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010,行商人、封鎖領域を調べる

この話は最初説明なので飛ばして大丈夫です。何なら読まなくても支障はそんなにありません。たぶん



――それは、未踏の死域。戦場と禁忌が混在する、最前線の“向こう側”。


かつて《第四次魔族戦役》にて激戦地となり、終戦後も強い魔気が残留したことで、王国によって完全封鎖された地域。

現在はレベル制限解除後の高レベルプレイヤー専用エリアとして徐々に開放されつつあり、各大手ギルドが“侵攻の足場”を築こうとしている。



別名:《黒風域》《黄昏の回廊》《帰らぬ谷》など呼称が多数存在する

推奨レベルはLv55~(ただし個体差によってはLv70超級の魔物も出現する)

地域構造は半壊した旧都市部、魔気汚染エリア、遺構ダンジョン群、封印迷宮に分けられる


《灰の外縁部》

 かつての都市ティルフィアの外郭にあたる。廃墟化した街並みの中には罠や腐食地帯が残り、時折“喰い残し”と呼ばれる死骸再生系の魔物が徘徊する。

 

 物資の補給拠点候補地。少数のプレイヤーがキャンプを展開中。


《黒風の谷地》

 常に黒煙のような魔気が漂う窪地。視界制限、HP徐々に減少、属性干渉あり。魔気属性のモンスターが群生しており、集団AIによる連携行動を取る。

 

 ここで採取できる素材は【魔気結晶】【黒枝茸】【共鳴石】など、希少価値が極めて高い。


《沈黙の聖域》(中層)

 宗教国家時代の遺跡がそのまま魔気汚染された区画。かつて“封印術士”が大量に討ち死にした場所であり、魔法が一部使用不能になる“詠唱封殺”領域が存在する。

 

 特殊効果:回復スキル弱体化/光属性強化/音響系アイテム無効化


《封印迷宮〈イフニール〉》(深層)

 未だ正式実装とされていない、最深部のダンジョン。時間帯やプレイヤーの行動によって“構造が変化する”特殊型であり、内部には複数の未解析の“呪紋扉”がある。

 

 現在は探索団が“第二層”の途中まで進行中。推定ボス:魔契公カル=ザーハ(未確定)



天候システムは突発的な“魔気嵐”による一定時間、視界・スキル性能・マップ情報がすべてロスト状態の付与


持続デバフ環境は侵入時点で《瘴気耐性》が必須。ポーションや装備による対策が無ければ、探索不能。これにより“魔気耐性ポーション”の需要が跳ね上がっている。


NPC非進入と制限されているため各種拠点NPC(倉庫・商人・輸送系)が進入できず、補給線を自力で作る必要がある。プレイヤーによる“物流網”の確立が急務だろう。


ルートに関して、唯一の進入ルート《崩れた大橋》は、毎日ランダムで通行可能時間が変わる“時間制開閉式マップ”に設定されている。


「ティルフィア王国は、かつて魔族との盟約を結び、その裏で禁忌の“封印術”を行使していた。

しかし、その力は王国を守ると同時に蝕み、最終的に『大封印の崩壊』と呼ばれる災厄を引き起こした。

現在、封印の残骸と魔族の血の痕跡は、この地で静かに蠢いている――」


ティルフィアは、過去の“国家級の裏切り”と“封印の代償”という重厚なロアを持ち、プレイヤーたちの探索によってその全貌が少しずつ明かされていく



ここに取れる素材に関して


魔気結晶、黒枝茸、共鳴石、血染め草の四つ


瘴気結晶は魔力の安定供給。極小型触媒にも適性がある。上級ポーションや魔法ギア改造品などにするのがいいだろう


黒枝茸は魔気属性食材。毒を中和する効能がある分、耐性ポーションや料理、香料抽出が向いてるかも


共鳴石は音響魔法と高相性。魔道具と同期させやすいようだから、魔道武器、アラームアイテム/、通信器具の三つがいいかな


血染め草、見た目は赤い風鳴草に似た植物。回復系触媒の原料高位再生薬や蘇生補助薬これに関しては実験段階なので今後も大量に欲しい。


Ring of Dawn――通称《RoD》。最前線で名を馳せる、攻略組の筆頭ギルド。


 その彼らからもたらされた《封鎖領域ティルフィア》の内部情報は、まさに貴重な金塊だった。

 魔気嵐の予兆、未登録モンスターの動き、第二層で見つかった謎の呪印壁。どれも未踏域に足を踏み入れるには十分すぎる手札。


 ……けどなぁ。


 「行くか引くか……どうするかな……」


 俺は椅子に腰を下ろし、背もたれをぎい、と後ろに倒したり戻したりしながら、天井を見つめて唸っていた。


 「そう言わないで、手伝ってくれよ、レン」


 すぐ隣、馴染みの声がそう言ったかと思うと――


 「ほらほら、こうやって!」


 「うわ、ちょ、おいっ」


 ライトが俺の両肩を掴んで、椅子ごと前後に揺らしてくる。まるで物理的に決断を促そうというのか。


 こいつは《RoD》の戦術士、そして……数少ない“話が合う奴”だ。

 

 「うーん……」


 俺は揺らされる勢いに乗って、腕を組みながら応じる。


 「じゃあこうしよう。装備品と設備、全部用意してくれるなら考えてやらんでもない」


 それはつまり――

 高性能の魔気耐性装備、ポーション精製用のポータブル調合台、さらに補給物資の輸送支援……そのすべてを差し出せ、というわけだ。


 言ってから、ライトが困った顔をするかもなと少し思った。


 でも――


 「いける」


 即答だった。息を吸う暇もなく。


 「え、ちょっとは迷えよ」


 「レンが来てくれるなら、運営に直談判してでも確保する。だってさ、お前が作る“蒼風ポーション”って、今うちのヒーラー連中から、依存症レベルで頼られてるんだぞ?」


 ……そこまでか。まいったな。


 「――もし本当に、それが用意できたら行くわ」


 俺は椅子の背もたれをまっすぐ戻し、机の上に置いていた地図を手に取る。


 封鎖領域ティルフィア。

 そこは“死地”であり“資源の宝庫”であり、なにより――“挑む価値がある場所”。


 《RoD》の支援があるなら、ワントライくらい悪くない。


 いや、むしろ――それがあれば、“勝ち筋”だって見えてくる。


 「よし、じゃあ契約書持ってこいよ。ちゃんと俺の分の利益も明記してな」


 「了解、蒼風の錬金術士殿」


 軽口の応酬。だが、その裏にあるのは本物の覚悟と、友情の信頼だった。


 さあ――

 準備が整い次第、《ティルフィア遠征》が始まる。

 俺が作るその一滴が、今度は“瘴気に挑む命綱”になる番だ。

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