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緑の甘い涙

作者: センカク
掲載日:2026/04/26

 父は、いつもロボットと暮らしていた。父は、ロボットが好きだった。ロボットの修理屋だった。

 私達は、極寒の地にいた。外出すれば、氷点下20度の時もあった。

 ロボットの冷却水には、緑の不凍液が使われていた。

 父が歩けば、ロボットも歩く。そんな関係だった。

 そんな父が好きなことは、サウナに入ることだった。父がサウナに入ると、ロボットも当然のように入った。入ったはいいが、ロボットは寒冷地仕様だ。すぐロボットは、壊れた。

「無茶しやがって」

 父は、修理した後改良して、どんなロボットにも耐えられるロボットにした。

 2人は、サウナに入って我慢くらべをしたこともあった。

 父は、亡くなってしまった。突然のことだった。ロボットは、死んだ父を理解できず、棺の中にまで入ろうとした。

 私は、急いで、ロボットを緊急停止させた。

 父が亡くなってから、半年後、ロボットを起動させた。ロボットは、毎日の日課をして、父がいるかのように、振る舞った。だから、私は、ロボットの行動を修正して、再起動させた。

 しかし、なぜか、意地でもサウナに入った。

 ロボットは、サウナに入るロボットとして有名になった。

 記者にサウナに入る理由を訊かれて、父と我慢くらべしていると返答した。

 私は、頭を抱えた。私がしたロボットの緊急停止を後悔した。

 ロボットにオーバーホールの時期が来て、私はサウナ好きのロボットを処分することに決めた。

 ロボットの電源を落とす日が来た。

「今まで、ありがとう」

すると、ロボットの立っている床は濡れた。ロボットの顔を見ると、悲しそうに涙していた。

 白いウエスで拭くと、それは、緑に滲んだ。ほのかに甘い香りもした。

「バイバイ」

と、ロボットは一言。

電源は切れた。ロボットは、動かなくなった。

「バイバイは、こっちだよ」

とつぶやき、頬にキスした。口には、甘さと悲しさが広がった。

 はじめて、本当に父がいなくなった。そう思った。

 後日、父の墓にロボットの部品を埋めた。その帰り道、いつものように、体を暖めるためにサウナに入った。

 サウナでは、父とロボットの声が楽しそうに響き渡っていたのだった。

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