自分の中で、考えてみる。
怒り狂ってまで自分の気持ちを相手に伝えるくらいなら口から溢れ出しそうな怒りを必死に手で押さえてまで自分の中に留めておいた方がいい。
その怒りを飲み込む辛さなんて、相手にぶつけて
嫌がられる。それを目の当たりにする辛さに比べれば楽なもんだ。
自分だけが頑張ればいい。
自分だけが耐えていればいい。
それだけなんだ。たったそれだけのことで、健全な関係を築けるんだ。
簡単なことじゃないか。楽なものじゃないか。
そんな揺るがない持論でさえも、あいつは簡単に
乗り越えていく。
言いたいことをいい、やりたいことが出来、それでもって、奴は平気で人に怒りをぶつける。
なのになぜだ?
なぜあいつはうざがられない?
なぜあいつは嫌われない?
格好いいから?面白いから?スポーツ万能だから?
その訳を知ったところで、何だっていうんだ。
どうせあいつと僕は違う。
僕は僕で、あいつはあいつだからだ。
僕だから許さない。あいつだから許す。
そんなものなのさ。
分かり切っている。
わざわざグツグツと煮えたぎる鍋の中に入る奴がい
るだろうか。
煌々と燃え上がる火が、鍋から漏れるほどに燃え盛っている。
熱くて、痛くて、辛い。そんなことは分かり切っているのに、わざわざそこに入って行く奴がいるだろうか。
それでもあいつは入っている。熱さなんてものともせず、平然とした顔で入っているんだ。
みんなからすごいと称賛されている。
さすがだと称賛されている。
そんな姿を憧れている人間が、側にいるとも知らず
あいつは悠然とギャラリーに手を振っている。
そんな人になりたかった。
あいつみたいになりたかった。
だからって、あいつに負けたくないからって、
あいつみたいになりたいからって、わざわざ僕は
あそこに入って行く意味があるのだろうか。
入る必要があるのだろうか。
入ったところで、みんなはあいつみたいに、僕を
称賛してくれるのだろうか。
それでも、勇気を出して飛び込み、耐えて、耐えて、耐えた先に、その先に僕の求める世界が待っているのだろうか。
そんな保証、どこにもない。
・・・・・・だったら・・・・・・もう、いいや。