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1話 竜帝ディルクロの目覚め

「ん〜と。ここはどこだ?」

薄暗い洞窟の中、自身の声が響く。

「え〜と、とりあえず色々整理して…。」


まず、私はディルクロ。竜王であった白金竜プラティナと、ごく普通の平民アモルの間に生まれた、竜帝ディルクロだ。千年前に私が人間から迫害されたことをきっかけに父が激怒して竜と人の戦争が勃発。巻き添えにならぬよう、私の存在を隠すためにこの洞窟に封印された。


「とりあえず、封印前の記憶はこれでよし。次は…。」


封印後、私はいわゆる"仮死状態"というやつだった。しかし、まだ身体は残っている故、輪廻の輪に乗ることもできず、世界の狭間を彷徨った。そうして百年近く経った頃、私の身体がある世界とは異なる世界、異世界に行く術を編み出した。


「この世界と似た世界もあれば、まったく違う世界もあったし、楽しかったなぁ~。」


一番記憶に残ったのは、魔法も剣もなく、それなのにとても便利な世界、地球だ。その中でもお気に入りの国は"日本"という国だった。安全で、数々の便利な道具、おいしいものなど挙げればきりがない。寿司に焼肉、鍋に和菓子、そして何より欠かせないのが米だ。旅館の温泉にも入り、着物を着て、お祭りの屋台を堪能した。ホテルにも泊まったが、和風建築とやらの旅館の方が落ち着く。魔力で作った体で探索し、味わい、体験したが、どれも未知で楽しく、面白かった。


「封印されていた間の出来事はこんなもんかな。セルウァス、居る?」

「ここに居ります。ディル様。」


今返事をしたのは千年前、父様とうさまが残してくれた私の下僕しもべ兼、執事、黒竜セルウァスだ。


「封印、解けそう?」

「魔力が少なくなっているため無理かと。」

「そか。じゃあ封印ごと取り込むから私の異空間の中で休んでて。」

「御意。」


"異空間"。それは、封印されていた千年の間に習得した魔法だ。"世界の狭間"を利用し、自分だけが鍵を持つ空間を作成。"世界"ではなく、"空間"。故に"異空間"と呼んでいるのだ。


「でも、私は入れないんだよなぁ。」


これは仮定だが、異空間の"扉"があるとしよう。その扉はオートロック式で、開ける際は外側しか鍵が差し込めないから中に入っている物が勝手に外に出る事は出来ない。つまり、唯一、鍵を持つ私が中に入ると外に出れなくなるということだ。


「まぁ、夢を見る感覚で意識だけ飛ばせば入れるけどな。」


意識を異空間に集中させる。そうすると扉が出てくるから、いつの間にか手にあった鍵を差し込む。


(開いた。)


中に入るとそこは目と鼻の先も見えないほど暗いが、

手の中で輝くものがある。それは、あの鍵だ。


「セルウァスのところに連れてって。」


鍵を握りしめ、そう告げる。すると鍵は淡い光を放つ、夜空を閉じ込めたような見た目の猫になる。


「ニャン。」


ゆっくりと歩き出す猫についてゆくと奥に光るものが

見えてきた。


「案内、ご苦労さま。」


そう言って笑いかけ、手を差し伸べると、「ニャー。」

と笑顔で一鳴きして私の手の中で鍵になった。


「やぁ、セルウァス。封印はどう?」

「まだまだですね。封印されている間にだいぶ魔力を

垂れ流しにしていたようでして、プラティナ様が施した封印を解くにはあと数十、もしかしたら百年近くかかるかもしれません。」

「そっかぁ。私の魔力量がもっと多ければセルウァスに分けてあげられるんだけどなぁ。」

「それよりも、ディル様。これからどうなさるおつもりで?」

「どうって、父様とうさま母様かあさまの転生体を探すよ。2人のことだから記憶残ってると思うし。」


そう、全ての生き物はよほどの大罪を犯すか、魂が消滅しなければ転生することが可能だ。前世の記憶がない者がほとんどだが、稀に記憶を覚えている者もいるし、条件を満たすことで覚えておくこともできる。


「それならば、ディル様。人間に悟られぬように魔力は抑え、スキルは秘匿した方がよろしいかと。」

「うん。そーする。じゃあそろそろ行くね〜。」

「お気をつけて。」


意識を現実に戻すと、目の前には暗い洞窟が広がっていた。


「とりあえずここから出るか。」


私の旅はまだ始まったばかりだ。

どうも、古瑠璃です。「竜帝は夜明けを待つ」第1話ですが、投稿するのにだいぶ時間がかかってしまいました。「ある魔女の生まれ変わった日」をメインにしていくのでこちらは投稿頻度が少なくなると思います。


次回もよろしくお願いします。

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