分かるし、こうして今オブラートに包むことなく話すアルジオに対して怒りなど全く湧く筈がない。
しかし、いっそ隣国にでも嫁がせてくれれば、と思うことがなかったわけではない。
勿論、アルジオが悪いのではない。けれど、どうしても感情がいうことを聞かなかったのは事実。
「いつからか、貴女を妹とは見れなくなりました。いや自覚していなかっただけかもしれませんね。いい歳をして十四も下の娘を想うのは中々勇気がいるのです」
ハァ、と肩を落としてから、アルジオはぽりぽりと頭を掻いた。
慌てたのは、リリアーノが息を上げた時だけで、今目の前のこの方は動揺など少しも見せず、むしろ真摯にリリアーノを見つめた。
「リリー、私の妻になってくれませんか」
ああ、違うな、とリリアーノが固まっているのを気にせず、
「そばにいて欲しい。愛しています。私の姫君」
一国の国王であるアルジオは騎士のように跪き恭しくリリアーノの手にくちずけた。
……この方はズルいのだ。何もかも。
広間でリリアーノを庇ってくれたことが、本当はどんなに嬉しかったか。いつだって自分を気にしてくれる。けれどそれは妹のような存在だから、無碍に出来ない家系だからと納得させるに等しい態度しか今まで見せなかったくせに。
そう頭のどこかで詰りたいと思っていても、こちらを漸く見てくれる、それだけで震える自分が情けない。
「……返事を」
アルジオがリリアーノを見上げる。赤みがかった見事な黄金の髪が揺れた。
「わたくしからは永遠の愛を。アルジオ様、お慕いしております」
告げれば、
弾かれたようにアルジオが立ち上がり、リリアーノはまた腕の中に囚われる。
リリアーノの瞼に、アルジオの唇が落ちて、頬を伝い、何度も啄むように唇を重ねた。