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勇者の悩みと相談相手

 異端者だとは思っていた。


 自分はこの世界に迷い込んだよそ者で、存在そのものがバグみたいなものだと思っていた。


 レベルがカンストしているわ、自分だけシステムメニューが使えるわ、対NPC用のスキルは通じないわ、おかしな出来事ばかり体験するわ――。


 加えて、先日のレベルキャップ解放だ。元の世界の体と心、そしてこの世界の魔素と絆が混ざり合い、悪神さえも殺せる体になってしまった。


 それは自然なことなのだろうか? 許されることなのだろうか?


【警告! エラーが発生しました】


【安全性を保証出来ません。ただちに違法行為を止め――】


 あのとき聞こえた声が忘れられない。


 無機質なようで、どこか本気で止めようとしている声。


 それを無視した自分は、いったい、どうなってしまうのか。警告を無視した代償として、何かを奪われるのではないだろうか。


 罰則はあるのだろうか。違反者はどうなるのだろうか。あれは罪なのだろうか。自分は裁かれるのだろうか。


 あの日からくすぶっていたことの答えは、今、貴大の目の前にあった。


「タカヒロ君。佐山貴大君。別次元からやってきた、いるはずのない異邦人」


「君は先日、禁忌を破った。人の身でありながら、あろうことか神の領域に踏み込んだ」


「【ピリオド・エッジ】。終わらせる力。終止符を打つ刃」


「天上に住まう神々は、君のその力を非常に危険視している」


「その力は危険すぎるんだ」


「どんなものでも……文字通り、どんなものでも強制的に削除するその力は」


「容易に世界の均衡を崩し得る」


「危険すぎる力なんだ」


 威嚇するでもなく、侮蔑するでもなく、淡々と告げるアストレア。


 彼女の言葉こそ、貴大が恐れていたものだった。


(確かに……)


 あまりにも大それた力だ。ただでさえ強大な悪神、その域を超えた存在を、ただの一突きで葬ってしまう。


 仮にも神の名を持つような相手を消してしまうのだ。しかも、それを受けた相手は、もう二度と復活することはない。


 どう考えても、人の手には余る力だ。勇者でもなく、聖人でもない自分が、果たしてそのようなものを持っていていいのだろうか。


 良くなかったのだ。神々は貴大を危険視し、勇者という飛び切りの刺客を派遣した。そしてその刺客は貴大に剣を向け、剣呑な目で話を続けている。


「たとえば君がカッとなって、【ピリオド・エッジ】で人を刺したとしよう。そうするとその魂は消滅し、輪廻の輪に乗ることもない」


「そんなこと……!」


「しないのかな? 本当に? 今ここで、僕が君を殺すと言っても?」


「…………!」


 貴大は答えられなかった。


 転移魔法を自在に駆使し、強大な力で敵を斬り殺す勇者を相手取るには――。


【ピリオド・エッジ】しかない。【ピリオド・エッジ】で消し去らなければ、殺されてしまうのは自分の方だ。レイドボスを雑魚のごとく扱う勇者が相手では、ちょっとやそっとの技では容易く破られてしまうだろう。彼女に通用するとしたら、神さえ殺す即死技しかない。


 言葉に詰まる貴大に、アストレアは冷淡に告げる。


「使わないかもしれない。でも、使うかもしれない。追いつめられた人間は何をするか分からない。僕だって、殺されそうになったら勇者の力を咄嗟に振るう」


「だから危険なんだ。持っているだけで、もうそれは危ないことなんだ。使うかもしれないという仮定だけで、危険視するに足る力なんだ」


「分かるだろう? 分かるはずだ。自分の力がどれほど危険かなんて、本人が一番知っている」


「そうだろう?」


「なあ、貴大君」


 返す言葉もなかった。


 だからと言って、むざむざ殺されるわけにもいかなかった。


 処刑者としての面を見せているアストレア。彼女を前にして、どうこの場を切り抜ければいいのか。どうすればこの場を無事に収め、グランフェリアに帰ることができるのか。


 貴大は必死に考えた。アストレアに言い返すことはできなかったが、それでも必死に、他の道を探ろうとした。


 しかし、アストレアは冷たい目で貴大を見て、剣を持つ手を動かしたかと思うと――。


「…………ふう」


「…………え?」


 カチン、と小さな音を立て、聖剣を鞘の内に納めた。


「………………」


 意図が分からなかった。


 こんなところまで連れ出して、処罰対象を前に剣を納める。そこにはどのような意図があるのだろうか。


 まさか居合いで真っ二つ、なんてことはあるまい。すでに勇者は剣の柄から手を離し、手近な木に寄りかかっている。


「…………えっと」


 これは許されたということだろうか。それとも見逃してやるとでも?


 それならそうと言葉があってもいいはずだが、それらしい素振りもない。勇者はただ憂鬱そうにため息をつき、足元の枯葉を小さく蹴飛ばしている。


(ど、どういうことなの?)


 今日の貴大は分からないことばかりだ。


 レイドボスが瞬殺されたかと思ったら、勇者に剣を突きつけられて、かと思えば見向きもされずに放置されている。


 勇者は自分を殺しに来たのではなかったのか? 【ピリオド・エッジ】という大それた力を身につけた自分を、処罰しにやってきたのではなかったのか。


 それなのに勇者は冴えない顔で、唇を尖らせたかと思うと――。


「あ~、やだやだやだやだ!」


「っ!?」


 ぶんぶんと首を振るアストレア。


 彼女は頭を抱えて座り込んだかと思うと、ごろりと横になって地面をほじくり始めた。


「いやだな~、あ~、いやだ。こんなことしたくないなあ」


「ええ……?」


「考えてもみてみなよ? 君を殺したら、余計な恨みを買うんだよ? 君にはもちろん恨まれるだろうし、あの龍も僕を許さないだろうし、聖女だって終生僕を恨むだろう。あの可愛いユミエルちゃんにも恨まれるかもしれない。フェルディナン家のお嬢さんだって僕を敵視するだろう。それに、ほら、あのカオルちゃん? あんなかわいこちゃんにもキツイ目で見られるわけだよ……」


 森に積もった腐葉土をほじほじしながら、ぐだぐだと気の抜けた声を漏らす勇者様。


 そこには殺気など微塵もなく、むしろやる気のなさだとか、諦観だとかが漂っていて――。


「なんなの……?」


 貴大が困惑するのも無理からぬ話だった。


 切った張ったの展開になることを覚悟していたのに、これはいったい何なのだろう。まるで意味が分からず、貴大はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


「貴大くぅ~ん」


「うわぁ!?」


 ぼけっと突っ立っている貴大に向かって、勇者が毛虫のように這ってきた。


 貴大の足に巻きついた勇者は、気の抜けた声を上げて情けない顔を向ける。


「もうこれで終わりってことでいいかなぁ? 貴大君は反省して、神の威光を恐れまくって、『ヒィ~! 身の丈を知ったでヤンス~!』って言ったってことにして」


「いや、なんでだよ!」


「あ、語尾はゲスの方が良かった?」


「どっからツッコめばいいんだよ!!」


 凛とした勇者の姿はどこへやら、だらけたアストレアを相手に、貴大はただただ叫ぶことしかできなかった。






「で、実はそんなに勇者の仕事に乗り気じゃない、と」


 マインゴーレム(だったもの)の麓で、貴大とアストレアはお茶を飲んでいた。


「東に行っては悪党を倒し、西に行っては魔物を倒し……って生活に飽き飽きしてね」


「はあ」


「変わり映えのしない生活に、なんだか疲れちゃってさ」


 と、うんざりした顔でお茶をすすっているのはアストレアだ。


 先ほどまで発していた殺気はどこへやら、彼女は疲れきった顔でため息をついている。


「十歳のときに勇者に選ばれ、がむしゃらに働き続けた十年間。二十歳になってから振り返ってみると、僕の人生、なんだったのかなあって」


「休みとかなかったのか?」


「あったよ。週に一度の安息日は勇者もお休み。だけど勇者ってだけで色眼鏡で見られるものだから、オンオフの切り替えなんてできなかったよ」


「あ~、そうなるのか」


「うん。僕だって遊んだり、恋愛したりしたかったのに、みんな僕を勇者として見るだろ? だから、僕の方も勇者を演じるしかなくて、そうするとますます遊びや色恋とは遠ざかって……」


「難儀だなあ……」


 慰めの声をかけながら、空になったコップにお茶を注ぐ貴大。


 彼と勇者の間には、もはや剣呑な気配はなく、どちらかと言えば和やかな空気が流れていた。


「仕事そのものもそうさ。剣を握れば全戦全勝。苦戦もなければ冒険もない。ただ作業みたいなもので、それを全国巡りながらするんだからたまらないよ」


「考えただけでも嫌だな」


「でしょ? これなら同じバランサーでも、魔王の方がよっぽどいいよ」


「魔王? 魔王もバランサーってやつなのか?」


「うん。同じ仕事をしてるんだけど、あっちは家族経営なんだ」


「家族経営」


「おまけにたくさん部下もいる。アットホームな職場なんだって」


「ア、アットホーム」


 職務怠慢な勇者と、和気藹々な魔王軍。


 わずか一時間足らずで常識が覆り、貴大はなんだか頭がくらくらするようだった。


「なんというか、その……大変なんだなあ」


「分かってくれて嬉しいよ」


 疲れたように笑うアストレア。


 よく見ればその顔には疲労がにじんでいて、笑みも何だか作り物のようだった。


「いや、でもさ。よかったのか? 俺を見逃して」


「うん?」


「だからさ。その、仕事、なんだろ? それを放棄してよかったのか?」


「いいよぉ、別に~」


 アストレアはひらひらと手を振って、


「今回のクエストは、『佐山貴大と接触せよ。不穏な素振りを見せればこれを排除せよ』だったからね。会って、話した時点で、もう完了でいいかなって」


「なんだそりゃ! じゃあ、なんでわざわざ、こんなところまで連れ出して……」


「そりゃあ、僕が君のファンだからさ。こうしてもう少し、話をしていたかったのさ」


「あれ、演技じゃなかったのか?」


「とんでもない。ファンだって部分は本当さ。これでも感謝しているんだよ? 君のおかげで、嫌な仕事をせずに済んだからね」


「え……」


 不穏な響きに、言葉を失う貴大。


 彼に向かって、勇者アストレアはぽつぽつと語った。


「危ないところだったんだ。混沌龍の子が何人か殺していたら、その時点で僕は彼女を討たなければいけなかった。人工聖女だってそうさ。あまり勝手が過ぎるようなら、成敗・・する必要があった」


「…………」


「だって、ほら。僕は人間寄りのバランサーだから。人の暮らしが脅かされたら、そりゃもう、有無を言わさず原因を断たなくちゃいけない」


 もしもの話ではない。


 少し道が違っていれば、必ず彼女はそうしていたはずだ。そしてそれは、彼女が過去何度も行ってきたことだった。


「もちろん、そうしなければいけないってことは分かるよ。勇者はそのために存在するのだから、悪者を退治しない方がどうかしてる。だけどねえ」


 アストレアはほうっと息を吐き、


「気が進まないんだよ。近ごろは特にそうだ。相手が純粋な悪だったり、知性の欠片もない魔物だったり、そういう時はいいんだけどね。それ以外だと……躊躇っちゃうんだ」


 コップを両手で握りながら、暗くうつむくアストレア。


 その顔には、勇者だからこその苦悩、辛さがにじんでいるように見えた。


「僕の人生、あと何十年続くんだろう。僕はあと何回、勇者としての仕事をこなすんだろう。どれだけの命を手にかけるんだろう。どれほどの恨みを買うんだろう。二十歳という節目を迎え、そんなことばかり考えるようになった」


 勇者アストレアの人知れない悩み。


 勇者だからこそ感じる、勇者ならではの悩み事。


 それは自問自答しても解消することはなく、むしろ、雪だるまのように膨らんでいくばかりだった。


「できることなら、勇者なんて辞めてしまいたい。勇者を止めて、僕は僕になって、人間としての人生を送りたい」


「だけど」


「それは」


「わがままっていうものなんだろうなあ……」


 暗く陰鬱とした顔。


 その顔には諦めしかなく、希望や夢といったものはまったく感じられなかった。


(なるほど、な)


 薄々そうではないかと思っていた。


 勇者という役職は、とんでもない貧乏くじだと貴大は感じていた。


 人を助けて当たり前、世界を救って当たり前。王に請われ、神に命じられるままに魔物を殺し、時には悪党に手をかける。それで各地を行ったり来たりだなんて、まるで便利屋のようじゃないか。それも汚れ事にも手を染める、ろくでもない類の便利屋だ。


 子どものうちは正義のためだと信じられたけど、大人になって、段々と考えが変わってきたのだろう。少なくともアストレアは、勇者という仕事に熱意を失っているようだった。 


(でも)


 それならば、


「辞めればいいんじゃねえか?」


「………………え?」


「いや、だから、勇者辞めれば? そんなに嫌ならさ」


 そんなに思い悩んでいるのなら、いっそ辞めてしまえばいい。勇者を辞めて、別の道を探せばいいのではあるまいか。


 貴大はそう言っているのだが――アストレアは笑おうとして失敗し、何やら困った顔をして言い返した。


「そ、そんなの。できるわけないだろ? 勇者を辞めるだなんて、そんな」


「前例はないのか?」


「ないよ! そんなの聞いたこともない!」


「じゃあ、神様とやらに聞いたことはあるのか?」


「そ……それもないけど……でも!」


「一回聞いてみたら?」


 貴大は飄々とした様子でそう言った。


「俺も昔は週休一日とかとんでもねえ、もっと休みが欲しい、もっと休みが欲しいとか言ってたんだけどさ。なんだかんだで週休二日になったんだよ。だから、ダメ元でさ、聞くだけ聞いてみたらいいんじゃねえか?」


「いや、だけど……」


 口ごもるアストレア。


 それをしばらく見ていた貴大は、水筒やらコップやらをしまって立ち上がった。


「勇者と何でも屋じゃ比べられないかもしれないけど」


 彼はパンパンとズボンをはたき、


「一回、試してみたらいいと思うぞ」


 それだけ言い残し、森の出口へと去っていった。


 残されたアストレアは、そこからずっと、動けずにいて――。






【勇者よ。勇者アストレアよ。報告は以上ですか?】


「はい」


【分かりました。しかし、彼に関しては今後も注意をすることにしましょう】


 地中海に浮かぶ島、神域に繋がる祭壇の前で、アストレアは神と交信していた。


【イースィンドの件はどうなりましたか?】


「そちらも滞りなく。バルトロアとの協議も順調に進んでいるようです」


【それは結構】


 祭壇で膝を突き、祈りを捧げるアストレア。


 彼女に声だけで語りかけ、神はその姿を見せようとしない。


 それが逆に緊張を煽った。顔が見えないからこそ、相手の反応が怖かった。


 これから言うことで、神はどのような反応を見せるだろうか。それを予想しただけで、アストレアはのどが渇いていくのを感じた。


【では、今回の報告は以上ですね。引き続き、頼みま】


「す、すみません!」


 言おう言おうと思って、結局、最後になってしまった。


 被せ気味に声を上げたアストレアに、神は怪訝そうな声で問いかける。


【どうしたのですか、勇者よ。まだ何か、伝えることがあるのですか?】


「ええ、まあ」


【分かりました。では、今しばらく交信を続けましょう】


 さあ、という促しの声と共に、薄れかけていた光が戻ってきた。


 天から降り注ぐ光に照らされ、アストレアはますます体を強張らせた。


(やっぱり止めよう)


 勇者を辞めるだなんてどうかしている。


 これは人間界の平和を守るため、とても重要なお役目だ。


 それを一個人の感情で、嫌だとか、辞めてしまいたいだとか――。


 どうかしていたんだ。あの青年に惑わされ、勇者としての自分を見失っていた。


(でも)


 ここで言えなかったら一生言えない。


 そして、そのことを終生悔やむことになる。


 そのことが分かっていたからこそ、アストレアは悩みに悩み、遂には口を閉ざし切れず――。


「ゆ、勇者を」


【はい】


「勇者を、辞めさせてください!」


 言った。


 言ってしまった。


 畏れ多くも神に向かって、勇者を辞めさせろと言い放った。


(言うんじゃなかった……!)


 後悔はすぐに襲ってきた。


 心臓は強く脈打ち、手足の震えが止まらない。頭には走馬灯のようにこれまでの人生が浮かび、解放感と罪悪感とで心がどうにかなりそうだった。


 当然、顔など上げられるわけがない。うつむいて返事を待つ勇者は、まるで処刑台に載せられた罪人のようだった。あまりに不敬な彼女には、きっと罰が下される。


 アストレアはそれを甘んじて受けなければならない。少なくとも彼女はそう考えていたし、そうなるだろうと覚悟はもう決めていた。


 場は重い沈黙が支配している。天から差す光は依然として煌々と輝き、それはかえって冷たく感じるほどだった。


 そして、一分、二分。しばしの時が流れ――。


 断罪のときは来た。


【……勇者よ】


「……はい」


【勇者アストレアよ】


「はい」


【時間をください】


「はい…………はい?」


【後任が決まるまで、半年ほど時間をください】


「は…………」


【急には辞められないのです。分かりますね、勇者よ】


「……………………」


 アストレアは言葉もなかった。


 あの口ぶりからすると、どうも引退自体は許可されたらしい。


 だけど、どうもすんなりといきすぎて――逆に違和感を覚えるというか。


 そもそも、あの事務的な口調はなんなのか。後任って。半年という期限がやたらリアルだ。


 つまり、要するに、なんというか――!


「……ぷっ」


「あはっ、あははっ!」


「な、なんだよっ、もーーーーっ!」


 あれだけ悩んでいた自分が馬鹿らしく思えてきた。


 交信が終わってから、勇者アストレアは祭壇のある島で笑い転げていた。


「はーーーーーーー……っ!」


 これまで溜め込んだものを吐き出すかのように、大きな大きなため息をつくアストレア。


 彼女は丘の斜面で大の字になると、また軽く笑って、空へと右手を突き出した。


「さあ、どうしようかな」


 アストレアは未来に思いを馳せた。


 これからのことを考えるのが楽しくてたまらなかった。


「残ってる仕事を片づけて、後任の子には色々教えて、世話になった人には挨拶に行って……」


 指折り数えるスケジュール。


 それを青空に思い描きながら、アストレアはまた笑ってこう言った。


「そうだ」


「貴大君とも、もう一度会ってみたいな」


 長い冬を越えて、季節は春、地中海。


 丘に吹く潮風からは、ほんの少し、花の香りが感じられた。

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