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父親からの贈り物

「オスカー、また読書をしていたの?随分と読書家になったのね。ご飯の時間よ」



──転生してから二か月が過ぎようとしていた。

外は相変らず雪がシンシンと振っていてリハビリ中の体で外出はまだ難しそうだ。

それでもここ二か月で色々な事がわかってきた。


まずはこの肉体の前の住人の名前だ。オスカー・イシャウッド、年齢は20歳

成人はしているが婚姻歴無し、定職には就かず両親の仕事を手伝っていたらしい。

母親はハンナ・イシャウッド、父がマーヴィン・イシャウッドともに42歳

父親のマーヴィンは一応貴族だった。


オスカーはまめな人物だったらしく日記を毎日つけていたのでこの世界の事を

知るには随分と役に立った。


30年前、百年戦争と呼ばれる世界規模の大戦争でこの世界の大半は戦火に焼かれ、

魔導災害と呼ばれる毒によって大地は穢されたとの事だ。

その毒は今でもこの大陸に色濃く残っていて、農作物はほとんど育たない環境

みたいで食料を確保するには、安全かどうかもわからないような野生動物や

魚介類、きのこなんかを獲ってやりくりしているらしい。

お陰で人口は極端に減少し、国々は瓦解して今では小規模なコミュニティが

形成されるに至った。


マーヴィンはどうやら地方領主だったらしいが、戦争の影響で所有していた

屋敷は燃えてしまい領民も散り散りに。

今住んでいる家は残った廃材をかき集め彼自身が建てたものらしい。

だから彼は貴族、領主と言っても今では土地はあるが名ばかりのものに

なってしまった・・・ここまでがオスカーの日記に断片的に記されたものを

総合的に判断したこの世界の状況だ。


俺は正直元々が農家だったしそんなに頭も良くなかったので世界の歴史に

あまり興味はなかったのだが、元々の器の持ち主であるオスカーの影響

なのか口調や言動、記憶などに影響を受けているらしく本を読んだりする

ことが苦では無くなっていた。

まあリハビリ以外は出来ることも無いので退屈という事もあったが・・・。


「ごめんなさいね、今日はスープしかないの」

「いや、大丈夫。美味しいよ」


”今日は”と言っているが週に3回以上はスープだ。

食事は1日2回だけ。これではリハビリをしても身体は強くならない。

圧倒的にたんぱく質が足りない。

まずは早くこの食生活を改善しないとな・・・。その為にも・・・。


「父さん、今日はちょっとお願いがあるんだ」

「ん?どうした?オスカーがお願いなんて珍しいな。言ってごらん」

俺のお願いに両親は一旦持っていたスプーンを置いてニコリと微笑んでくれる。


「春になったら畑を使わせて欲しいんだ」

「畑を?・・・オスカー、判ってると思うが畑は父さんがいくら手を掛けても

何も収穫できないどころか芽すら出てこなかったんだ。きっとあの戦争の毒気が

まだ土に残っているせいだと思う」


「わかっているよ。でもちょっと色々試してみたい事があるんだ。

頼むよ父さん。

迷惑はかけないようにするし、これまで通り仕事の手伝いはする」


二人は顔を見合わせて困ったような複雑そうな表情をする。

まあこの反応は正直予想はしていた。

オスカーの日記にマーヴィンは作物を作る事に関してかなり苦労していた

みたいだ。何年も試行錯誤していた事が綴られていた。

そしてやがて諦め、今は漁に出たり猪や兎を狩ったり、時には街に出て

モンスター討伐に参加したりしてわずかな糧を得ているらしいから。


「わかったお前の好きにやってみなさい。ただしまずはこの領地の東端に

使ってない畑と小さい家がある。春からはそこに住んで一人で生活するんだ」


「!?・・・あなた?オスカーはまだ身体が本調子ではないのよ?いきなり

一人でなんて・・・」

「オスカーももう子供でない。体もしっかりリハビリしていれば春までには

回復するとミルコ医師も言っていたじゃあないか」

「だからって・・・」

「いや、いいんだ母さん。俺やってみるよ、きっと畑を再生して作物を育てて

みせる。ありがとう父さん」


心配したハンナは・・・いやこの生活に慣れる為にも母さんと呼ぶようにしよう。

父さんの意見に反対したが、これは俺にとってはチャンスだ。

閻魔様からもらった権能を人目を気にすることなく試す事ができる。

母さんは色々言いたい事はありそうだったが、父さんの説得に最期は渋々了承した。


「何かあれば家に戻ってくるのよオスカー。私達は家族なんだから助け合わないと」

「大丈夫だよ、兄さん達だって俺と同じ歳で独り立ちしていたろう?」

「でも・・・・」

「そうだ、オスカー。もし農業に興味があるなら、私から渡しておくものがある」


父さんは話を変えようとしたのかはわからないが、椅子を立つと自分の部屋に行き

本を2冊と丸めた紙を持ってきた。

その本を受け取って見ると、一冊は「植物図鑑」もう一冊には「農書」という

タイトルの本だった。それにもう一つは地図か。


「農耕を始めたいなら役に立つだろう。春までにそれを読んでおきなさい」

「ありがとうございます。父さん」


これは良い本を貰った。

元の世界と同じ植生ではないだろうから、こちらの世界の作物を知る上で

大いに役立つだろう。さっそく部屋に戻って読むことにしよう。


──それから俺はリハビリと貰った本の知識を頭に叩き込みながら春を待った。

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