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【商店街夏祭り企画】夏祭り前に……

【商店街夏祭り企画】参加作品です。

商店街の花火大会と夏祭り、その時の東明透くんの様子を描いています。

 花火大会を終えたものの。まだ商店街は夏祭りというイベントを控えている。そのために月読神社の提灯が飾られなんとも目出度い雰囲気になっていて、良い意味で熱い空気が漂っている。俺は根小山ビルヂングでのお仕事を終えて、黒猫の食材の買い出しに行く前にお隣のBlue Mallowへと立ち寄る。

カラン

 音に反応した璃青さんとお母さんがニッコリ俺を見て笑いかけてくる。心地よいクーラーの風が俺を包む。

「こんにちは! 澤山さん」

「ユキくん、こ……」「あら、ユキくん♪ こんにちは~」

 璃青さんの言葉を遮るようにお母さんが挨拶してくる。そんな母親を軽く睨み、睨まれたお母さんは肩を竦める。

「今日も暑いですね」

 二人の間に流れるなんか不思議な空気を気付かない振りをして、俺は当たり障りのない話題をする。

「だね~どうしたの?」

 璃青さんは首を傾げるように俺を見上げる。

「いえ、金魚の様子が気になりまして。元気かな? ご飯ちゃんと食べられているかなと……」

 視線を水槽の方に向けると、二匹の金魚が優雅で堂々とした様子で泳いでいてホッとする。やはり丸くてフワフワと泳ぐその姿は可愛くて癒される。そしてついその様子に見入ってしまう。

「この通り元気よ! ご飯上げるときなんてもう元気すぎるくらい!」

 同じように隣に来て水槽を除く璃青さんがそういってフフフと笑う。ご飯を食べている、コイツらもカワイイんだろうな~と思うと、璃青さんが少し羨ましくなる。

「暑かったでしょ、どうぞ!」

 お母さんが冷えた麦茶の入ったコップを差し出してくる。少しだけ立ち寄るだけのつもりだったのに、気を使わさせてしまったようだ。

「申し訳ありません。頂きます」

 お礼を言いそのコップを受けとる。

「では、ごゆっくり~」

 そう言ってお母さんはお店の奥へとお盆もって見えなくなる。ごゆっくりって、そんな長居したら邪魔なだけでは?

「今日は、金魚見に?」

 俺は、その言葉に頷いてから、ハッともう一つ大事な用事があるのを思い出した。

「いえ、それだけではなくて、商店街の夏祭りの日の事で来たんですよ」

 そして商店街から俺と璃青さんに依頼された重要な仕事がある事を説明する事にした。

 夏祭りには、月の透かしの入った和紙に願い事を書いて、それを月の形に折り月読神社に奉納するという風習がある。しかし商店街の人は忙しくて当日神社に行く暇がない。そこで代表者がその紙を集め奉納する事になっているらしい。その今年の代表者に俺と璃青さんが選ばれたのである。

「え、そんなこの商店街に来たばかりの私にそんな大役を?」

 驚く璃青さんに俺は静かに頷く。そしてニッコリと笑う。

「逆にだからなんですよ。俺と璃青さんはこの商店街に来たばかり。だからこそ商店街の皆とこれを機会に交流を深めて貰おうという皆さんの心遣いのようなんですよ」

 璃青さんも『あぁ~』と納得したように頷く。

「もちろん、その間のお店の方がウチでもフォローします」

「でも、私なんかで大丈夫かしら?」

 不安げにそういう瑠璃さんに、俺は頷き安心させるように笑う。

「俺の方が少し早めに商店街に来ていますし、町内会での仕事もしているので、璃青さんに当日皆さんを紹介できると思うのでそんな不安になる事はないですから」

 それでも戸惑っている璃青さん。

「お店の方なら、私が見ているわよ! それにこういう機会は大事にするべきでしょ! 商店街あってのこのお店でもあるのだから」

 璃青さんのお母さんが突然奥から出てきてそんな事を言ってくる。こないだも似た事いっていたように、この方なりに娘がこの商店街で立派にやっていけるように心配しているんだろう。

「璃青さんはもう、すっかりこの商店街の一員といて皆に愛されているから、楽しく挨拶するだけで終わりそうですけどね。

 瑠璃さんの事皆いつも俺と話すときに誉めてくるんですよ。『あんな素敵なお嬢さんはなかなかいない』とか『お嫁さんお勧めだよね』とか。皆璃青さんの事大好きなんですね」

 お母さんを安心させる為に本当の事言ったのだが、お母さんは何故かフフフと苦笑して、璃青さんはアワワとしてブルブルと顔を横にふる。

「そんな風に商店街の人から愛されている璃青さんの事俺も好きです」

 俺の想いが通じたのか、お母さんは嬉しそうにニカ~と笑い、璃青さんは何故か視線をあちらこちらに動かし不思議な動きをする。

「家の叔父と叔母も当日コチラのお店の事もフォローします。瑠璃さんも俺がしっかりエスコートしますから安心してくださいね」

 お母さんは俺の手を両手で熱く握ってくる。

「ユキくんがいれば、安心よ! 娘を任せたわよ!」

 そのようにお母さんに言ってもらえたのが嬉しくて俺はニッコリと笑い頷く。「任せてください!」 俺はそうハッキリと答えると、お母さんは安心したのか、ウンウンと頷きお母さんと二人でしばらく真面目な顔で見つめあってしまう。そんな俺たちを見て璃青さんは『はぁ』とため息をつく。

「一緒に商店街を回るだけなので、璃青さんそんな心配するような事ありませんから。そんな顔しないでください。何かあっても俺が助けますので」

 璃青さんに少しでも安心してもらえるようにそう告げる。璃青さんは、まだまだここに来たばかりで不安な事も多いのだろう。俺が守って助けてあげないと! 戸惑っているような璃青さんを見てそういう気持ちが沸き起こる。ようやいつもの笑みを取り戻した璃青さんに俺も少しホッとしてBlue Mallowを後にした。


コチラの作品 たかはし葵さまと二人で話し合いながら作った物語です。『Blue Mallowへようこそ〜希望が丘駅前商店街』にて同時に同じエピソードを描いていますので、そちらで璃青さん視点でもお楽しみになることができます!

そしたらも合わせてお楽しみ下さい。

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