『覚醒』
今日は天気が良く、陽光が眩しい。気温も普段より快適で、春でも秋でもないような感じだ。
家を出た瞬間、150元を拾った。周りに人はいない。小学校一年生のとき、先生から「道でお金を拾ったら警察に届ける、良い子になろう」と教えられたことを思い出す。しかし、今の世の中、誰が自ら警察にお金を届けるだろうか。
大抵の場合、拾った人のものになる。だが、運が良すぎる。心の中は喜びで満ちていた。
200元あれば、スーパーでお菓子やおもちゃをたくさん買える。スーパーに着くと、棚には美味しそうなお菓子と綺麗なおもちゃが並んでいて、全部欲しくなる。豪華なトランスフォーマーは200元。もし買ったらお菓子は買えない。お菓子の値段がもう少し安ければ……残念ながら値下げはされていなかった。結局、大袋のポテチ2袋、チョコレートバー4箱、カップ麺1個を買った。
スーパーを出ると、胸の奥に理由のわからない恐怖が襲う。夜更かしでゲームをして疲れているのだろうか。人通りの少ない場所で少し座って落ち着こうと思った。軽く休んでから帰ろうと思った矢先、目がかゆくなった。ゆっくり歩きながら目をこする。
目をこすった後、突然、見知らぬ世界に召喚された。
目の前の世界は、空が青く、地面はコンクリートではなく白い板で覆われている。屋根は瓦屋根が多く、平屋は少ない。周囲は露店で賑わい、通りも繁華だ。夢なのか現実なのか、わからない。しかし頬をつねると痛みがあり、スーパーで買ったお菓子も持ってきていた。ここは一体どこだ?
通りの人々は私を異様な目で見ている。頭が大きいからだろうか。私は中国の小さな県の出身で、裕福でも貧乏でもない。生まれたとき、「Hydrocephalus」の手術を受けている。両親は私をとても可愛がってくれたが、頭が大きいせいで学校で先生や同級生から差別やいじめを受けた。小学校では父に授業中に私のことを話され、クラスで面子を失った。勉強に集中できず、成績は散々だった。
中学では成績が悪すぎて、担任から中専進学や留年を勧められ、私は中専へ進学した。どちらにしても結果は同じだった。努力しても褒められず、批判される日々。勉強も宿題も興味が持てなかった。中専でも差別や排除は変わらず、両親は健康で幸せに生きてほしいと願うだけだった。
夏休み、高熱を出した私を母は町の大きな病院に連れて行った。帰り道、交通事故に遭い、母は入院。母が入院中、私は毎日学校の学童に通った。週末には父と一緒に母を見舞い、母の世話は加害者が行った。19年間の人生は決して平坦ではなかった。
私の身長は高く、卵型の顔、大きな頭、黒髪・黒瞳、薄青のパーカーと黒いカジュアルパンツを着ている。体型は標準で、家ではダンベルで鍛えている。目はどこかぼんやりしていて、典型的なオタク少年。通りでは一番背が高く、周囲の人とは髪や服の色が違う。
通りを歩くと、黒い風衣で全身を包んだ女性や、奇妙な二頭のトカゲが引く馬車が通り過ぎる。トカゲは青黒い鱗に覆われ、陽光で青紫色に光る。車輪には古代の文字が刻まれ、回転すると地面に銀色の痕跡を残す。
恐怖で思わずスマホを取り出し、両親に電話をかけるが5回も失敗。通信は使えず、焦燥感が募る。通りの人に道を聞きたいが、言葉が通じるか不安で尋ねられない。家では両親に守られていたが、見知らぬ世界に来てしまい、悪人に会うのが怖い。そのとき、通りに二人の騎士が現れた。銀黒の鎧をまとい、厚いマントが風に揺れる。剣の鞘には古代文字が刻まれ、顔は影に隠れ、冷たい瞳だけが見える。手には羊皮紙が数枚あり、掲示板に貼られていた。
勇気を振り絞り、私は前の騎士に声をかける:
『すみません!ここはどこですか?』
騎士は答えた:
『ここはユノルレイ王国だ。我々は刺客を追っている。多くの人を殺した者だ。見かけたら王国守衛に知らせるように。』
言葉が通じる! ユノルレイ王国? 街には刺客や二頭トカゲ、騎士がいる。ここは……異世界かもしれない。
私は胸を張って敬礼する:
『分かりました。見かけたらすぐに知らせます』
すると後ろから追加の騎士が現れ、急いで南方向へ駆けていく。掲示板を見ると、賞金首「ソフィア・テラノ」の情報が記されていた。100,000ユーンの懸賞金。ユーンはこの国の通貨らしい。
その時、背後で小さな女の子の泣き声が聞こえた。短髪で青い髪、金色の瞳、ピンクのミニスカートに白い靴下、ロリータ風の靴を履いた少女。迷子のようだ。彼女を無視できず、助けることにした。
『泣かないで、小さな妹ちゃん。家までの道を探してあげる』
少女は私の手を取り、信頼を示す。初めて女の子の手を握る瞬間、顔が赤くなる。名前を聞こうとしたが、少女は答えず、先に進む。道中、赤い目の白いウサギを見かけ、ポテチを与えると、機械的な声で「肢…解…活…謝」と鳴く。
やがて薄暗い路地に到着。少女は家を指差す。廃屋のような建物で、瓦は壊れ、壁には亀裂と黒カビ。木の扉が揺れる。
突然、少女の体内に黒い霧が入り込み、膝から崩れ落ちる。黒い霧から現れたのは、低く冷淡な女性の幽霊のような姿。長身で巨乳、黒い短刀を手にしている。刺客「ソフィア・テラノ」だ。
私は恐怖で震えながらも立ち向かう:
『俺は異世界の主人公だ、超能力でお前を倒す!』
ソフィアは笑いながら、黒い短刀で攻撃してきた。胸を刺され、少女も攻撃される。血の匂いが漂う。傷は痛みを感じず、体は麻痺していた。痛みを感じないほど、死が近いことを知る。
『なぜ……こんなことに……?』
胸の裂けるような痛み、視界のぼやけ、膝をつき、指は痙攣して握れない。視界にちらつく短刀、目の前の少女は陶器の人形のように倒れている。
『……お兄ちゃん……』
血を流しながらも少女は微笑む。声は寒風に溶ける羽毛のように柔らかい。
倒れたまま、手を伸ばせず、鉄錆の匂いを含んだ白い息だけが漂う。
『なぜ……小さな女の子……すら守れない……』
意識は潮のように遠ざかり、眩い光の中で──
――消えた。




