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ホンモノのキーボ君

 桜祭りのステージに、青い何かがノソノソと上がってきたので見てみるとそれはキーボ君だった。俺は事態が飲み込めず呆然とする。

「やっと、キーボーズ結成だな!」

 後ろから燗さんの声が聞こえるけれど、まったく状況が飲み込めない。舞台の上にいるもう一体の青いマスコットも俺の着ぐるみと同じ色で似た顔に同じように頭にレインボーの取っ手のついた飾りを載せている。違いといったら帽子のようなモノの色が赤いという事くらいで、ハッキリと相手もキーボ君である事が分かる。


 驚きのあまり動く事を忘れていると、もう一体のキーボ君は何故かコチラにズンズンと近づいてきて気がつくと体当たりされ後ろにぶっ飛ばされていた。もう何が何だか分からないけれど、二体のキーボ君がぶつかり転けた様子が面白かったのかステージの下から笑いが起きる。


「おい、気をつけろよ。こいつはお前と違って非力なんだからよお」

 燗さんが起きるのを助けながら、キーボ君にそう言い放つ。

「うるせえよ、おっさん」

 もう一人のキーボ君から、聞いたことのない声が聞こえた。誰? コレ?

「お前は喋ったら駄目なんだぞ、黙って愛想をふりまいてろ、可愛くな」

 ニヤリと燗さんがからかうように言うと、もう一体のキーボ君はピョンピョンと跳ねてから突然燗さんに頭突きを食らわしてきた。そしてそのままヒーローショーさながらのキーボ君と燗さんバトルショーが始まり、会場はより一層盛り上がった。この場合どちらが正義の味方で、どちらが怪人なのかは良く分からない。いつも元気な燗さんはともかく、もう一体のキーボ君は俺と同じ着ぐるみをきているとは思えない程軽快な動きで、視界の悪さもモロともせず生身の燗さんと嬉々とした様子で戦っている。その楽しげな様子からも、コレが喧嘩などではなく、この二人は仲良い事が窺えた。そして俺ことキーボ君はヌボーと立ったまま、その様子を見守る事しか出来なかった。

 その後は流れでなんとなく、二体による子供達との写真撮影大会へとなりイベントは無事終了する。よく分からないけれど商店街の人は俺の事を『一号』と呼び、もう一体を『二号』と呼んでいる事から、彼は『二号』さんなのだろう。そして俺が『一号』であるようだ。

 無事イベントも終わった事で、恐る恐る二号さんと呼ばれるキーボ君に近づく。俺よりも若干背が高いのか二号さんの方が大きい。そして声をかけようと手を伸ばした瞬間、キーボ君は『もう限界! 我慢できない!』と走り出し駅方面消えていった。着ぐるみとは思えないスピードで。

 唖然と青き小さな点となった二号さんを見送っていると、燗さんが声かけてくる!

「どうでい? 感動の再会は? 嬉しかっただろぉ?」

 再会って? 初対面なのですが……。

 よくよく聞いてみると、あちらの中の人は、商店街にある昌胤寺の次男坊で元々はその人がキーボ君に入る予定だとか。しかし仕事の都合で長期間街を離れる事となり急遽俺にその役目が回ってきたとという事らしい。何故俺のような人見知りの激しい人物にこの仕事を? と思っていたけれどその話を聞いて納得する。

 二号さんの中の人は安住さんといって、爽やかな好青年という感じ。小さい頃からこの街に暮らしている事もあるのだろうが、商店街の皆とも仲が良くいつも彼のいる所には笑いが起き賑やかだった。

 安住さんが快活な人だからだろう、キーボ君の姿になっても生き生きとしていて、着ぐるみというか本当にそういう生物がいるかのように軽快で自然な動きに、俺も感心するしかなかった。彼がキーボ君になる人とされていた理由も良く分かったし、その動きはとても俺が真似できるものではない。


 安住さんにより、パワーアップしたキーボ君に太刀打ちできるわけもなく、俺は青い皮を脱ぎ元の透明人間に戻った。


コチラの物語、鏡野悠宇様と共に作成しております。

『とある人々 in 希望が丘駅前商店街』の『帰ってきたキーボ君』で、二号から視点で描かれております。


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