表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

文化祭

作者: えた~なるびぎな~

 「ゲホッ、ゲホッゲホ」

 咳き込むたびに喉が痛い。

 頭が痛くてグラグラする。

 鼻水が止まらないでできるティッシュの山。

 寒気を感じながら体温を測ると38.7の文字。

 文化祭当日、僕は盛大に風邪をひいてしまった。

 

 この日僕は先輩に告白するつもりだった。

 前日まであった文化祭の実行委員会。

 誰もやりたがらないこの仕事を引き受けたのも、先輩に近づきたい打算があったからだ。

 まあその目論見は、ほとんど達成できなかったわけだが。

 裏方がこんなに仕事が多いとは思ってもみなかった。

 細かな備品の買出しに、スケジュールの調整。

 生徒以外の参加者に対する配慮などと、挙げていったらきりがないほどだ。

 それに対して先輩と話せた時間は……深く考えるのはよそう。

 だからこそ明日こそはと決意したはずだったのに。


 熱にうなされていると、色んなことが頭を回る。

 胸に溜まっていた言葉が、自然と外に出てしまう。

 今日という日に限って熱を出してしまうなんて、委員会受けなければよかったのかな?

 でも先輩を見れる機会はまちがいなく増えたし良しとしないと。

 もう1年早く生まれていたらなあ。

 先輩ではなくて同級生だったら。

 クラスが一緒ならもっと喋れたのかな。

 

 「君はそんなこと考えていたんだ」

 文化祭の途中のはずなのに先輩の声が聞こえる。

 僕の部屋に先輩がいるなんてまるで夢のようだ。

 朦朧とした意識の中で、独り言に対する相槌が心地よくて次から次へと話をする。

 一緒に文化祭を楽しんで、最後に告白するんだ。

 あっ、振られたらどうしよう。

 振られた時のことを考えていなかった。

 そもそも文化祭も他の人といるかもしれない。

 ああ、何で風邪なんてひいたんだ。

 言ってて悲しくなってきた。

 自分でも何を言ってるかわからない。

 聞かれたまま答えているだけ。


 「他には何も無いの?」

 一緒に学校から帰ったり、デートもしてみたいです。

 普段言えない言葉も素直に本音が零れる。

 夢中でたくさん喋りすぎたせいか喉が痛い。

 

「今日はもうゆっくりお休み。

 今度はちゃんとした告白を聞かせてね」


 一体僕は誰と喋っていたんだろう。

 僕は優しい声に誘われるように眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ