緑の甘い涙
父は、いつもロボットと暮らしていた。父は、ロボットが好きだった。ロボットの修理屋だった。
私達は、極寒の地にいた。外出すれば、氷点下20度の時もあった。
ロボットの冷却水には、緑の不凍液が使われていた。
父が歩けば、ロボットも歩く。そんな関係だった。
そんな父が好きなことは、サウナに入ることだった。父がサウナに入ると、ロボットも当然のように入った。入ったはいいが、ロボットは寒冷地仕様だ。すぐロボットは、壊れた。
「無茶しやがって」
父は、修理した後改良して、どんなロボットにも耐えられるロボットにした。
2人は、サウナに入って我慢くらべをしたこともあった。
父は、亡くなってしまった。突然のことだった。ロボットは、死んだ父を理解できず、棺の中にまで入ろうとした。
私は、急いで、ロボットを緊急停止させた。
父が亡くなってから、半年後、ロボットを起動させた。ロボットは、毎日の日課をして、父がいるかのように、振る舞った。だから、私は、ロボットの行動を修正して、再起動させた。
しかし、なぜか、意地でもサウナに入った。
ロボットは、サウナに入るロボットとして有名になった。
記者にサウナに入る理由を訊かれて、父と我慢くらべしていると返答した。
私は、頭を抱えた。私がしたロボットの緊急停止を後悔した。
ロボットにオーバーホールの時期が来て、私はサウナ好きのロボットを処分することに決めた。
ロボットの電源を落とす日が来た。
「今まで、ありがとう」
すると、ロボットの立っている床は濡れた。ロボットの顔を見ると、悲しそうに涙していた。
白いウエスで拭くと、それは、緑に滲んだ。ほのかに甘い香りもした。
「バイバイ」
と、ロボットは一言。
電源は切れた。ロボットは、動かなくなった。
「バイバイは、こっちだよ」
とつぶやき、頬にキスした。口には、甘さと悲しさが広がった。
はじめて、本当に父がいなくなった。そう思った。
後日、父の墓にロボットの部品を埋めた。その帰り道、いつものように、体を暖めるためにサウナに入った。
サウナでは、父とロボットの声が楽しそうに響き渡っていたのだった。




