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神の御使い

「何だあれ?・・・畑が光っている?月明かりって訳ではなさそうだな・・・」



──30分程前、皆が寝静まった深夜


俺はその日ベッドの横にある窓から差し込む月明かりで目が醒めた。

何だか目が急に冴えてしまってベッドから起き上がり夜風に当たる事にした。

上着を羽織って外に出てみたもののまだ春の夜はひんやりとしていて

ブルリと軽く身震いする。

空を見上げれば真っ白に光り輝く大きな満月に満天の星空。

空気が澄んでいて何だか星に手が届きそうなそんな夜だった。


今日は疲れたけど精一杯やったという満足感があった。

白い息を吐きながら今日頑張った畑をふと見ると不自然に淡く光っていた。

何だか導かれるように畑の方に歩いて行くと、やはり淡く光っている。

一体なんだろうこれは?もしかしてまだ夢でもみているんだろうか?


そう思っていると__その光がどんどん明るさを増していく。

驚いてその場に立ち尽くしていると、光は空中で一か所に集まり・・・・

パアっと周囲を照らすように瞬いたと思ったら目の前に不思議な生物がいた。


いや、これは生物なのか?妙に神々しい雰囲気がある。

何だか猫の様な狐の様な見た事の無い形容のしがたい見た目だが羽が生えており

羽ばたいている訳でも無いのに空中に静止している。


「何なんだこれは?もしかして狐でもなかされているじゃろうか?」

驚きすぎて思わず爺さん口調がまたでてしまった。

そうしてその何かをじっと見ていると、目を瞑っていたそいつがゆっくりと

その金色に光る瞳を開けた。


「やあ孫六爺さん。いや今はオスカーという名前だったかな?初めまして」

「しゃ・・・喋った?」

「そりゃあ喋るよ。精霊だもん」


精霊?西洋のおとぎ話なんかに出てくるあれか?

この世界ではそんなものが実在しているんだろうか?いやまだ寝ぼけている

可能性も否定できないがその割には妙に現実感がある。

そいつは空中をふわふわ飛びながら俺の周りをクルクルと歩きながら

説明を始めた。


「僕は豊穣神『ウカノミタマノカミ』様より遣わされた精霊トトノエだよ。

今日君がこの畑を耕してくれたお陰で僕はようやく解放されたんだ」

「豊穣神・・・・?神様の使い?」


「そうそう。君は権能を持っているでしょう?恐らく死後管理局のサカヅキ

から異界渡りの特典として付与されたはずさ」

「もしかして閻魔様から貰った『五穀豊穣』の権能の事か?」


「正解!・・・実はその権能を持つ者は畑を耕したり作物を育てたり農耕に

関する事に従事すると君の力はどんどん解放されていくんだ。

今日君が畑を耕した事により力のひとつが解放され僕が召還されたってわけ」


そうだったのか。閻魔様はそんな説明一切せずにこの世界に飛ばしてきたので

貰ったはいいがそんな能力だとは知らなかった。

それにこの精霊っちゅう奴はどうも前世の俺の事まで知っているらしいな。

良い機会だ。色々聞きたい事があったんだ。


「ええっとトトノエだっけ?色々聞きたい事があるんだが聞いてもいいかね?」

「ああ、もちろん。今の僕はまだ解放されたばかりで質問に答える事くらい

しかできないからね」


「よし、じゃあ最初の質問だ。この体の”前の持ち主”オスカー・イシャウッドは

どうなったんだ?俺がこの体に憑依したのはいいが、そこがずっと気になっていた」


そう、この世界にオスカーとして転生?した時から気になっていた。

赤子として転生したり前世の若い頃の姿で転生するのかと思っていたら、

そのどちらでもなく、元々の持ち主がいる体に俺が入れ替わっていた。

じゃあ元々のオスカーという人物の魂?心、精神はどこに行っちまったんだ?

それが心の中でずっと引っかかっていた。


「ああ、そんな事か。オスカー・イシャウッドは元々寿命を全うしていたのさ。

彼の運命は馬車に轢かれて本来息を引き取って終わるはずだった。

それを息を引き取る瞬間に君の魂と彼の魂を入れ替えサカヅキが体を修復し

今の君になったというところだろうね」


「そんな事が・・・・。でも何だか罪悪感を感じるのぅ」


「うーん、考えようによっては若くして息子を失う事になった両親からすれば

君は見かけ上オスカーとして元気に生きている訳だし、悲しむ人が減ったと

思えばいいんじゃない?」


確かに考えようによってはそうなのかもしれないがそう簡単に割り切れる

ものではない。何も知らない彼の両親とオスカーの振りをして話を合わせるのは

心苦しかったし罪悪感があった。

せめて彼の記憶がこの体に残っていれば救われるんだが、記憶の残滓のような

朧げな思い出しか残っていなかったのだ。


「まあいい。じゃあ二つ目の質問だ。俺の持つ権能を使えばこの世界でも本当に

作物が育つと思うか?・・・その穢れってのが良くわからなくてな」


「結論から言うと出来る。君が鍬で土を耕せば権能の力で穢れを浄化することが

出来るんだ。だから今日みたいに君がいたって普通の農作業を進めて行けば

いいと思うよ」


何だか閻魔様もそんなこと言っていたような気がするな・・・。

農家として気ままに生きればいいとか何とか。

つまりこれはそういう事か?まあ言われなくても元農家の俺にはそれくらい

しか出来ないんだよな。


しかしこの精霊・・・助かるなぁずっと考えていた疑問に答えが出た。

それだけでも前向きに考えることが出来そうだ。

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