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マスゴミはゴミ箱に

 重光幸太郎先生の婚約を祝うイカ様フェアーで盛り上った五月とはうって変わって六月の商店街は殺伐とした空気が漂っていた。商店街の住民が皆ピリピリして、鋭い視線を商店街の通りを見ている。

 こんな嫌な空気の商店街が初めてである。来たばかりの璃青さんも戸惑うようにそんな商店街を見つめている。

「重光幸太郎先生って、この商店街においては国会議員というより、昔からこの街で暮らしている仲間で家族なんだ。

 だから、マスコミが幸太郎先生の婚約の事面白おかしくこうして騒ぎ立てている事に不快感を覚えているし、幸太郎先生や沙織さんをこうして追い掛け回している事を腹立てているんです」

 Blue Mallowの店先から、通りで商店街のお客様にギラギラと我が物顔で取材している記者を見て、璃青さんは顔をしかめる。

「それにこの状況は異様ですよね……」

 俺は頷く。いくら今をときめく若手議員の幸太郎先生だとはいえ、その相手は一般人ここまで追い掛け回すのは異常である。

「何を聞かれも璃青さんは、分からないと惚ければ良いですから」

 璃青さんは頷き、そしてニコリと笑う。

「どのみち、私来たばかりで本当に何も知りませんから!」

 その明るい笑顔に俺もつられて笑ってしまう。なんかここで一緒に笑って少し気が楽になった。その後二人で他愛ない話をしてから黒猫に戻る。そこでまた鬱屈した現実を思い出す。


 陽気な澄さんはずっと眉間に皺が寄ったまま。そして杜さんは、マスコミが商店街で騒ぎだすようになってからずっとその対策に係りっきり。ずっと弁護士の矢草(やくざ)さんと、探偵の極堂(ごくどう)さんと共に何やら話し合っているようだ。

 何を話し合っているかというと無断駐車問題。現在押し掛けているTV関係者は機材がある為、雑誌や新聞関係者は活動拠点とする為と車でくる人が多い。このあたりは駅も近く観光地でもないので街自体にコインパーキングは少ない。駅前にある百貨店についているモノが一番近いだろうが安くはないし夜は使えない。

 そこでヤツラが目をつけたのがウチの駐車場。一つは重光幸太郎先生の事務所の前だけに都合良かったようだ。勝手に駐車していく。その駐車スペースは全て契約者がいるのに関わらず。勿論、杜さん所有の駐車場に勝手に車を停める事は違法行為であるが、奴らは取材という大義名分で許されると愚かにも思っているのと、それプラス分かっているのだあいつらは。私有地においての無断駐車警察は不介入で民事の問題となる。彼らが今回の件でいかに迷惑をかけても警察が出来る事は注意だけなので、のらりくらりと逃げる事が出来る。

勿論彼らに罪がまったくない訳ではない。


『契約者意外の立ち入りを固く禁じます。

 契約者以外の駐車は禁止です。

 違反者はナンバー確認の上、警察に通報し、法的な対応を取らせていただきます。』

 

という警告文を書いた看板も設置している事から、彼らのしている事は不法侵入及び営業妨害という犯罪に抵触する。しかし彼らにその罪を着せるには、土地の所有者が告訴しないといけない。民事で訴えるにしても土地所有者が車の所有者を特定した上で相手に訴訟を起こすという事になり、かなり面倒な作業が必要になる。だから大抵の被害者はフロントガラスに警告文を貼り付け終わりとする。そして彼らは今回あくまでも取材の為にこの場所にいる。という事は今だけ我慢すれば彼らはいなくなる。となるとムカついても我慢してしまうのが今までの状況だったのだろう。

 しかし杜さんはここでスルーする気がないようだ。自分が被害にあっているからでなく、重光先生や商店街の仲間を困らせてきているマスコミが許せないからだ。キッチリ証拠を固めて民事・刑事双方で争う気でいる。今までの彼らが取材でしでかしてきた事も調べ上げそこで被害を受けてきた人たちをも巻き込んで戦うつもりなのだ。

 今回のマスコミが騒ぎだしてから杜さんは通常の張り紙とか口頭注意をするとともに、そのやり取りを写真およびボイスレコーダーで記録。それに加え元々あった防犯カメラに加え、駐車場内が最近物騒という理由でしかけた盗聴器の記録といった証拠として集めたようだ。直接聞いたわけではないがリビングで話し合っている彼らの会話からなんとなく察した。

 逆に俺が今できる事は、黒猫およびビルの仕事を杜さんの分まで頑張る事だけである。バンドの大学生にも手伝ってもらって、店の方をなんとか切り盛りをしていた。


 そんな時だった携帯に安住さんから電話がかかってきたのは。

「俺だよ、俺。安住だ。一号って今日はヒマか?」

 暇という訳ではないけど、今は手が空き電話する余裕くらいはある。

「今は開店前なので手は空いてますけど、何かありましたか?」

 『そか!』と元気な声が聞こえる。何でだろうか? 嫌な予感がする。

「パトロールしないか? なんか商店街が騒がしいからさ、ここは正義の味方のキーボ君の出番だぞっと」

 出番って、何言っているのだろうか?

「いつのまにキーボ君が正義の味方になったんですか」

 まさか、マスコミ相手に大立回りする気ではないかと心配になる。

「正義の味方が嫌なら悪の手先でもいいけどな」

 この人、やはり何かやる気だ! と不安が確信に変わる。

「そういう問題じゃなくて」

 止めなければ。と言葉を続けようとすると安住さんが遮るように喋ってくる。

「とにかく準備していつもの倉庫で待ち合わせな」


 プチ


 電話の通話はそこで切れる。態と切ったのだろう。

「どうしたの?」

 澄さんが心配そうに声かけてくるので、状況を説明する。

「まあ、恭ちゃんが助け求めるなんてよっぽどよ、行ってあげて! お店は皆がいるから大丈夫」

 安住さんが助け求めに電話してきたとは思えない。でもキーボくん一号でと指名してきた事から、安住さんは二号で待機しているのだろう。となると、何か仕出かす前に、止めなきゃいけない。俺は溜め息をついて、キーボくんに着替える為に三階に向かうことにした。


 キーボくんに着替えてから、ビルの裏から駐車場に出た時、急いで来た為携帯をマナーモードにするのを忘れていた事に気が付いた。キーボくん内にある内ポケットに入れ携帯を取り出し、ふと正面を見るとそこにも憎き記者がいた。車の所に戻ってきたようでフロントガラスのワイパーの所につけられた警告文を手に取りニヤニヤ笑いソレを丸め地面に捨てる。俺は流石にムカついて彼らに近づくと、彼らはギョッとした顔になる。

「不法侵入のうえに、ゴミの投棄までされているのですか?」


 カシャッ


 毅然と言ってみたつもりだが、俺がそう言った後、キーボくん内部からシャッター音が聞こえる。うっかり持っていた携帯のカメラのシャッター押してしまっていたようだ。

 男達にもカシャッって音が聞こえたのだろう。キーボくんの目をジッと怯えたように見てくる。そこはカメラのレンズになっている訳ないのに。親指がまだシャッターボタンの上にあるようでカシャッツカシャッツと更にシャッター音をさせてしまった。男たちは慌てだし車に乗り駐車場から出ていった。よくない事をしている分かっている所に、シャッター音させながら迫ってくるゆるキャラってあまり気持ちの良いものではなかったのだろう。ヤレヤレと携帯をポケットにしまい後ろのチャックを開け放置されたままのゴミを拾い内部フックにかけてあるゴミ袋に入れる。チャックをキッチリ閉めて、気持ちを引き締め駐車場をあとにすることにした、


長くなったので二話に分けさせて頂きました。次話は20頃公開いたします♪

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