036,行商人、商業都市に行く
なんかもう頭変な感じになっててここから変な方向に行きます
マージでおかしくなってるのでなんだこれが続くと思います。
すみませんがお付き合いください
そして数日後、俺たちはその“商業の迷宮”に足を踏み入れていた。
「これが……レムフェリア……ッ!」
ミナトが目を見開き、商業都市の巨大なゲートを見上げていた。
眼前に広がるのは、層をなしたマーケットと喧騒、そして空に向かってそびえるように連なる商館の数々。
煌びやかさと、荒々しさ。
この都市には“金の匂い”が染み付いている。
「うっわ、人の波ヤバ。歩くだけで金貨がこぼれてそうな街……!」
双子のミズキが早速はしゃぎ、ユウカは逆にキョロキョロと物騒な気配を探っていた。
「人混み、盗賊、スリ、買収、情報屋。……ふふん、楽しくなってきたじゃん」
「お前がテンション上がると治安が下がるから黙れ。ほら、準備するぞ」
今回の目標は《薬師通り》の一区画。
ゴルデナ商会が豪勢に設営している真横、――そこに、俺たちの屋台を叩き込む。
「目立つ場所、獲るぞ」
俺はチラシと試供品、それと密かに用意した“新商品”の素材を詰めたカートを引きながら、歩みを進める。
――だが当然、ゴルデナ側も黙ってはいなかった。
「おや……これはこれは。噂の“野良薬師”じゃありませんか」
不意に、甘ったるい声とともに割って入ってきたのは、金ボタンのスーツに身を包んだ男。
ゴルデナ商会の“広報部長”を名乗る奴で、言葉の一つ一つに嫌味が詰まってる。
「この通りは“うちの商圏”ですよ? まさか野菜売りにでも来たんじゃないでしょうね?」
「野菜も売るけど薬も売るよ。ああ、それと、君たちの“模倣品”と違って効くから」
「はは……ずいぶん挑発的だ。まあ、自由市場ですから? どこまで持つか、見せてもらいましょう」
すれ違いざまに皮肉を投げるその顔。
いいね。いい“戦火”だ。
「よし、陣地構築始めろ!」
「了解っス師匠!」
ミナトが手際よく簡易屋台を組み立て、双子が看板を設置、俺は目玉商品の「蒸留エリクサー」と「清涼強化軟膏」を並べていく。
まもなく、街の喧騒に乗せて――客の流れが始まる。
買うか? 試すか? 比べるか?
派手な装飾や大声じゃなく、「実際に効くかどうか」――それだけで勝負する。
「さぁ、“商戦”の本番はこれからだ」
ギルド連中も、情報屋も、一般客も――
すべて巻き込んで、今ここに“薬師 vs 巨大商会”の第一幕が、幕を開ける。
開店の鐘が鳴る。
商業都市レムフェリアでは、朝の合図がまるで決闘のゴングのように鳴り響く。
「はいはい〜! 今なら試供品おひとり様一点までですよ〜!」
「痛み止めと回復薬が同時に!? 頭も良くなる!? いや良くはならんけどスッキリするよ!」
ミナトとミズキの声が、屋台の周囲に響く。双子の片割れユウカはというと、どこかの裏通りに試供品を“うっかり”ばら撒いて人の流れを変えている真っ最中だ。
こっちは対して金も人手もない、いわば個人商店の寄せ集め。
相手はレムフェリアの重鎮《ゴルデナ商会》。戦力差は火を見るより明らか。
――だが、“効く薬”は、黙っていても人を呼ぶ。
「ねぇ、この軟膏……ホントに肩こり消えたんだけど……」
「え、昨日の頭痛薬、マジで朝まで爆睡できた……」
口コミは連鎖する。
街の情報屋たちが勝手に“この店、やばいらしい”と騒ぎ始め、正午を迎えるころには列ができ始めていた。
その様子に、ゴルデナの側も黙ってはいられない。
「隣の屋台、行列……? 販売部! 急げ、うちも半額セールを打て!」
「いいんですか!? 在庫が——」
「かまわん! “あの店”に客を渡すな!!」
焦る大手。仕掛ける零細。
商戦は、数だけじゃない。
ミナトが、小さな空瓶を持って来た。
「師匠! 回復剤Aのベースがもう底つきそうっス! やばいっス!」
「ならブレンド変える。Bに精製水混ぜて使え! 誤差は0.5%、誤差の範囲!」
「やったぁ! これだから師匠は神ッス!」
「いええええい! 売上トップ取ったら肉! 焼き肉行こ焼き肉!」
「やかましい! あとでな!」
声も、汗も、戦略も、全部が混ざっていくこの場所にこそ、“生きてる”って実感がある。
夕刻、陽が傾きはじめたころ。
第一日の売上報告が届いた。
「っしゃあああああああああああ!」
ミナトが勝ち鬨をあげた。
販売数、ゴルデナに並んだ。いや、ほんのわずか――だが確かに、上回った。
そしてその数字は、“市場の意思”そのもの。
「やったな……!」
俺は空になった薬瓶を見下ろしながら、ひとつ息を吐く。
「勝てる……本気で勝てるぞ、この商戦」




