自滅への始まり
すべての風景がガラリと変わった。
嫌に周りを気にするようになった。
みんなは僕のことをどう思っているの?
みんなは僕のことをどう思っていたの?
人気者の側にいるだけの何も出来ない奴だと思っているんじゃないの?
人気者に媚びているだけの、ダサい男だと思っているんじゃないの?
そりゃ確かに寄ってくる女のほとんどは、
僕なんかのことよりも、僕がくっついている人気者
のことについての話を僕に求めてきた。
それでも僕は、女の子と話せる、女の子と話せている。
それだけで満足だった。
しかし今となってはもう、そんなものは消し去りたい体験でしかない。
女と人気者を繋ぐ、ただのパイプ役でしかなかった
自分に満足していたのは、今となっては馬鹿馬鹿しい。
そして何よりも、そんな自分が情けない。
どうせ馬鹿にしてたんだろ?
必死であいつの私生活を、女に教えている僕を、
鼻で笑ってたんだろ?
便利な奴だと、心の中で、僕を下に見てたんだろ?
分かってるよ。
もう気づいたよ。
そんな風に気軽に話しかけて来て、本当は腹の中で
大爆笑してんだろ?
僕の知らないところで勝手に、つまらねえあだ名でもつけてるんだろ?
言えよ。
コソコソしないで、面と向かって笑えよ。
コソコソしないで、面と向かって思っていることを
言えばいいじゃないか。
決して表に出すことのない怒りを、グツグツと煮えたぎらせる。
どうして表に出すことがないか。
そんなもの決まっている。
勇気がないからだ。
誰かに怒りをぶつける。
そんな勇気が僕にはないからだ。